「で、結局いなくなったのは、藍染・市丸・東仙、ね」
「あ、はい」
の言葉に、若干戸惑いながらも花太郎は相槌を打った。
「結構あちこち壊れてるねえ・・・」
部屋の中、はソファーにうつ伏せに寝転がって、足をぶらぶらさせていた。
「あの、さん・・・・」
身じろぐ花太郎。
「不吉といわれる旅禍に救われた、か・・・」
は花太郎の膝の上で腕を組み、その上に頭を乗せている。
膝枕、なんて甘ったるいものではなくて。
なんだか、なんというか。
(クッション代わり、みたいな・・・?)
なんとなく、気恥ずかしいような、居心地の悪さ。
「さん・・・」
「ん〜?」
けれど、間延びした声で目が合えば。
「・・・いえ、なんでも」
身を小さくして、俯く。
久方に聞く声が、感じる視線が、その姿が。
言葉を交わすのが、本当は嬉しくてしょうがない。
「大体さあ、ちょっと寝てたぐらいで除隊なんてひどくない?また無職だよ。プーだよ」
フウとため息をつく。
ちょっとと言うが実際は数ヶ月音信不通。
当然といえば当然の措置だろう。
花太郎は、当然、事情を話そうとしたが。
『なにをぐずぐずぐずぐずしてる!』
が眠りに入ってすぐ、花太郎の目の前に現れたのは、に良く似た少女。
の斬魄刀・万華鏡だと知ったのはしばらくしてからだが。
『さっさと主の身体を安全な場所に運べ!このウスノロが!!』
叱咤され、わけもわからずあわてて総合救護詰所に運んだ。
『いいか?主の居場所を他言すれば貴様を殺す。プチっと殺す』
をベッドに寝かし、部屋を出たところでそう脅された。
部屋には幻術が施され、その後何人も近づかなかったのだ。
が、目覚めるまで。
「・・・あ、じゃあ、ぼくの家に来ますか?」
「ウチ?花太郎の?」
「席官には、住居が提供されるでしょう?ほとんど帰ってないから、ホコリだらけですけど・・・」
「え、ナニ、囲って養ってくれんの?」
「えええ!?いえ、そんな!滅相も無い!!」
真っ赤になって首を振る花太郎。
ああそうか、この人は貴族なんだから、無職になったって路頭に迷うことなんか無い。
眠っていたがやっと目覚めて。
それまで話すことすら出来なかった分を取り返すように傍にいたい、なんて思っていたんだと、花太郎は気付く。
「・・・・・そ、それよりも、あの!い、行かなくていいんですか?」
「帰ってきたばかりなのにどこに行けっての?」
ずっと眠っていただけだというのに、そんなことを言う。
そういえば、目覚めたとき彼女は『ただいま』と言った。
なにより花太郎が引っかかるのは、が、眠っていた間の出来事をあらかた把握していることだ。
「さっき、裏廷隊がきたでしょう?急いでください、って・・・あれは?」
「ああ、いいのいいの」
ひらっと手を振る。
「・・・どうせこれから忙しくなるんだから、今のうちにだらだらしとく」
「でも、・・・・」
そのとき、花太郎の言葉を遮るように扉が開く。
「やっぱりここにいた。伝令見なかったの?ちゃん」
やってきたのは、派手な女物の着物を羽織った、
「き、京楽隊長!?」
「・・・・・なにしにきたの?」
驚く花太郎とは裏腹に、あからさまに嫌な顔をする。
「もちろんお迎えにv・・・山じいが呼んでるんだから、ズルはダメだよ」
京楽は肩をすくめ、差し出した手から、銀色の欠片を放した。
床に落ちた瞬間、それは姿を変えた。
死覇装のに。
「え!?」
声を上げる花太郎。
「ダメだよ、こんなのあちこちに放っちゃ。ただでさえいまは尸魂界中ピリピリしてるんだから」
「そんな、霊力のほとんどない“銀花”に気付くのはアンタくらいだよ」
「そーでもないよ?その“銀花”、あちこっちで好き放題してるよ」
「え、マジで?っかしいな、制御がうまく出来なかったかな・・・?」
ようやくは身を起こす。
「ココに来る途中も、ほら、なんて言ったかな、あのオレンジ頭の彼。からかって遊んでたし」
「あー、もー、しょうがないなあ!めんどうくさいな〜」
ぶつぶつ言いながら立ち上がる。
「なんで呼ばれたかわかってるでしょ?」
「だからヤなんだよ!」
「・・・・」
花太郎も立ち上がり、会話を続ける二人を見た。
歩き出す二人に、声を掛けるきっかけを失ったまま、ただ黙って見送る。
「ちょっと行ってくるよ、花太郎」
扉から出る寸前、は振り返って声を掛けた。
「あ、い、いってらっしゃい!」
「・・・すぐもどるよ」
そう言い残して、出て行った。
「・・・・・」
言ったとおり、さんはすぐ戻ってきたのだけれど。
「花太郎、私さー、現世に行くよ」
「ええええ!?」
さんはそう言ったけど、その後イロイロとあって・・・。
それはまた、いつかどこかで話せる機会があれば。
【終】
(06/03/08)