目を覚ませば、世界は色褪せていた。
それは紛れもなく前兆。
もう、あまり時間がない。
(でも・・・・)
■ 白黒(モノクロ)
「ちんはっけん!」
子供独特の高い声がしたかと思うと、の肩にずしっとなにかがのしかかる。
「なにしてるのちん!さんぽ?散歩?」
それは、上司である十一番隊副隊長・草鹿やちるだった。
「ま、そんなとこっす。ふくたいちょーは?」
「剣ちゃん探してるの!でももういーや。ちんといっしょに散歩するよ!」
「・・女心は複雑ですね、副隊長」
「ナニソレ?あはっ、ちんってば面白い!」
「そうすか?」
「うん。あ、ねえ!おなかすいた!甘いもの食べたい!」
「じゃあ、甘味屋でも行きますか」
「行くう!」
そして、やってきた甘味屋には。
「先生!」
ガタ、と椅子を鳴らして立ち上がるのは、雛森桃だった。
「おー、おす」
ひら、と手をあげる。
先生?と首をかしげるのは、隣の席の虎徹勇音。
さんは総学院で教師をされてたんですよ、と言うのは向かいの伊勢七緒。
「あら、今日はやちるのエスコート?」
からかうように言うのは、松本乱菊だ。
「ええまあ。それより、美人副隊長せいぞろいっすね?」
目の前の一同を見て、はそう言った。
「ん〜、なんかばったりと会っちゃってね」
「あたしは乱菊さんにムリヤリ連れてこられて・・・、仕事があるのに・・・」
じと、と乱菊を睨む桃。
「なによ〜、いいじゃないのちょっとぐらい〜〜」
「もう。日番谷くんに怒られても知りませんからね!」
「あ〜、そういやあの天才少年は元気なの?」
「元気元気。今日も眉間にしわ寄せてるわ」
の問いを、桃より先に乱菊が答えた。
「それ、半分以上乱菊さんのせいじゃ・・・?」
と、桃。
「立ち話もなんですから・・・、こちらにどうぞ?」
勇音が二人の席を用意した。
「ありがとー!」
ぴょこんと座るやちる。
「スンマセンね。で、ふくちょー何食べます?」
やちるの隣に腰掛ける。
「ん〜とね、えっと。コレおいしそう。いちごの!」
「じゃあ、私は抹茶のにします」
「・・・・まっちゃもおいしそう」
「じゃあ、半分こでかえっこしましょう」
「うん!」
メニューを見ながら話す二人の姿に、乱菊はぷっと吹き出す。
「なんか、親子みたいね」
「せ、せめて姉妹に・・・」
がく、と頭を落とす。
「ふつつかなムスメですが!」
「え、ふくちょうーが母親すか?」
「そーだよ。ちんあぶなっかしいんだもん!」
「はあ、そりゃ面目ない」
そんな二人の会話に、今度はみなが笑う。
女ばかりの華やかなお茶の時間が済んで。
店の前で、みなに別れを告げた。
「ちん、どっか行こうよ!」
「え〜、はおなかいっぱいでダルダルっすよ〜」
「じゃあ散歩!おぶって!」
「ハイよ」
やちるをおんぶし、は歩き出す。
その後ろ姿を、見て。
「あの・・・、さんはどこか具合が・・・?」
勇音は、遠慮がちに桃に尋ねた。
「先生は、元々病気がちで・・・総学院の教師を辞められたのも、療養のためなんです」
「そうそう、そのつながりでウチの隊長の臨時教師だったワケ」
と、乱菊が付け加えた。
「ええ、そうなんですか!?」
初耳だ、とばかりに桃は驚く。
「教えてたのは三日もなかったらしいけどねェ」
「・・・何か、気になることでも?」
七緒が口を開く。
「そういうわけじゃ・・・ただ・・・いえ、なんでもないです」
勇音は言葉を濁した。
ただ。
あんな奇妙な魄動を、見たことがなかった。
陽射しは暖かく、風は清々しい。
町を離れれば、広がる野原。
揺れる野の花を眺める。
「きれーだねェ、ちん」
「そうすね」
しかし、の瞳には、その鮮やかな色はうつらない。
「ちん」
「はい?」
世界は、モノクロに変わってしまったから。
「遠くにいっちゃ、駄目だよ?」
「・・・・・」
それは、この世界に別れを告げる前兆。
ぎゅっと抱きついてきたやちるからは、ひなたの匂いがした。
||| 前 | 戻 | 次 |||
(06/02/28)