花太郎は部屋にやって来たとき、布団はもぬけの殻だった。
【 だんでらいおん 】
「トイレ、かな・・・?」
首を傾げる花太郎。
しかし、通りかかった看護婦が言った。
「さんなら、散歩に行ってくるって言ってましたよ?」
「ええ!?この時間は検診だって言ったのに・・・!」
「言っちゃったんですか?じゃ、しょうがないですね〜。さん注射が嫌いで、検査は抜き打ちでやってるんですよ?いつも」
「そ、そうなんですか・・・?」
「はい」
それじゃ、と看護婦はその場を去った。
「注射が嫌いってそんな。子供じゃないんだから・・・」
トホホと息をついて、花太郎は詰所を出た。
を探しに。
外は、いい天気。
風も無く。
こんな日は・・・
(どこかでひなたぼっことかしたら・・・気持ちいいだろうなあ)
そんな事をぼんやり思いながら、辿り着いたのは、ぽつぽつを花が咲く野原。
(そう、こんなとこであんな風に座って・・・ん?)
そこに座って空を見上げるのがだと気付いてようやく。
花太郎は、彼女を探していたことを思い出した。
「、さん!」
声を掛け、近づく。
「ストップ!」
傍まで近づいた所で、が声を上げた。
「え、え?」
言われた通り、足を止める花太郎。
「わたぼーし」
の言葉で、花太郎は足元で揺れるタンポポの綿帽子に気付いた。
「・・・・・わたぼうし、ですね」
「うん。吹いて」
「へ?」
「わたぼうし、飛ぶトコ見るの好きなんだよね〜」
「・・・・・・・・」
花太郎は、綿帽子を見るを見て。
「・・・わ、わかりました」
花太郎は綿帽子の前で膝まづき、すぐそばまで顔を寄せて。
ふう、と吹いた。
「んわ!?ぺぺぺ!」
ほとんどの綿帽子は花太郎の息で吹きとんだが、いくつかが花太郎の鼻や口にひっついた。
「あっはっは!そーなるんだよね〜、わたぼうしって!」
腹を抱えては笑う。
「わ、わかっててやらせたんですか!?酷いなあ・・・・」
ごしごしと口元をぬぐう花太郎。
「ん〜、いや、花太郎ならそうするだろうと思って」
「・・・そうする、って?」
「わたぼうしを、摘まずに吹くんだろうなと思って」
「・・・・・・」
ごろりと寝転ぶを、花太郎は見る。
無意識にやったことだけど。
花太郎の行動は、の想定内。
綿帽子を摘まずに吹くこと。
いや、そもそもここに来ることすらも。
「おーキレイに飛んでくな〜」
青空に消えて行く綿帽子を見上げる。
その、の横顔を、隣で眺める花太郎。
もしかしたら。
ぼくのこの気持ちも。
彼女にとっては、想定内?なんて。
思ってしまう。
【 終 】
ブラウザバックでお戻り下さい。(05/12/01)