ディーノ 【おさがり】
「ねェ、ディーノ。もうこれ着ないの?」そう言ってクローゼットから出してきたのは、着古したジャケット。
毎日リボーンに無茶苦茶な修行をさせられ、逃げ出すことばかり考えていたあの頃よく着ていたものだ。
「懐かしいな」
袖を通すと丈が短い。
あちこちすり切れ、色あせている。
動くと少し窮屈で。
染み込んだ匂いがさらに懐かしさを誘う。
「ハハ、こりゃもう着られねーな」
そう言って笑うと、つられるようにお前も笑う。
あの頃よりもずっと綺麗に。
「じゃあ、あたしに頂戴?」
「・・・これをか?」
「うん」
「ジャケットが欲しいなら新しいのを、」
「ううん。これがいいの」
細い腕がジャケットを奪い、すぐに着込む。
「・・・・ほら、ちょうどいいでしょ?」
そう言って両腕を広げるけれど、袖が親指まで隠している。
ボンゴレ10代目の教育のため日本に行くと言い出したリボーンから、助手のお前を下手な言い訳で引きとめたのはオレ。
時折届く日本からの手紙を読んで。
お前の幼馴染でもある弟分の近況を耳にして。
お前は、いつまでオレの側にいてくれるのだろう。
尋ねる事すら憚られて。
引き止めるために必要な言葉なんて一つしかないのに、オレはまだ言えずにいる。
身体はでかくなっても、オレの中にはあの頃のへなちょこがまだいるんだ。
膨らんだ感情の中に、隠れてやがる。
「実は前から狙ってたの。いいでしょ?」
お前は、なにも知らずに無邪気に笑う。
「いいよ、そんなんでよければやるよ。・・・・その代わりに、くれないか?」
「なに?あたしが持ってるもの?」
「ああ」
オレは、ジャケットごとお前を抱きしめて。
「実は前から狙ってたんだ。貰っていいか?」
【終】
(06.12.08)
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