成分解析 矢木 圭次の成分解析結果 : 51%は気の迷いで出来ています。 34%は罠で出来ています。 5%は優雅さで出来ています。 5%は下心で出来ています。 3%はカテキンで出来ています。 1%は玉露で出来ています。 1%は微妙さで出来ています。 この結果を見た赤木は笑い声を上げ、矢木は不機嫌全開で唇を噛んだ。 微妙さだの下心だの、ろくなものがない。 しかも約半分が気の迷いだなんて、とんだお笑い種だ。 唯一の救いである優雅の部分をわざとらしく主張してみたところ、赤木に『寝ぼけるな』と一刀両断された。 いつものことながら容赦の無い奴だ。 某頭痛薬のお馴染みフレーズ(半分は優しさで出来ている、とか言う)からヒントを得て作られたらしいフリーソフトで、 何やら面白そうだと言う赤木がダウンロードして、勝手に人の名前を入れたのだ。 「あんたの半分は気の迷いだってさ」 「うるせえよ、こんなのただの遊びだろ。俺のパソコンに妙なもの落とすな」 「心の狭いこと言うなって。どうせ変なサイトを見るためにしか使ってないくせに」 このパソコンは知人が新しいものを買った際、前に使っていたものをタダで譲り受けた。 前からインターネットというものをやってみたかったし、最近はゴミを処分するにも金がかかるようになったので、 双方共に好都合というわけだ。 数年前に発売された古い機種だが、普通に使う分には問題ない。 ある日、まったく心当たりのない数万単位の料金請求メールが届き、 抗議してやろうと思って送り返そうとしたら赤木が、『あんたみたいな白痴が居るからこういう業者がつけあがるんだよ』と笑い、 送られてきたメールを平然と削除した。不本意ながら、赤木に救われたということになる。 赤木はキーボードを見なくても文字を打てる。一体いつの間に使いこなしたのだろうか。 じゃあお前の解析結果はどうなんだ、と言いながら赤木の名前を入力してみた。 少しでも変な単語が出てきたら、こちらも同じように笑ってやる。 ところが、 赤木しげるの成分解析結果 : 56%は果物で出来ています。 26%は気の迷いで出来ています。 16%はビタミンで出来ています。 2%は純金で出来ています。 何だこれは。よりによって赤木を構成しているものの大半が果物か。 イチゴやリンゴ、色々な果物が軽快に踊りながら矢木の脳内を横切っては消えていく。 気の迷いが矢木の半分ほどで、他の単語もまともなものばかりだ。 笑い飛ばせるような突っ込みどころが見つからず、非常に気に食わない。 「……お前が果物ってガラかよ」 「噛んで確かめてみるかい?」 「しねえよ気色悪い」 「それじゃ矢木さんが、お茶の味がするかどうか確かめてやるよ」 「わっ、服を脱がすなクソガキ!」 「舐められたいのか噛まれたいのか、好きなほうを選びなよ……」 そう簡単に人間の身体から茶の味がしてたまるか。 どうせ赤木は解析結果を口実に、状況をいかがわしい方向へ持って行きたいだけだ。 もう今後は絶対、赤木にパソコンを触らせない。 密かに固めた決意は、流されるように舌を絡め合った瞬間に空しく溶けていった。 |