「好きです」
「さんが、好きです」
もう一度、花太郎は言った。
「・・・・・・・・・・・・うん、しってる」
しまった、飲ませるんじゃなかった。
後悔しても、後の祭。
好きです好きです好きです好きです 何度言えば手に入る?
「じゃあ、おやすみなさい」
そう言って花太郎は部屋を後にした。
「・・・・・・。ムふ」
待ってましたとばかりには含み笑いをもらし、隠してあった酒を取り出す。
「まったく、禁酒だなんてやってらんないよ。命の水をなんと心得る」
懐から杯を取り出し、並々と注ぐ。
「あ、そうださん」
杯を口に運んだ瞬間、花太郎が戻って来て襖を開けた。
「・・・・・・・・・・」
ヤバ、という表情で固まる。
「・・・・・・・さん。なにしてるんです?」
そんなを、愕然と見下ろす花太郎。
「いや、その・・・」
もはや、どんないいわけも通用しないこの状況。
「・・・・・・」
花太郎は部屋の中に足を踏み入れ、のすぐ傍ですとんと正座をする。
顔を伏せて。
「・・・・・・さん」
「な、なに?」
「ここはどこですか」
ふつふつと涌き上がる感情を抑えた声で、花太郎は尋ねた。
「ここって・・・ここは四番隊の救護詰所・・・」
「・・・なんでさんはここにいるんですか」
「・・・・・・は、花太郎と一緒にいたいからv」
柄にもなくくねっと媚びてみせる。
「治療のためです!こっそりお酒を飲むためじゃありません!」
顔を上げ、キッとを睨む花太郎。
「わ、わるかったって、うん」
その勢いに、思わず身を引く。
「身体に悪いってわかってるのにどうして飲むんですか!」
ずい、と身を乗り出す花太郎。
ずざ、と後ろに下がる。
「いや、それはさ、ほら〜・・・」
「駄目だって言うのにきかないなら・・・!」
花太郎はから杯を奪った。
そして、一気に飲み干す。
「ちょ、花太郎!?」
「・・・・・・・・・」
花太郎はは目をトロンとさせて。
「・・・・・・・・さん」
「な、なに?」
「好きです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、話は冒頭に戻る。
「本当に、好きなんです」
頬を染めて潤んだ瞳で、花太郎は言う。
「あ、うん」
コクコク頷く。
「好きなんです。本当に、好きで。好きなんです」
「うん、わかってる、わかってるからホラ酒こぼれてるし」
花太郎の手から杯を奪い返す。
「・・・僕よりお酒ですか?」
「や、ちがうって」
「さん!」
「ハイハイもう飲まないって!ホラ!」
は白旗を上げる代わりに、酒瓶をつきつける。
「・・・・・・」
花太郎は酒瓶を見て。
それを手にとって。
「こんなものがあるから・・・!」
フタを外してラッパ飲みした。
「は、花太郎!?ちょ、!駄目だって!!」
「・・・・・・・っぷは!」
が止める前に、花太郎はすべて飲み干した。
空の瓶が花太郎の手から滑り落ち、部屋の隅に転がっていく。
「花太郎・・・?」
様子を伺うように声を掛ける。
「ぼく、さんが好きです」
「・・・・うん」
「好きです。好きです、好きです。好き、なんで・・・グスッ」
「・・・・な、泣くなよ〜!」
「だから、元気で、いて、欲しいんです・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ずっと、・・・そばに。好き、だから・・・・」
「・・・・・・・・花」
は両手で花太郎の頬を包んで。
濡れた唇を、ぺろりと舐めた。
「そんな、何回も言って。・・・私を酔わせてどうする気なんだか」
「、さん・・・?」
なにが起こったのか分からず呆然とする花太郎の前で、は頭まですっぽりと布団を被る。
「もう寝る。オヤスミッ」
「さ・・・うぷ!?」
ぐ、と喉を鳴らし、突然顔色を変える花太郎。
「バッ・・!一気に飲むから!吐く?はくのか!?」
慌てて身を起こす。
「〜〜〜っ!!」
花太郎は目を白黒させつつも必死で口元を押さえる。
「あーもう、ムードもへったくれもないな!誰か、洗面器〜〜〜!!」
静かな救護詰所に、の声が響いた。
【 終 】
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