襲い掛かる、酷い雑音。







それは、唐突に。









騒ぐ。

啼く。

響く。













どこかで、誰かが、斬魄刀を解放したのだろう。















迷惑な話だ。





なによりも厄介なのは自身の能力。

いや、欠点というべきなのか。







解放された斬魄刀。


それに共鳴するように、反発するように。


次々と騒ぎ出す斬魄刀たち。






これはアレによく似ている。

一匹の犬が吠えればご近所の犬すべてが吠え出すアレ。








もちろん主ではない自分に、それらの声が理解できるはずもなく。



ただ、本当に、酷い雑音でしかない。




聴覚どころか、視覚すらも侵され。






歩いているのか、走っているのか。



立っているのか。



わからなるほどの、負荷。







全身を打つ衝撃にようやく、自分が倒れたのだと気付く。












ああ、私、どこに行こうとしていたんだっけ。









ああもう。




煩くて、もう。










なにも。















なにも。















「・・・・・さん!?」













聞こえた。








































                   ノイズ、ノイズ、ノイズ――きみの声






































「どうしたんですか!?しっかり!」

耳元で声。




この、声は。




・・やま、だ?





ああ、声が出ない。

耳鳴りがひどい。




目を開くが、視界は砂嵐。





「ああ、動いちゃダメです!じっと・・・。ええと、一番近い救護詰所は・・・!」




ああ、声が遠くなる。




どうにか腕を伸ばし、山田の、袴のすそを掴む。






行かないで。




そんな短い言葉すら出せない。





「ど、どうしました!?」






「・・・・」








、さん・・・?」



少しずつ遠くなる、雑音。



消えていく耳鳴り。







「・・・、もう平気だから」

ようやく、声を出す。

「平気って・・、カオが真っ青じゃないですか!」

「元々、白いの」


言って。

ゆっくり、ゆっくりと、身を起こす。




さん・・・」

「大丈夫。ちょっとクラっとしただけだから。もう大丈夫」
「・・・、駄目です!!」

強い口調でそう言われ。

次に、一瞬の浮遊感。




すぐに気付いた。

この、体勢は。




「や、山田・・・」
「駄目です!!」







いや、まだ何も言ってないし。









「自分で、歩くから・・・」

コレはいわゆる「お姫様抱っこ」だ。

ちょ、勘弁して欲しい。




「駄目です!!」




「恥ずかしいんですけど・・・」
「駄目です!!」

ズンズンと歩く振動が伝わってくる。




「山田・・・」
「駄目です!!」







問答無用ですか。







救護詰所なんかに入れられたら、また、治療だの投薬だので、面倒なのに。






どうせ、治りなどしないのに。





この身体は。








「山田、力持ちだね・・・」

「ありがとうございます!」




あ、台詞が変わった。




でも、歩き続ける山田。






まあ、今回は諦めよう。









歩く振動で落ちないように抱きついた身体は、華奢で。

こんなに小柄でも。




「山田も、やっぱり男なんだなァ」





私を抱えていても、息ひとつ上げないんだから。







「・・・・・」









あれ?






山田が黙ったので、気付いた。





いつの間にか、酷い雑音も耳鳴りも消えていて。





山田は、立ち止まっていて。





ぼやけていた視界が、徐々に元に戻り。

























最初に見たのは、山田の、真っ赤になった顔だった。




















【終】

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