同情なんかじゃない アパートの階段に腰を下ろしている赤木を見て、矢木は開いた口が塞がらなかった。 今は学校帰りの時間のはずが、赤木が着ているのは制服ではなくまた体操服だったのだ。 何日か前の出来事を思い出す。学校で何者かに制服を隠されて、体操服で帰ってきた赤木の姿に不覚にも欲情してしまった。 あっさり脱がすのが惜しくて、布地の上から触れて焦らしながら赤木を抱いて朝まで離さなかった。 あの時の自分は、どうかしていたのかもしれない。服装の違いひとつで我を忘れて興奮するなんて。しかも赤木が学校で不愉快な思いを したのは分かっていたはずなのに。おかしな趣味の持ち主だと思われたかもしれない。 「どうしたんだそれ、また制服隠されたのか?」 「違うよ、今日は体育の授業なかったからね」 そう言うと赤木は笑みを浮かべて、こちらに意味深な視線を送ってきた。こんな表情、とても13歳ができるものではない。 見た目は子供なのに、中身は大人びていて隙がない。裏の世界を生きる大人すら手玉に取るような恐ろしいところも、 最近では赤木が持つ魅力とすら思えてきた。決して本人に言うつもりはないが、本当に好きでたまらないのだ。 「この格好で、あんたを喜ばせようと思ってさ」 「な、何で俺が喜ぶんだよ」 「これを着た俺とセックスしてる時の矢木さん、すごく興奮してたから」 妙にはっきりした口調で言うので嫌な予感がして振り返ると、通りすがりの主婦が眉をひそめて矢木を見ていた。 「ちょっ……声でかいぞ!」 「他の奴に何を言われても気にしないって、約束しただろ」 静かな言葉と共に、赤木が片手を伸ばしてきた。引っ張って立たせろ、ということらしい。 伸ばされた赤木の手に触れて握ると、じわりと体温が伝わってくる。 「今夜も泊まっていいよね」 「お前の好きにしろよ」 「素直じゃないな、泊まってほしいくせに」 手を引かれて立ち上がった赤木は、先に階段を駆け上っていく。ポケットから鍵を出すと、顔が赤くなるのを必死で抑えながら矢木も その後を追った。 ドアを閉めて鍵をかけてしまえば、ここは完全にふたりだけの世界になる。 朝から敷いたままの布団の上で抱き締めた赤木の身体は、蒸し暑い季節のせいか少し汗ばんでいた。 「そういえば赤木、夕飯まだ食ってないだろ。どうする?」 「腹減ってないから今はいらないよ」 「ああ、俺も……」 囁き合うような会話の後、唇を重ねた。それだけでは物足りず、しつこく舌を絡めあう。互いの息遣いと濡れた音が狭い部屋を満たした。 「なあ、それ着たまま俺の……舐めてくれよ」 唇を離すと矢木は赤木の手を自らの股間に導いていく。性器はズボンの下ですでに硬く勃ち上がり、赤木が指を動かす度に興奮してびくびくと脈打った。 いいよ、と甘い声で言うと赤木は矢木のズボンの前を開いて、慣れた手つきで性器を露わにした。そういえばまだ銭湯で身体を洗っていないことを今更ながら 思い出したが、赤木は気にしない様子で勃起した性器を咥える。最初は浅く上下に頭を動かしていたが、次第に奥深く咥え込んできた。 割れ目の部分を強く吸われると、無意識におかしな声が出そうになる。毎回、これが本当に気持ち良いのだ。 ここで射精してしまうと面白くないので、達する寸前で舐めるのをやめさせると赤木を布団に押し倒した。 仰向けになった赤木は下着と一緒に半ズボンを膝まで下ろし、左足だけを抜いた。すると半ズボンは右膝に引っかかっているだけの無意味な存在になる。 「なんか中途半端な脱ぎ方だな」 「完全に脱いだら面白くないだろ? あんたの好きな体操服なんだからさ」 「そこを強調するなよ……まあ、今更否定はしねえけど」 苦い顔で矢木がそう言うと赤木は低く笑った。実際は13歳の中学生でも、相手が赤木だからこうして興奮するのだと改めて思う。 これで泣いたり嫌がったりするような年相応の子供なら、完全に萎えてしまって性欲の対象にすらできないだろう。 赤木の性器はまだ未熟なものだが、もう勃ち上がりかけていた。しかし矢木はあえてそこには触れず、半袖のシャツを鎖骨の辺りまで脱がせた。 淡い色の乳首を舌先で転がし、空いた手でもう片方を軽く摘まむと赤木は小さく喘いだ。それを何度も繰り返していると、赤木の性器から先走りの滴がこぼれてくる。 「いい声出しながら汁まで漏らして、いやらしいな……赤木」 「あんたが、そうさせてるくせに」 「お前が乱れるのを見たいから、やってるんだよ」 できるだけ平静を装いながら赤木の後ろを指で解し、勃起している性器をそこに沈めた。 狭い内側をゆっくりと広げながら身体を倒していき、赤木と密着する。矢木はズボンを下ろしただけで全裸ではないが、赤木も体操服を半分だけ脱いだ状態なので気にせず続けた。 獣のように夢中で腰を動かしながら、再びくちづけを交わす。赤木は潤んだ目でこちらを見つめて、頼りなく息を震わせていた。 白い靴下に包まれた赤木の細い足が矢木の腰に絡みついて、猛った性器を更に奥へと飲み込もうとしている。 学校で嫌がらせを受けたと知った時は、赤木に指摘された通り確かに同情していた。 しかし今、赤木に対して抱いているのは同情ではない。純粋な想いも薄暗い欲望も混ざり合って、永遠に独占したいという気持ちで満たされている。 馬鹿だと思われても構わない、この場で赤木の心ごと全て欲しい。 「赤木……いきそうだ、そろそろ出すぞ」 「このまま俺の中に、全部出していいよ……」 その言葉に甘えそうになったが、矢木はそれを振り切るように腰を引いて性器を抜いた。 まるで征服するように赤木に跨り、息を荒げながら放った熱い精液は赤木の痩せた腹や胸、そして顔にも勢い良く飛び散った。 「いっぱい出したね、矢木さん」 「かなり溜まってたからな」 「こういうの好きなんだ、ふーん……知らなかった」 矢木の精液で身体を汚された赤木は、からかうような笑みを浮かべてそう言う。 知ってたから着てきたんだろ、と胸の内で密かに突っ込んだ。 |