■ スリーセブン
「もうちょっとでスリーセブンだったのに」
目を覚ましたは、そんなことを言う。
「すりーせぶん、ですか?」
首を傾げつつ、白湯の入った湯呑みを渡す花太郎。
「うん。私が七番隊ならさァ、第七席が第七救護詰所に運ばれたってゆー、ホラ、スリーセブンで縁起がよかったのに。残念」
倒れたというところで縁起も何もないじゃ・・・?と思いつつ、花太郎は言った。
「・・・じゃあ、第七席の僕が介抱したのでスリーセブンっていうのはだめですか?」
「山田、七席?」
「あ、はい」
「いっしょだ」
握手、とばかりに手を差し出す。
白くて細い手にどきりとしたが、花太郎はそれを隠して手を握った。
「そういえば、あの。さんはどこの隊の所属ですか?」
花太郎は、まだ、の所属する隊を知らなかった。
の服を着替えさせたのは看護婦だったので、の口から聞くしかなかったのだ。
「あー、私は」
が言いかけたその時、荒々しい足音が近づいて来たかと思うと、勢いよく襖が開く。
「てめえ!!こんなトコで油売ってやがったのか!!」
怒髪天をつく勢いでやって来たのは。
十一番隊第三席、斑目一角。
空気をビリビリと震わせるほどの霊圧。
一角は、誰が見ても怒っている。
そしてその矛先は。
「う、苦しい!!」
その顔を見るや否や胸を押さえて布団に倒れこむ。
「バレバレの猿芝居はやめろ!」
掛け布団を取っ払う一角。
「芝居じゃないヨ死ぬよもうすぐ死ぬから。斑目の髪が一本もなくなったら死ぬ。あ、やべ死ぬじゃん私」
「てめ・・・ッ、ここで息の根止めてやろうか!?」
斬魄刀の柄に手をかける一角。
「あ、あ、あの・・・!仮病じゃなくて、本当に倒れてて、あの、吐血もして・・・」
「あァ?コイツは常時こんなんだよ!!」
口を開く花太郎を睨む一角。
「常時、って。でも・・・!」
食い下がる花太郎。
「血吐こうが顔色が土色だろーが、生半可なヤツにうちの席官が務まるか!」
「・・・え」
うちの、ということは。
「オラ立て!さっさっと・・・!」
しかし、布団の中にはいなかった。
ついさっきまで、ほんの一瞬前までいたのに。
「・・・チッ!あのクソアマ、逃げやがって!オイ、てめえ!」
一角は花太郎の胸倉を掴んでむりやり立たせた。
「ふえ、は、ハイ!?」
「いいか?いまここにいた顔色の悪い女を見つけたらウチの隊舎まで連れてこい。絶対に、だ!!」
「ひい、ははい!」
霊圧にのけぞりそうになりながらも花太郎はどうにか返事をする。
そして、一角は荒々しい足音を立てながら去っていった。
「あ〜、あぶなかった」
その声に、花太郎は部屋の隅を見る。
そこにはがいて、のんきに白湯をすすっていた。
「え?え?い、いつのまに・・・?」
瞬く花太郎。
「ふん、ハゲめ。妖精のようにか弱い女の扱いをちっともわかってない。アレじゃモテないのも無理は無いな」
「ま、ソレは言えてるね」
その、の頭上の飾り窓から声がした。
秀麗な顔立ちに、こだわりなのか、手を加えた死覇装で身を包んでいた。
「・・・ナニよ、弓親まで来てたの」
「うん。ほんとに戻ったほうがいいと思うよ?」
「・・・ダルい」
「そう?随分調子がいいように見えるけど。僕の声、聞こえてるみたいだしね」
「・・・・ごちそうさま」
は空になった湯飲みを置く。
ホラ早く、と声を掛ける弓親。
「あ〜、かったるいなあ。練習試合なんて適当にやっときゃいいのに・・・・」
ブツクサ言いながら、畳まれた死覇装とその上の斬魄刀を持ち上げ小脇に抱えて。
「じゃーね、山田」
ひらりと手を振って、は部屋を後にした。
「・・・・」
一人、部屋に残された花太郎は。
嵐の後のような状況に、ただしばらくぼうっとして。
「じゅ、十一番隊・・・あの人が?」
しかも、官席。
同じ七席。
いや、同じじゃない。
四番隊と十一番隊では、その実力は雲泥の差。
「・・・・・・・・・」
花太郎は自分の手を見る。
握った感触も、その体温も、まだ覚えている。
剣など握ったことのないような、綺麗な手だった。
細い、腕だった。
(練習試合って言ってたけど・・・)
大丈夫なのかな。
また、倒れたりしないだろうか。
「・・・・見に・・あ、でも・・・」
立ち上がったり、また座ったり、部屋を右往左往する花太郎。
その日から。
花太郎の胸の内に、の存在が住みはじめた。
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(05/11/27)