幻惑ライブラリ









     真神学園。




「なんでお前、ここにいるんだ」

教室の前でばったりと出くわした龍麻は、そう言って不審人物かのごとくを睨む。

「なんでって・・・ほ、補習」
そんなことを聞かれるとは思いもよらず、はおずおずと答えた。




夏休みのこの時期、学校の教室にまで足を踏み入れる生徒に課せられたのはそれ以外のなにものでもない。




「補習って、お前・・・馬鹿だったんだな」

「・・・・」
自分のことを棚に上げた言葉に、はなんと言い返せばよいか分からなかった。




「おお!?ちゃん!ちゃんじゃねェか!!」
リノリウムの廊下に足音を響かせ、走り寄ってきたのは京一だ。

「これぞまさしく掃き溜めに鶴!地獄に天使!右は龍麻、左は醍醐の男臭いサンドイッチよさようなら!!」

さあどうぞ!と我が家に招くがごとく教室のドアを開ける京一。




「・・・・・・・」

だからと言って喜ばれても返事に困ってしまう




「まあとりあえず、京一がやる気になったみたいでよかったよ・・・」

京一をどうにかここまで連れてきた醍醐は、肩の荷を降ろしたような表情をした。


















「え、なんだよ、ちゃんの補習って今日だけかよ!?」

あからさまにがっかりする京一。
京一は、配られた補習用のプリントに目もくれず、教師が去った途端隣に座った・・・というか「ここここ!」と言って無理矢理座らせたに話しかけていた。

「う、うん・・・」
引き気味に頷く

よくよく見れば、だけプリントの枚数が違う。

「何の教科の補習なんだ?」

「・・・・・・・・・・・体育」
間を空け、もしょ、と答える

「体育〜?」

「す、水泳のテスト、失敗しちゃって・・・」

「・・・もしかしてカナヅチ?」

「そうじゃ、ないんだけど・・・・あの、水は、・・・水の中はときどき・・・・・・」

言い淀む








“通る”から。









「ん?」
聞き返す京一。

「あ、ううんなんでもない」

「じゃあ、あれだ!練習しよう練習!!いざ、魅惑のプールへ!あ、海もいいな!!」

「いやあの・・・だから、テストの代わりにこの補習を・・・」
すっかりその気の京一に、はたじろぐ。

「いつまでも喋ってないで課題をやれよ京一。が困ってるだろうが」
シャーペンを動かしながら冷ややかに言う龍麻。

「へーへー。なあ、ちゃん。この公式どーやって解くんだ?」

に頼るな。自力で解け!」

「んだよ!そんじゃ一生終わんねえよ!!」

「だったらもうずっとここに居ろよ!ここに住め!遅刻の心配がなくなるぞ。旧校舎があるからメシの心配もないしな」

「誰が住むか!」




「・・・・」
どうして旧校舎があればご飯の心配が無いんだろう?とは疑問に思うが、二人の剣幕に尋ねることもできない。

とりあえず、間に挟まれたの居心地は最悪だった。
二人の言い合いに耳をふさぎつつ、ふと、龍麻の向こう隣を見ると。




冬服の醍醐は、真夏の陽射しと問題の難しさに朦朧としていた。

「だ、醍醐君!?」






結局、野郎三人の課題が終わるまで付き合う羽目になる
















その帰り。

「あ、本屋」
そう言って、は立ち止まった。

「なんだ、なんか買うのか?」
前を歩いていた龍麻は足を止め、振り返る。
遅れて二人も振り返った。

「・・・う、うん。読書感想文用の本を。まだ、終わってなくて」

「そんなモン、わざわざ買わなくても図書館で借りればいいじゃねェか」

「・・・・・あ、そっか」
まったくもってその通り、とばかりにぽんと手を打つ

「緋勇君はなに読んだの?」
「まだ読んでねェよ。図書館どこにあるか知らねえし。調べるのも面倒で行ってねェ」
「・・・じゃあ明日一緒に行く?図書館、そんなに遠くないよ?」
「そうだな。明日は補習もねェし。残りの宿題もついでに片付けるか。醍醐もまだ終わってねェだろ?宿題」
「ああ。図書館のほうが集中できそうだ」

「俺も行く!!」
シュパァ!と挙手する京一。

「宿題するつもりなのか?京一・・・」
驚く醍醐。

「バカヤロー!俺の目の黒いうちは、図書館デートなんかさせるか!!俺抜きのラブコメは許さねェ!!」

「・・・・」
いまいちまだ京一のノリについていけないは、オロオロして龍麻や醍醐の顔を見るばかりだ。

「京一、少し慎め。が困ってるだろ・・・」
察した醍醐がたしなめる。

「どうせなら美里や小蒔も誘おうぜ!教えてくれるヤツは多いほどいいからな!ひーちゃん電話だ!」

「命令すんな。京一お前、携帯は?」

「忘れた!」

「死ね」
吐き捨て、龍麻は携帯を取り出す。




『ボクもまだ読書感想文終わってなくて!行く行く!』

小蒔からは二つ返事を貰い、すでに宿題を終わらせている葵も手伝ってくれるらしい。











そんなわけで、いつもの面子とは図書館で夏休みの課題を片付けることになったのだ。




















【続】













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(06/07/01)