立場の逆転 夕飯を終えて畳に寝転がっていると急に服を捲り上げられ、赤木の指先が乳首に触れた。 軽く摘まれると刺すような快感に襲われ、声が出そうになる。 「ねえ、矢木さんはここをどうされると感じる?」 赤木はそう言うとそこを摘まむだけでなく、顔を近づけて濡れた舌で転がしてきた。 普段から抱いている時に赤木にやっていることを、まさか今度は自分がやられるとは思っていなかった。 指や舌が与えてくる刺激に加え、こちらの様子を探るような視線にどきどきした。どうされると、というよりすでに感じてしまっている。 矢木は赤木の頭に触れると、少し乱れた白い髪を梳いてやった。ふたりで銭湯に行ってきたばかりなので、手触りがいい。 「お前が触ってるだけで、もう感じる」 「何だつまらない、もっとこうしてほしいって要求はないの?」 「急にどうしたんだよ」 「いつもあんたに好き放題されてばかりだから、たまには俺にも楽しませてよ……」 乳首を強く吸われて身体が竦み、完全に赤木のペースになる。尽くされているのだと勝手に思えば悪い気はしないが、 これはどう考えても弄ばれていた。一方的に抱かれているのが面白くないと感じるほど、赤木も男だというわけだ。 いつの間にか膨らみ始めた股間にも赤木の手が触れ、上下に扱かれる。あまりにも気持ちいいので身を任せたかったが、 このままだと下着の中に射精してしまうので困る。全裸なら何の問題もなかったのだが。 「……してほしいことを、言えばいいんだろ」 霞んでいく意識の中で、赤木の顔が淫らな期待に満ちていくのが見えた。 興奮して硬くなった矢木の性器に、赤木がゆっくりと腰を落としていく。透明な滴をにじませた先端が熱く柔らかい感覚に包まれて、思わず低く呻いた。 お互いこうして裸になれば服が汚れるだの皺になるだのと、細かいことを気にしなくてもいいので楽だ。赤木に肌を晒すのも慣れ、今更何の抵抗も感じない。 「せっかく銭湯行ったのに、これじゃ無駄にならない?」 「また行けば済む話だよ……あ、いきなりそんなに締めんなって」 「気持ち良さそうだね、何だか俺も……」 うっすらと汗を浮かべて積極的に腰を動かす赤木を見ているとたまらなくなり、細い腰を掴んで突き上げようとしたが両手で腹を押されて止められた。 何の予告もなく体重をかけられたので、驚いて息が詰まった。苦しげな表情の矢木を見て赤木が愉快そうに笑う。 「俺があんたを気持ち良くしてやるから、動かなくていいよ」 「む、無茶言うな……!」 「上に乗って動いてほしいって言ったのは、矢木さんだろ」 まだ覚えたての拙い動きは愛しく思えるが、やはりじれったい。赤木が激しく動くたびに中から性器が抜けてしまい、特に絶頂を迎える寸前だと生殺しにされているような気分だ。 結局、達することができたのは30分近くも先のことだった。 「本当は後悔してるんじゃない?」 「……何が」 汗まみれになった赤木の背中をタオルで拭いていると、不満そうな口調でわけのわからないことを言われた。 終わってからも裸で抱き合っているうちに、銭湯が閉まる時間になってしまったのだ。 「分かってるくせに、俺が下手だったからさ」 「お前のその歳でセックスが上手かったら、逆に怖いだろ」 確かに上手くはなかったが、別に後悔はしていない。むしろこういうところは年相応だと思って安心したのが本音だった。 まだ13歳の若さで、プロの代打ちだった矢木や百戦錬磨のヤクザを震え上がらせるほどの賭博の才能を持っているというだけでも、充分に恐ろしいのに。 これであと何年か経てば、布団の中で相手を翻弄するようになるかもしれないが。 背中の汗を拭き取った後、こちらを向くように言うと振り返った赤木に唇を奪われた。 幼く柔らかい感触が心地よくて、持っていたタオルを畳に落としてしまう。 くちづけを終えて抱き締めると、身体が密着して乳首が擦れ合う。事後だというのに、再びその気になってしまいそうだった。 耐え切れなくなり赤木を押し倒す。今度は何の抵抗もせずに背中に腕をまわしてきた。 |