「ちん!今度のお休み一緒の日だよね?遊びに行こうよ!!」
「・・・・よく見つけましたね?ふくたいちょー」
屋根の上で惰眠をむさぼっていたに、やちるが話し掛けてた。
「ちんの霊圧、見つけやすいもん。ギュってしてるから!」
「・・・・」
末恐ろしいコドモだ、とは内心おののいた。
どっかの隊の隊長になった少年の才能にも驚いたが、この少女はそれ以上かもしれない。
「・・・・さいでっか。遊びってどこに行きたいんで?」
「どっか!」
身を乗り出すやちる。
「ど、どっかって・・?」
「オモシロいとこ!あ、剣ちゃんも一緒だよ☆」
「そりゃあ一気に難易度が上がりましたねえ・・・」
そう言って、ようやく身を起こす。
「え〜?難しい?」
「・・・うーん。じゃあ、温泉とかどーすか?」
「オンセンて、なに?」
「・・・・・知らない?温泉」
「知らない!ソレってオモシロいの?」
「面白いっていうか、気持ちいい」
「ふーん?・・・だって!剣ちゃん!オンセンはー?」
そう言ってやちるは屋根の下に話し掛けた。
「ババくせーなオイ」
しかし言葉を返したのは、剣八の隣にいた一角だった。
「温泉てどこのさ?」
尋ねたのは、その隣の弓親。
「んー、秘湯」
「秘湯?」
「人知れぬ山奥深くに湧き出す源泉の効能は、疲労回復、筋肉痛、切り傷擦り傷。後はええと・・・美肌」
は滔々と語り指折り数える。
「美肌!?ぜひ行きましょうよ隊長!!」
当然のように弓親が食いついた。
「温泉ったって、ようは風呂だろ?」
ようやく口を開く剣八。
「温泉と風呂は全然違いますよ〜」
やちると同じように、屋根から見下ろす。
「銭湯みたいなもんじゃねェのか?」
隣の一角に尋ねる剣八。
「広さはともかく、全然違いますよ。もしかして隊長も温泉未経験で?」
「まあな」
「じゃあ、オンセンに決ッ定☆」
やちるが決をとった。
「あ〜、じゃ手配しときますんで私はコレでおやすみなさい」
ゴロリと寝直す。
「バカヤロー!起きろ!サボってねえで仕事しろ!!」
一角の怒声が、隊舎に響き渡った。
そんなわけで次の休みの日、が勧める温泉に一行は向かったのだ。
■ 幸福なる日々?【後編】
「で。なんで起こしてくんなかったの!?」
浴衣姿で戻ってきた一角と弓親に、は怒った。
丼鉢を手にしながら。
「だって君、寝てたじゃない」
呆れたように言って、の隣に座る弓親。
「だから、起こしてよ!!」
「途中で捨てられなかっただけましと思え」
一角はの前に座った。
「私一人だけ食堂に置いてさー。んぐんぐ。なんだよもう!」
「怒るか食べるかどっちかにしたら?」
目の前に積まれた丼鉢を脇にどける弓親。
「相変わらず良く食うな、お前はよ・・・」
その数の多さに一角も呆れた。
眠っていたの代わりに、の斬魄刀【万華鏡】に導かれてやってきたのは、しなびた温泉宿だった。
起きないを食堂の座敷に置いて、彼らは温泉を堪能したのだ。
「大体、秘湯って言ってたくせに温泉宿じゃない、ココ」
弓親が言った。
「秘湯だよ。山奥から源泉を引っ張って、ここに宿と湯治場建てさせたの」
「建てさせたって・・・、まるで経営者みたいなこと言いやがって・・・」
と、一角。
「だって経営者ですから」
ずずっと茶をすする。
「は?」
の言葉に我が耳を疑う一角。
「だから、私がここのオーナーなの」
「マ、マジかよ?」
「そうだよだからタダだよよかったね。これからは様とおよび」
「様よお、土産売り場はどこだ?」
「土産は一階の・・って、隊長!?」
声に振り返ると、やちるを肩に乗せた剣八だった。
「オンセン楽しかったよちん!」
湯上りのピンクの頬で、やちるが言った。
「そりゃよかった」
「確かに風呂や銭湯とは一味違うな」
剣八も我が身で体験して納得したようだ。
「肌もつるつるだしね〜」
とウフフと笑う弓親。
「あ、そうだちん、お土産こんぺいとうある!?」
「ありますよー」
「やったー!ほら剣ちゃんはやくはやく!」
「あー、いいっすよ買わなくて。私の名前出して好きなの持ってってください」
「ホント!?ありがとちん!剣ちゃんホラはやくはやくはやくはやくはやく!」
やたらめったら急かすやちる。
「あー、ったく。わかったわかった」
やちるを背に乗せたまま、剣八は土産物売り場に向かった。
「ねえ、様。ご飯もタダ?」
お品書きを眺める弓親。
「うん」
「そりゃいーや。おススメは?」
と、一角。
「ハゲの丸焼き」
「喧嘩売ってんのか?」
「ホントだもん。ここ魚料理がうまいの。後デザートもね。じゃ、私ひとっぷろ浴びてくる」
食堂に一角と弓親を置いて、は露天風呂に向かった。
が、
「ね〜、ちん。お土産売り場どこお?」
「つうか、ここはどこだ?」
「・・・・・・」
隊長、副隊長につかまって土産物売り場に案内したは、結局温泉に入ることなく宿を出ることになった。
「お土産はやっぱり温泉まんじゅうすね」
「ねー」
「・・・食うなよ」
もぎゅもぎゅとまんじゅうを食らうやちるとに突っ込む一角。
「まんじゅうは食うもんだよ?」
「土産は帰り道で食うもんじゃねえよ」
「もー、つるりんうっさい」
傾く日を背に、一行は隊舎への帰路をゆく。
そんな、休日。
それはきっと、たぶん。
あの頃に比べたら。
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(06/01/11)