基本的に、四番隊と十一番隊は仲が悪い。
というより。
霊力を治療のために使う四番隊を十一番隊は馬鹿にしているし、粗野な十一番隊を、四番隊は疎んじていた。
まあ、つまり仲が悪い。
■ こんぺいとう
その日、救護詰所は人で溢れ返っていた。
応援を頼まれた花太郎がやってくると、患者は十一番隊の者がほとんど。
誰もが皆、命に別状無い外傷で。
酒を持ち込み騒ぎ、手当てをしていた看護婦にまでちょっかいを出す始末。
「や、やめてください!」
見かねた花太郎は、隊員と看護婦の間に割り込んだ。
が、
「うるせえな!」
「うわ!?」
どん!と突き飛ばされ、あっけなく尻餅をつく花太郎。
絡まれていた看護婦はその場から逃げ出した。
「待てよおい!酌ぐらいしろよ〜!」
看護婦を追いかけようとした隊員が持っていた酒を、その手から奪う者がいた。
看護婦ではない。
もちろん花太郎でもない。
あ、と花太郎が声を上げる間も無く、奪った酒瓶を逆さにして隊員の頭から浴びせる。
「ぶはっ!?な、なにしやがる!?」
振りかえる隊員の後ろにいたのは。
「・・・それはこっちのセリフ。なにやってんの?お前ら」
女の声に、隊員たちはあからさまにぎくりとした。
「・・・・・・お、お疲れ様です七席」
「うん。で、何してるの?」
空になった酒瓶を放り投げるのは、十一番隊第七席、。
「・・・・・・」
隊員たちは口ごもる。
「酒盛なら他所でやれボケどもがッ!!」
が一喝すると、騒いでいた隊員たちはわっと散った。
「・・あ怒鳴ったら貧血」
ぐらりと傾く。
「だ、だいじょうぶですか!?」
あわてて駆け寄り支える花太郎。
ソレは、まるで抱きついたような格好だった。
「!!」
息がかかる近さにの顔があって、どきりと身を固くする花太郎。
「ん?」
その様子に気づいて、は花太郎と目を合わせた。
「あ、いえ、その!な、なんか、甘いにおいがしますね!?」
そう、抱きついた瞬間から甘い香りが花太郎の鼻腔をくすぐっていた。
「ああ、これ。やちる賞」
懐から小さな包み紙を取り出す。
「やちる賞?」
「うん、練習試合でね、もらったの。別名頑張ったで賞。食べる?」
「あ、ありがとうございます。とりあえず、そこに掛けてください?」
椅子を示す花太郎。
うん、と返事をして少々おぼつかない足取りで座る。
「お茶、入れますね」
「ぬるめでよろしく」
「・・・猫舌ですか?」
「うん」
わかりました、と返事をして花太郎はお茶の準備をする。
「練習試合・・・出たんですね」
つい先日、倒れて吐血して詰所で治療を受けたというのに。
「うん、いちおう」
「どこの隊とですか?」
「ウチと試合をするとこなんてないよ。内々でさ」
「・・・そうですか」
なるほどどおりで十一番隊の隊員だらけだったはずだ、と花太郎は納得した。
「ま、そんなわけで、ちょっと疲れちゃってね。またやっかいになるよ〜」
そう言いながら、こんぺいとうの包みを開ける。
「わかりました。お茶、どうぞ」
花太郎は湯のみを差し出す。
「どーぞ?」
は、こんぺいとうを一粒つまんで、差しだす。
二人のタイミングは、同じで。
「・・・・・」
両手で湯のみをもった花太郎は、一瞬動きを止め。
「はい、あーん」
の声に口を開ける花太郎。
投げ込まれたこんぺいとうは、舌の上であっけなく溶けた。
「・・・・・」
「ナニ残念そうな顔してんの?」
「いいいい、いえ!そんな・・・!」
ギクリとする花太郎。
溶けたのは甘味だけではなく、の指が唇に触れた感触。
「まだまだあるよ?ホラあーん」
「いえ、あの、自分で食べますからソレよりお茶ァちゃあ!?」
慌てた花太郎は、湯のみをひっくり返した。
「あーあー、なにやってんの山田・・・」
「す、すいません!あ痛!」
落ちて割れた湯のみのカケラに、花太郎は指を切った。
「しょうがないなあ・・・」
は花太郎の手を握って。
血の滲むその指を。
「!」
咥えた。
真っ赤になる花太郎をよそに、勝手知ったる他人の家とばかりそばの引き出しからバンソウコウを取り出す。
テープをはがしてようやく、口から指を離して巻いて。
「まったく、どっちが患者だかわかりゃしな・・・、」
そこでようやくは花太郎の顔を見た。
その表情で、我が身の所業に気付く。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「あ、ありがとう、ございます・・・」
俯いて、礼を言う花太郎。
「・・あ〜、ま、以後気をつけるようにそれじゃ!」
は立ちあがり、スタスタ歩いていく。
「さん!?あの、治療は!?」
「あー、また今度で!」
バタン!と閉じられるドア。
「・・・・・・・・」
花太郎は、残されたこんぺいとうを見る。
真っ白なそれらの中に、ぽつぽつとあるピンク色。
彼女が食べさせてくれたのは、ピンク色で。
なんだかそれが、嬉しくてしょうがない花太郎だった。
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(05/11/30)