白いプロフィール 卓袱台に広げられたまま放置されているのは、作文用紙だった。 「僕と家族」という短い題名と赤木の名前だけが、意外にも読みやすい字で書かれていた。 多分学校の宿題か何かなのだろうが、当の赤木は畳に仰向けに転がったままだ。 文章が思いつかないのか、それともやる気が出ないのか。とにかく再び鉛筆を握る気配はない。 少し前、赤木に家族のことを訊ねたが、どこにでもある普通の家庭だという話以外は何も聞けなかった。 しかし、どういう育てられ方をすればこんな恐ろしい子供になるのだろうか。この年代にありがちな無邪気さなど欠片も見当たらない。 「あんたのことでも書こうかな」 「俺はお前の家族じゃねえぞ」 「いつも家に泊めてくれるおじさんは、ちょっと顔は怖いけどいい人です。夜は手取り足取り、いやらしいことを教えてくれます」 「……あのな、それ絶対書くなよ!」 寝転がっている赤木は、からかうような口調で矢木を翻弄してくる。こうして素直に反応してしまう自分もどうかと思うが。 もう何でもいいから本当の家族のことを書いて終わらせてほしい。自分が毎晩のように赤木にしていることは犯罪まがいのものだという 自覚は充分にあるので、堂々と作文のネタにされては困る。 「クラスでまだ提出してないの、俺だけだってさ」 「それってまずいんじゃねえのか」 「ああ、まずいだろうね」 赤木は淡々と言いながら身を起こした。さすがにやる気になったのかと思えば、向かい側から唇を近づけてきた。 卓袱台に頬杖をついていた矢木は赤木の目的に感付いて戸惑ったが、機嫌を損ねると面倒なのでくちづけに応える。 最初は軽い気持ちだったが、互いの舌が触れ合い濡れた音が聞こえてくると胸が熱くなった。 重ねる唇の角度を変えた赤木の指に鉛筆がぶつかり、卓袱台から転がり落ちる。 一瞬そちらに意識が逸れたが、すぐに赤木とのくちづけに再び夢中になった。 赤木の軽い気分転換は更に発展し、結局こうなってしまった。 卓袱台に両手をつかせて、こちらに向けて高く上げられた赤木の尻に勃起した性器を押し当てる。 挿入をじらすように割れ目に沿って上下に擦りつけると、息を震わせた赤木が腰を揺らした。 「ガキのくせに、本当にいやらしい奴だな」 「あんた……意地が悪くなったよね」 「そうか?」 何度身体を交えても、赤木のことは未だによく分からない。 とんでもない賭博の才能を持つ中学生だということ以外の情報は知らず、ほとんど真っ白と言ってもいいくらいだ。 それなのに、これほど赤木にのめりこんでいるのは何故だろうか。子供相手に欲情するなんて異常だと自覚していながらも。 「ねえ、そろそろ欲しいよ……矢木さん」 いい加減こちらも我慢できなくなってきたので、無言で性器を突き入れた。 まるで貪るように腰を打ちつける度に、赤木は短く喘いだ。その合間にかすれた声で名前を呼ばれると、それだけでたまらない気持ち になる。いつもとは違う、獣のような体勢で繋がっていることも含めて、淫らな興奮が止まらない。 自分に恥をかかせた相手を別の方法で組み伏せているのが快感なのか、それとも純粋に赤木に情が移っているからなのか、ふたつの感情 の合間で複雑に揺れる。 「んっ、もう俺……だめかも……」 「赤木……!」 絶頂を迎えようとしている赤木の性器に触れ、強めに扱いてやるとあっけなく精を吐き出す。 それは卓袱台に広げていた作文用紙をたっぷりと汚し、使い物にならなくしてしまった。 |