一つ摘んでは、ため息。
二つ摘んで・・・・またため息。
野花が咲く平原の中。
丸めたその背中を、ルキアはしばらく眺めていたが。
【 巡る花 】
「なにをしておるのだ、花太郎」
「うひょわあ!?」
ルキアに声をかけられた花太郎は素っ頓狂な声を上げて飛び上がった。
それでも、摘んだ花はしっかりと握ったまま。
「・・・なにをしておるのだ?」
若干呆れを含んで、もう一度ルキアは言った。
「こ、こんにちは、ルキアさん。ど、どうしてこんなところに・・・」
「じっとしていては体がなまるからな、散歩をしていた」
「体の具合はどうですか?」
「うむ、なかなか調子がいい。しかし・・・花摘みとはまた乙女チックだな?」
「この花は・・・、煎じて飲めば薬になるんです」
束ねた花を見つめる花太郎。
「薬・・・ああ。ははーん」
合点がいったルキアは意地悪く笑む。
「殿にか。あいかわらず甲斐甲斐しいなあ」
「・・・・・・・・。少しでも元気になってほしくて、いろいろ、やってるんですけれど・・・」
からかうようなルキアの言葉に照れるどころかシュンとうなだれる花太郎。
「粉薬は苦いとかカプセルはのどに詰まるとか。注射は痛いからいやだとか酒さえ飲んでれば体内が消毒されて健康だとか言って一升瓶何本も開けてそのくせ風邪だけは真っ先に引いて・・・!」
「お、落ち着け、花太郎?」
しかし、花太郎の言葉は留まる事を知らない。
「もう、全然自分の身体に頓着しなく、って・・!無茶ばっかりするし、いくら言ってもちっとも聞いてくれないし、ぼく、本当に心配で心配で・・・!」
「う、うむ。お主が殿のことを想う気持ちはよくわかる。よく知っている」
六番隊の隊舎牢で、さんざん聞かされたのだから。
「ぼく、もう、ほんとうに・・ううっ!」
ぐず、と鼻を鳴らして涙目になる花太郎。
「な、泣くなー!」
「うう、だって・・!」
「わ、私からも殿に言っておいてやるから。な?」
うつむく花太郎の顔を覗き込むルキア。
花太郎はすん、と鼻をすすり。
「・・・・・・これ。煎じて飲むとのどにいいんです。身体もあったまるし。これからまた、風邪の流行る季節だし。よかったら、コレ、浮竹隊長に差し上げてください」
顔を上げ、白くて可憐な花束をルキアに押し付けた。
「でも、それは・・・」
戸惑うルキア。
「いいんです。どうせ絶対飲まないでしょうし」
そう言って花太郎はルキアに背を向けた。
「・・花太郎」
「・・・・・・・・、はあ」
花太郎は大きくため息をつき、背を丸めてとぼとぼ去っていく。
「・・・・・」
かける言葉もないルキア。
ルキアにできたことといえば難儀な恋人をもった花太郎を、哀れに思ってやるだけ。
言われたとおり浮竹に花を渡すことぐらいだった。
しかしこれが、予想外の結果をもたらす。
数日後。
報告書を届けに来たルキアが、執務室で見たものは。
「コレを煎じて飲むと喉に良いそうだ。身体も温まるし」
「・・・はあ」
浮竹の向かいに座り、なみなみと注がれた煎じ茶を憂鬱な目で見つめるの姿。
テーブルの真ん中には、見覚えのある白い花が飾られていた。
「お互いあまり丈夫な身体ではないからな。体調の管理はしっかりやらんとな」
「・・・・、はあ」
力なく相槌を打つりゅう。
まるで借りてきた猫状態。
一方浮竹のほうは、同じように体の弱いに親近感を持っているらしい。
の姿を見つけてはアレは効くコレは効くと薬をすすめる。
恋人である花太郎はつっぱねられても、隊長のすすめを断るわけにもいかない。
「まだたくさんあるから、持って帰るといい」
「・・・・・・・・・・・」
飲まされた上に土産まで持たされるのか、と絶望的な表情になる。
その様子に、ルキアは必死で笑いをかみ殺し。
助けを求めるかのようなの視線を無視して。
「おはようございます、浮竹隊長」
花太郎に報告してやらないとな、と思いながら朗らかに挨拶をした。
【終】
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