「ッわ!?」




詰所を出てすぐ、花太郎の足は何か弾力のあるものを踏んだ。
地面と違う感触に驚いて声を上げ、バランスを崩しつつも一歩下がる。

「・・・え、え?」
足元をよく見れば、横たわる人。
身につけているものは、死覇装。
腰には、斬魄刀。
男か女かはわからないが、気を失っていることだけは確かだ。

「あ、あの、しっかりしてください!?」
おろおろしつつも傍で膝をつく花太郎。

「だいじょうぶですか・・・?」

触れた肩は細く、女性だと悟る。

「み・・・」
女の口から、かすかな声が聞こえた。

「み?え、なんです?」
「み、み・・」
「耳?」
「み、み、ず・・・」
「みず?あ、水ですか!?」

「みみ、ず・・・」
女はゆっくりと腕を上げ、震える人差し指で差す。




地面を這うミミズを。




「・・・・・・・」
花太郎は、ミミズを見て。
そして女を見て。

「・・・・・え?」

またミミズを見て女を見る。

ソレを交互に繰り返す。




「なーんちゃ・・げふっ」
何かを言いかけて、突然女は吐血した。

「し、しっかりー!?」











それが、二人の出逢いだった。


























■ 君ふんじゃった































鳥のさえずりにも似た、でも違うもの。

木々のざわめきに似た、でも違うもの。

冬の凍てつく風に似た、でも違うもの。





この耳に届く声は全部、そこにあるものに似て、異なるもの。

けれどとても強く。





強く主張して。




だから、人の声などまともに聞こえやしない。






















でも。
















「あ、目が覚めました?」

その声は確かに、この耳に届いた。









目を開けば天井。
身を包む布団。

声が聞こえた方に顔を向ければ、手ぬぐいをのせた桶を手にした小柄な死神。

「・・・・・・・・・だれ?」

自分の声も明瞭に、自身の耳に届く。




ああ。

久しぶり、私の声。






「あ、ぼくは山田花太郎といいます。ここは四番隊の第七救護詰所です。具合はどうですか?」
そう言って、花太郎は女の脇に座る。
「・・・・いっぺんにいわれてもわからない」
「すいません。ええと、具合はどうですか・・・?」
「なな」
「え?」
「四?なな?」
「ええと・・・ここは、第七救護詰所の一室です」
「七・・・」
呟く。
「はい」
花太郎は律儀に相槌を打つ。
「誰?」
「ぼくですか?」
「うん」
「山田花太郎です」
二度目の名乗りを特に気する様子もない花太郎。

「やまだ」

「はい?」

「寝る」

「は、はイ?」

聞き返す花太郎に、さらに女は言う。

「え?」





己の名を。





「・・・・・・・・・」

「オヤスミ」

「・・・お、おやすみ、なさい・・・?」





花太郎が言い終わらぬ内に、静かな寝息を立てはじめる















なんていう、たどたどしい会話。

あっけに取られる花太郎。







でもまあ、とりあえず顔色も良くなったし、外傷は無いし。

(だいじょうぶ、かな?)

「・・・あ、いけない」

女性の寝顔をいつまでもじろじろ眺めるのは失礼だと気付いた花太郎は、立ち上がろうとした、が。




の手が、いつのまにか花太郎の袴を握っていた。





「・・・・・・・」

花太郎は静かに腰を落としてその場に座る。















が目を覚ますまで、ずっと、そばで座っていた。













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(05/11/22)