夏休みの終りに






残り少なくなった夏休みのある日。
課題を片付けたは家にいても退屈で、街に出ていた。





・・・〜〜♪

「ふお!?」

突然鳴り出した携帯の着信音に、ぼんやりと歩いていたは心底驚いた。
すぐさま、わたわたとバックの中を漁る。

取り出した携帯のディスプレイには<蓬莱寺京一>




「・・・・・」
はしばしソレを眺める。

この間の図書館の帰り、京一に電話番号を入力させられて電話をかけ、その番号を登録した。
もうちょっとで<神速の剣士>と登録させられそうだったのを思い出しつつ、は通話ボタンを押す。

「も、もしも・・・」
『後ろ後ろ!』
かぶさるように、京一の声。

「へ?」

『いーから振り向けちゃん!』




「・・・?」




言われるがまま振り向くと、手を振る京一の姿があった。

図書館の時とは違い、今日は私服だ。




(でもやっぱり木刀は常備なんだ・・・)

そう思いながら近寄ってくる京一を待つ




「よ!どーした一人で。買い物か?」
人懐こい笑みを浮かべる京一。

「う、うん、まあ・・・蓬莱寺君は?」

「俺?俺はオネーちゃんをナン・・・じゃなくて。ブラッとしてただけだ」

「そ、そっかあ・・・」
わかりやすい嘘はあえてスルーしてやる

「一人なんだろ?暇なら俺とデートしようぜ♪」




「で、デート・・・でえと?」

まるで生まれてはじめて聞く単語のように反復する




「よし、そうと決まればまずは腹ごしらえだ!」
の腕を掴んで歩き出す京一。

「え?あの、うええ!?」
肯定したつもりのなかったは戸惑いの声を上げるが、なすすべなくいずこかへと連れていかれた。














「・・・アレ、京一じゃない?」

そう言って足を止めるのは、大人びた長髪の少女だった。
露出度の高い挑発的な服はすれ違う男たちが振り向くほどだ。

「ホントだ〜。アレ?隣に女の子がいるよ、亜里沙ちゃ〜ん」
おっとりとした喋り方をする栗毛の少女。
ふんわりとカールした髪を揺らして小首を傾げる。

「・・・アイツ彼女いたっけ?」
「いないって言ってたよ〜」
「ふ〜ん。これからってトコなのかしら・・・面白そうね。尾けるわよ、舞子」
「わあい、刑事さんみた〜い!」

ある事件をきっかけに京一たちと知り合った亜里沙と舞子。

二人は興味津々で通りの向こうを行く京一とを追った。




「あ、もしかしたら龍麻なら何か知ってるかも」
歩きながらふと思いつく亜里沙。

「じゃあ〜舞子、ひーちゃんに電話する〜!」
バックから携帯を出し、嬉々として龍麻に掛ける舞子。





















真神学園からほど近い、少し年季の入ったアパートに龍麻は一人暮らしをしている。

舞子からの電話を取った龍麻は、ザラリと錆びたような声で答えた。

「・・・京一の女ァ?知らねーよ。・・・デート?どうせどっかで引っかけた女だろ」
二人とは対照的にまったく興味を見せない龍麻。

『女っていうかあ〜、女の子なの。私たちと、おんなじくらいだよ〜?』

「別にアイツが誰と付き合おうがどーでもいい。用がそれだけならもう切るぞ?」

『ねェ、龍麻。アンタはなにやってんのよ?』
舞子の携帯に顔を近づけ、亜里沙が言った。

「あん?布団干してる」

聞かせるように、ばふ、と布団を叩く龍麻。




『布団てアンタ。・・・龍麻、遊んだげるから出てきなさいよ?』

「う、うるせえな!!俺は今日布団干す日なんだよ!!」

『そんなこと言ってると、京一にどんどん先越されるわよ?布団なんか干してる場合じゃないわよ!どうせアンタ一人しか寝ないんでしょ!』

「一人暮らしなんだから一人で寝るのが当たり前だろーがなに言ってんだお前!?お前らこそ他人の色恋沙汰なんざほっとけよ!」








『だってひまなんだもーん』

声をハモらせる亜里沙と舞子。




「夏休みの宿題したのか?お前ら・・・」

『ヤダ龍麻オヤジ臭い!』




「・・・・」
二の句のつげない龍麻。




『ね〜、遊ぼうよ〜ひーちゃん〜』

「・・・・・・」
おっとりとした舞子のお誘いに、龍麻はさらに押し黙る。

『アンタ、布団とアタシたちどっちが大事なの?』

『どっち〜〜?』






「・・・どっちって・・・お前らなあ・・・」




『いいからさっさと出てきなさいよ!グズね!』

『ひーちゃん、おねがァい〜』















「・・・・・・」




結局。

二人に押し切られ、部屋を後にする龍麻だった。













【続】









 + 

ひーちゃんは押しに弱い。
(06/08/05)