京一がを誘ったのは、馴染みのラーメン屋<王華>だった。






「え、ちゃんて一人暮らしなのか!?」

ラーメンを半分たいらげたところで、京一はに色々と質問をしていた。

休みの日はなにをしてるかとか、秋にある修学旅行の話とか、その流れで家族の話になり、今に至る。




「あ、う、うん」
ちなみにはまだ、三分の一も食べられていない。

質問に答えて話しているせいもあるが、本当の理由は別にある。




「家族と離れ離れか・・・海外出張とかか?」

「ううん・・・もともと、いないの。一緒に住んでたおじいちゃんも、中学のときに死んじゃったから・・・」

「そっか。大変だな」

「そ、そうでもないよ。もう慣れたし・・・」

「なんかあったら、遠慮なく言えよ?最近物騒だしな。俺、いつでも泊まりにいくからさ!」




「あはは・・・」
どこまで本気かわからず、は笑ってごまかした。




「あれ?じゃあよー、いつも持ってきてる弁当って自分で作ってるのか?」

その言葉に、は目を丸くする。

「・・・・・・わたしがお弁当持ってきてるの、知ってるんだね蓬莱寺君。すごい」

クラスで、は目立たない地味な存在だ。

逆に京一は明るい性格が幸いして、そばに人が絶えない。
最近では常に龍麻たちとつるんでいる。

なのに良く見てるなあ、と感心する





「そうかあ?普通だろ。すごいのはちゃんだって」

「え、わ、わたし?」
まったく身に覚えの無いはきょとんとする。

「なんたってあの狂犬龍麻を懐かせちまうんだから」

「きょ、きょうけん・・・」
当たらずとも遠からずで、なんとも反応できない

「それより、どした?全然食ってねェけど?」
箸の止まったのラーメン鉢を覗き込む京一。

「あ、ウン。食べる、よ」
慌てて箸を動かす

だが思ったより麺が熱くて、口に入れた途端あひゃ!と声を上げた。






「なんだよ、ちゃんもしかして猫舌かよ?」

の様子に京一はけらけら笑った。































王華に入っていく二人を見届けた亜里沙と舞子は、そのすぐ近くの喫茶店にいた。




「ていうか普通、女の子をデートでラーメン屋に誘う・・・?」
「デートでラーメン屋は駄目なの〜?」

呆れる亜里沙の言葉に、首を傾げる舞子。

「駄目ね。ドン引きだわ。終わったわね京一」
「デートでラーメン屋はドン引きなの〜?」
「あったりまえじゃない。ファーストフード店のほうがまだマシよ。それでも駄目だけど。そもそもこのクソ暑いのに昼間っから・・・ラブホに誘うほうがまだ健全よ」




「その発言が不健全だよ」

呆れたようなその声は、龍麻だった。

「あら、やっと来たのね龍麻」
「いらっしゃ〜い、ひーちゃん」

いらっしゃいじゃねェよ・・・と呟きながら席に着く龍麻。

タイミングよく店員がやってきて、ご注文は?とたずねる。

「・・・あー、クリームソーダ」

かしこまりました、と言って去っていく店員。

「クリームソーダって・・・アンタ」
目の前に座った龍麻を半眼で見る亜里沙。

「んだよその目は。いいだろ別に。男はクリームソーダ頼んじゃいけねェのかよ?」
ギロリ、と睨み返す龍麻。

「あは、おそろいだね〜、ひーちゃん」
舞子の前には飲みかけのクリームソーダ。

おう、と答える龍麻。

ちなみに亜里沙はアイスコーヒー。

亜里沙はそれを一口飲んでから言った。
「・・・クリームソーダへの冒涜よ」

「どういう意味だテメエコラ!?」

「強面だけどでも甘いモノが大好きなんですボク〜とか可愛い子ぶっても無理だから。焼け石に水だから」
ヤクザ顔負けの龍麻の迫力をものともせずに亜里沙は言った。

「俺は飲みたいモンを飲むんだよ!いいだろ暑いんだから!」

「こっちの方が暑っ苦しいのよ!全身黒って夏の配色じゃないでしょ!髪の肌も黒いんだからせめて服ぐらいは白にしなさいよ!」

龍麻は相変わらず、シャツもジーンズも黒一色の服装だった。

「うっせえ!んだよ、来た途端飲み物から服まで駄目出ししやがって。ピーコかお前は!」





「・・・ね〜、ひーちゃんそのシャツ表裏逆じゃない〜?」

じい、と龍麻を見ていた舞子は品質表示のタグをつまんで見せた。






「・・・・・・・・」

龍麻はソレを見て一旦動きを止め、そしておもむろに脱いで、着直す。









「だいたいお前らがいきなり呼び出すから・・・!て、おいテメ藤咲!ナニ打ってんだどこにメール打ってんだ!?オイ!」









亜里沙はこみ上げる笑いを必死でこらえつつ、恐るべきスピードで龍麻の失態を仲間たちへと送信していた。





















三人がそんなやり取りをしている頃、食べ終えた京一とは王華を出ていた。








「さ〜て、ハラもふくれたし・・・どーする?どっか行きたいとことかあるか?ちゃん」
うん、と伸びをする京一。

「・・・えと」

特に当てもなく街をぶらついていたので、とっさに行きたいところが出ない




















「京一君じゃないか?」




その時、声が掛かった。







涼やかな声だ。


















呼ばれた京一が振り向くと、そこには和服姿の青年がいた。













【続】









 +  + 

若旦那登場です。
(06/08/05)