緊急事態・その後 舌先で乳首を転がすように舐めた後、強く吸うと赤木は身をよじった。 かすかな笑い声と緩んだ表情、嫌がってはいないようだ。 「くすぐったい」 「本当は気持ちいいんだろ?」 「悪くはないさ……」 素直じゃねえよな、と思いながらもう片方を指先ではさんで摘む。 刺激を受けた赤木は小さく声を上げて、俺の頭を両手で抱き込んだ。温かくて心地良い。 服も下着も脱いで触れ合う。互いの肌の感触や温もりを確かめ合うように。 赤木がシャツを脱いだ時に見えた、成長しきっていない身体に戸惑った。 今は本当に13歳の姿になっているのだと改めて思った。 最初は子供になった赤木を抱くことに抵抗を感じていたが、結局ここまで流されてしまった。 全てが赤木のせいじゃない。俺の意思が弱かったというか、どんな姿になっても中身はやっぱりあの19歳の赤木だから、 好きだという気持ちを止められなかったのだ。 舐めて濡らした指先で赤木の後ろに触れると、やはりそこは固かった。頑なに俺の指を拒み続けて、先へ進めない。 いつもならすぐにとはいかなくても、少しずつ解れて飲み込んでいくのに。 赤木も自分の身体が思い通りにいかないようで、あまり見せない苦々しい顔をしている。 心と身体の時間が一致しないと、不便なものだ。俺よりも赤木のほうが辛いだろう。 「力抜いてるか?」 「そのつもり、だけど」 「なあ……やっぱり、やめようぜ」 「嫌だ」 本当に頑ななのはこっちのほうか。しかしできないものは仕方が無い。 そう思ってため息をつくと、赤木は俺の股間まで手を伸ばしてきた。 手のひらに包まれて、擦り上げられる。俺がどうすれば気持ち良くなるか、知り尽くしたやり方だった。 微妙な強弱をつけて動き続ける手の中で、限界まで押し上げられていく。 俺に触れてくれるのは嬉しいが、赤木のほうの準備ができていないのに、こんなふうにされても……。 割れ目から浮かんできた先走りがこぼれて、赤木の手を濡らしていく。 「気持ちいいかい、矢木さん」 「……ああ」 「いきたい?」 息を震わせながら、俺は頷いた。どうやっていかせてくれるのか分からないままに。 赤木に覆い被さっていた俺は胸を軽く押されて、向かい合って座る体勢になった。 「ちょっとだけ、待ってなよ」 そう言うと赤木は再び仰向けで寝転び、俺の先走りで濡れた指で自分の後ろを解し始めた。 こちらに見せつけるように両足を開き、最初は浅く抜き差ししていく。 眉を寄せながら上げる苦しげな声は、やがて甘いものに変わっていった。 そしてその指が深く飲み込まれていくのを、不思議な気持ちで眺める。そこには当然、欲情も含まれていた。 閉じられていた赤木の目が開き、そこは熱っぽく潤んでいるようにも見えた。 「赤木……なんで、こんな」 「このまま元の身体に戻れなくなったら、あんたは俺を2度と抱かなくなる。だから」 欲しい、という呟きに俺の中で張り詰めていたものが切れた。 赤木の両足を抱え上げると、解れているらしいそこに性器を押し当てた。 普段は淡々とした物言いをするくせに、苦しい思いまでして俺を欲しがったりもする。 ここまでさせておいて、俺だけ引き下がるわけにはいかない。 先ほどよりも抵抗は少なくなっているが、まだきつい。ゆっくりと腰を進めていく。 狭い内側を奥へと押し広げられている赤木が、堪えるような表情で両手を伸ばしてくる。 身体を重ねながら、赤木にくちづけた。角度を変えて何度も繰り返す。 貫かれる痛みも違和感も、俺には分からない。それでもできる限り、赤木の苦痛を軽くしてやりたかった。 時間をかけて、ようやく奥まで入りきった。動かなくてもきつく締め付けられて、気を抜くと達してしまいそうだ。 「全部、入ったぞ。大丈夫か」 「ん……動いてもいいよ」 「いいのか?」 「このままじゃ、終われないだろ。あんたも俺も」 その言葉に応えるように動き始めると、赤木は小さな声で喘いだ。 あまり声を出したがらないのは19歳の時と一緒だ、と少しずつ動きを早めながら思った。 終わってから、いつの間にか眠ったらしい。 13歳の赤木と、最後までやってしまった。最中はあんなに盛り上がったのに、終わった今では罪悪感に悩まされる。 一体何が原因で身体が昔に戻ったのか、いくら考えても分からない。 中身は19歳のままなので、俺がどういう言葉や展開に流されてしまうのかを、全て知られているのだ。 初めて対面して戦ってから再会するまでの6年間で、人の心をうまく動かしていく術まで覚えたのか。 相手を容赦無く壊すだけのやり方から、自分の思い通りに操って陥れるものに。 その6年の間に何があったのか、気になりつつも聞けずにいる。 知っているのはただひとつ、赤木は今まで他の誰にも抱かれていないということだけだ。 その真偽を確かめる方法は無いので、こればかりは本人の言葉を信じるしかなかった。 別に俺以外の男を知っていても、赤木に対する気持ちは変わらない。 しかし俺が初めてだと言われて動揺してしまったのは事実だ。更に厄介なことに、悪い気はしなかった。 すぐそばでは、赤木が首のあたりまで布団をかぶって寝ている。こちらに背を向けているので、顔は見えないが。 「風呂でも行くか、赤木」 まだ昼にもなっていないのに、身体中が汗ばんでいる。赤木が元に戻るまで外に出さないというわけにはいかないので、 気分転換も兼ねて銭湯へ行くことにした。 しかし何度声をかけても起きない。俺はため息をつきながら再び布団の中で横になる。 しばらくして、背後で赤木が起き上がる気配を感じた。 「……やっと起きたのかよ、寝覚め悪すぎだぞ」 「あんたがあまりにも激しいもんだから、付き合うこっちも大変でね」 「いや、まあ、それは……」 「風呂に行くんだろ、早く起きて支度しようや」 赤木の声や口調に、どこか違和感があった。明らかに子供の声ではないが、若い男のそれとも違う。 振り向いた先でこちらを見ている男は、確かに赤木だった。顔に刻まれた皺を除けば。 赤木が何十年か歳を取ったらこんな感じに……いや、そんなことを考えている場合じゃない。 元の身体に戻ってほしいとは思っていたが、これでは年月が進みすぎだ。 「それとも、もう1度……するかい?」 布団をめくって覆い被さってくる、俺よりも歳を取った赤木。愉快そうに目を細めている。 いくつになっても、その本質は変わらない気がした。 |