その音に驚いて、振り返る。
『バレバレですよお?花太郎先輩、さんのことがスキなんでしょ?』
その声に、さらに驚く。
(・・・山田が、私を?)
でも。
なにより、驚いたのは。
私が。
いや、きっと、もうずいぶん前から。
その声に、その存在に、気付いたときから。
■ 眩暈(ゲンウン)
まるで水中を歩くかのよう。
視界はモノクロで、時折砂嵐が浸食する。
霊圧を、うまく制御できない。
(ちくしょう)
自分の身体なのに、ままならない。
溢れる霊力が、己を傷つける。
世界が、彼女を拒む。
いや。
あちらの世界が、を呼んでいる。
『早く!』
魂を揺さぶられる。
『早く、ここへ!』
(もうすこし)
もう少しだけ、待って。
(まだ・・・)
まだ、伝えていない。
別れすらも。
だから、もう少しだけ。
「待って、万華鏡・・・・・・・・」
ぐ、と斬魄刀の柄を握る。
顔を上げた先に立つのはまるで鏡に映った自分。
その手が誘う。
はやくこちらに来い、と。
まだ、まだ行けない。
口の中で占めていた、鉄の味すらわからなくなっていても。
まだ。
行けない。
頭を振る。
「存在すら幻と謳われた幻惑系最古の斬魄刀・・・万華鏡。君が、持ち主か」
「!!」
静かな声が、を現実世界に引き戻す。
「随分、具合が悪いようだね。霊力が、だだ漏れだ」
太陽を背に立つその男は、五番隊隊長藍染惣右介。
「・・・・・藍、染ッ・・」
「カザアナの身体、膨大な霊力。精神すら蝕みかねない奔流。それでも正気を保っているのは・・・たいしたものだ」
微笑む藍染。
だが、その眼鏡の奥の瞳は、凍てついている。
「ようやく見つけた。今まで、うまく隠れていたようだが」
そして、耳をつんざくような、共鳴音が響く。
対なる斬魄刀が、放つ音。
万華鏡。
頼む万華鏡。
もう少し、もう少しだけ。
どうしても、伝えたい言葉があるんだ。
『・・・仕様の無い主だ』
どこからともなく弾け降る、銀の欠片。
閃き、散って、伝われ。
「それが君の、・・・・万華鏡の能力か」
砕かれる。
塵となって、消え失せる。
いとも、あっさりと。
(・・・・クソッ)
術の反動に耐え切れず、膝をつく。
身体が、重い。
こんな簡単な術ですら、体中の骨という骨が悲鳴を上げる。
「鏡花水月に、万華鏡の術は通じない。その逆もまた然り。対を成すが故その能力を互いに相殺する。知らぬわけではないだろうに・・・・」
藍染の腕が、音も無く上がる。
その手に、柄。
ゆっくりと鞘から引き出される、斬魄刀。
鏡花水月。
衰弱したには、術など使わなくとも、その一閃で、十分。
(こんなところで・・・!)
まだ。
まだ、なにも。なにひとつ。
伝えてない。
(・・・花、)
「・・・・ッさん!」
振り返れば。
そこに。
息を切らせた花太郎の姿が、あった。
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(06/03/04)