という少女は、なんてことはない普通の女子高生だ。 あげる悲鳴が『きゃあ』ではなく『わあ』とか『うひゃあ』だとか。 細かいところを上げればキリが無いが、おおむね目立たない、地味な少女だ。
【 それじゃあ、また明日・4 】
キレ気味に叫ぶ龍麻。 後ろから様子をうかがっていると振り向く。 ・・・小動物か? 気配を断って近づいて声を掛ければ「うおう」だか「わひゃあ」とかいったマヌケな声を上げる。 それはちょっと面白い。 いやいやそうではなくて。 ゲシッ! とりあえず京一の意見は一蹴した。 「違っげーよ、バカ」 「言えば済むことだろ!?なんで蹴るんだ!」 「ひーちゃん、なんでそんなこと聞くの?」 「ん〜、ちょっとな」 綺麗な逆ハの字の眉は機嫌が悪くなくてもその間にしわが寄っている。 物怖じしない仲間達は平然という。 「龍麻はカオが怖いから・・・」 はっきりいってかなりショックだった。 勿論龍麻は自分を不良だとは思ってないし、なるつもりもないのでカツアゲなんかしないし煙草も吸わない。 ・・・今更考えてもしょうがないことだが。 ともかく龍麻は考えた。 実際口より早く手や足が出るので、周りのイメージはあながち間違っていないのだが。 だが龍麻にしてみれば毎日遅刻も早退もせずにきちん学校に出て、授業もちゃんと受けている自分より、いい加減な京一の方が印象が良いのは解せないのだ。 大体、京一なんて木刀持っているんだぞ、木刀を。 腑に落ちない。ムカツク。 ギロリと京一を睨む。 「な、なんだよ!?」 そして先日、龍麻は気づいたのだ。 不良に頭のいい奴はいない、という実にどうでもいい事ことを。 なのにあの少女、だけはいっこうに態度が変わらない。 このところ妙な事件続きで忘れていたが。 「・・・それは、やっぱりひーちゃんが怖いからじゃないの?」 うんうん、と頷く一同。 「・・・ボクと京一は2年の時同じクラスだったよ?特別親しくはなかったけど・・・ねえ京一?」 「俺は一年の時同じクラスだったぞ。学級委員長で、俺が転校してきたときに学校を案内してくれたが・・・」 「・・・半泣きか?」 「・・・・・・・」 「気を使ってくれていたが、えらく怖がられてなあ・・・今はそうでもないんだが」 「何か気に掛かることでもあるの?」 そこまで言って、葵ははたと気づいた。 「もしかして、彼女も・・・?」 は《力》を持つ者ではない。 「そういえばさんは霊研部よ。ミサちゃんに聞いてみたら?」 アン子はさらりと言ったが、周りにとってそれは爆弾発言だった。 「マジかよ!?」 「し、知らなかったよ、ボク・・・」 一瞬にして場がざわつく。 「あの部に裏密以外の生徒がいたとはな・・・」 「あら、霊研は文化部の中では部員数が多いほうよ?」 さすが、生徒会長は学内の部活動を把握している。 「お、おう・・・通り魔の話だろ?」 「そう!この三日で高校生からOLくらいの若い女性が何人も襲われてるのよ!」 「狙われるのはきまって髪の長い女な?」 「そうよ!」 「だから遠野、そういうことは警察に任せたほうがいいと何度も・・・」 「だ・か・ら・!ケーサツに任せられない事態になってるのよ!!」 「・・・犯人は《力》を持つ変態野郎ってことか?」 「そういうこと!」 「あ、俺職員室行かないと」 「どこに行くのひーちゃん!話はここからよ!」 「だーから、職員室。後で聞く、あとで」 と、心の中で呟く龍麻。 職員室に向かう龍麻に、声をかける女子生徒がいた。 振り向かずともわかるその声は。 「裏密。・・・なんか用か?」 「ちゃんは、駄目〜」 「・・・・・・あん?」 「あの娘は、違うわ〜〜」 「なんの事だよ?」 龍麻は怪訝な顔をしたつもりが、それはとても凶暴なものだった。 「あの子は“見鬼”じゃないわ〜」 そこまで聞いて、ようやく龍麻は合点がいった。 「・・・・気付いてたのか」 それは龍麻がまだ誰にも話したことのない、力。 「俺のこと?」 「小動物みたいに、優しくしてあげてね〜」 「・・・・・。随分気にしてるな?アイツのこと」 「う〜ふふ〜、だって〜、親友だもの〜〜」 「そ、そうなのか・・・?」 「そうなの〜。じゃ〜ね〜」 「お、おう・・・」 こってりと絞られると思いきや、マリアはあっさり龍麻を解放した。 「誰にでも読める字で書いてちょうだいね?緋勇君」 「・・・・・・・ハイ」 教室の前で、ゴミ箱を持ったが立っていた。 (さっさと中に入ればいいものを、なにをしてるんだか・・・) 蝶の形をしたバレッタが、眼に飛び込んできた。 その姿が、まるで陽炎のようにゆらいでいたから。 「ふおう!?」 奇声を上げて飛び上がるに、龍麻もびっくりした。 「お、お前・・・変な声出すなよ、こっちがびっくりするだろッ」 「ご、ごめんなさい・・・・・・」 「・・・お前ってさあ・・・・」 「な、なに?」 やはりおどおどしている。 「ま、いいや。入らねェの?」 「あ、うん、入る」 (06/06/29) |