風呂敷包みを持ったその青年は和服に身を包んでいた。

ジリジリと焦げるような陽射しの下にあっても、秀麗な顔に汗ひとつ掻いていない。




青年の姿に軽く面食らう




彼のいるそこだけ、時代が遡ったかのようだったからだ。






「おう、如月じゃねーか」
青年の名を口にする京一。

「やあ、やはり君か。ちょうど良かった、頼みたいことが・・・」
如月はそこまで言って、ようやくを見た。

京一の影になっていたは、如月からは見えなかったのだ。

目が合ったは、ぺこ、と頭を下げる。

如月はそれに目礼で返し、京一を見た。
「お邪魔、・・・だったかな?」

「・・ん?ああ、まーな。そーだよ、どっからどー見てもデート中だろ。気遣えよ」
今気づいたかのように言う京一。

「ちょうど君で死角になって見えなかったんだよ。悪かったね」

「ま、いーけどよ。それよりなんかあったか?」

「少々厄介なものを預かってね・・・」
そう言って如月はちらりと風呂敷包みを見た。






も、つられるようにその包みに目をやった。





「そいつがどうしたんだ?」
指差す京一。

「いや、いいさ。どっちにしろ一度帰って調べ直さないとならないし・・・」

「ふーん?龍麻あたりに電話すりゃ来るんじゃねェか。俺と違ってデートする彼女もいねェしな」

そうするよ、と肩をすくめる如月。




「んじゃ行くか、ちゃん・・・・・・ちゃん?」

返事の無いに、もう一度声を掛ける京一。






だがは、如月の持つ風呂敷包みを瞬きもせず見つめている。


「オーイ、ちゃ〜ん?」
京一が目の前でひらひらと手を振る。




「ッうえ!?な、な、なに?」

我に返り、途端に挙動不審になる

「どーしたよ?ちゃん」
顔を覗き込む京一。

「えッ?あ、うん」

「うんじゃくて・・・大丈夫か?」

「う、うん。なんでも、ない!」
ブンブンと首を振る

「・・・・」
あからさまに様子のおかしいを訝しげに見やる如月。




その視線に気づいたは顔を上げたが、すぐに俯く。

「オイ如月、あんまじろじろ見るなよ。ちゃんはな、小動物のような女の子なんだよ。ノミの心臓を持つ女子高生なんだよ。シッケイだぞ」

「君の発言のほうが失敬だろ・・・。まったく、こんな彼氏じゃあ苦労するだろう?君も」

如月の言葉に、は俯いたままブンブンと首を振る。

「・・・・。それじゃ、僕はこれで」
そう言ってその場を後にする如月。

じゃーな、と返す京一。




「・・・・」

如月の後姿が小さくなって、ようやくは顔を上げた。




ちゃん・・・もしかして具合悪いでものか?」

「え?う、ううん、へいき・・あの、蓬莱寺君?」

「ん?」

「いまのひとって、その・・・」
その先をなんと言っていいかわからず、そこで口篭る

「んだよ、ちゃんもアイツみたいなタイプにメロっときちゃうのか!?」
それをそっちの方向に勘違いする京一。

「めろっと・・・?いや、あの、どういうひとなのかなって・・・」

「あ〜、和服だったからわかんなかったか?アイツ王蘭の如月だよ。女子の間じゃ結構有名だろ?」

「そ、そうなの?わたし、知らない・・・」

「そっか。ま、そこら辺疎いのはちゃんの魅力だ。気にするな。アイツさ、北区で骨董品店やってんだよ」




「・・・・そ、そう。でもどうして・・・」

「うん?」

「あ、な、なんでもない」

どうして骨董品屋さんと知り合いなの?と思わず口に出しかけただったが、龍麻の名が出たということはおそらく、そういうつながりなのだろう。







あんな得体のしれないものを平然と持つということは、おそらく彼も。





(でも、そういえば)

「雨の匂いがした、あの人・・・」

如月が去っていった方を見ながら、ポツリと呟く






そんなを京一は眺め、口を開く。
「なあ、ちゃんってさ・・・」




だがその先を携帯の着信音が邪魔した。




「ンだよ誰だよ・・・もしもし?」

着信相手を確かめもせず電話に出る京一。



























『・・・俺だよ』









ザラリと錆びたその声は、まぎれもなく。







「たっ、たたた、龍麻!?」

予想だにしない相手に、京一は大いに動揺した。






『・・・お前、今どこにいるんだ?』

「エ、ど、ど、どこっつーかなんつーか・・・!」
せわしなく周りを見渡す京一。

『んだァ?言えねェようなとこにいんのか』
さらに低くなる龍麻の声。

「いやいやいや、そーじゃねえけど。なんだよ?なんか用か?」

『・・・ちょっとな。で、お前はどこにいんだ?』

ちらり、とを見る京一。
話す相手がわからないは、その視線を受けてもきょとんとするだけ。

『オイ、京一?』

「ど、どこだっていーだろ!用はなんだよ!?」

『ナニ焦ってんだよテメーは・・・』

「あ、焦ってねェよ!」




『・・・・まあいい。じゃあな』

そして、電話は切れた。




「お、おい!?・・なんだよ龍麻のヤツ!つかタイミング良すぎだぜ、心臓に悪ィ」

ディスプレイを見つめたまま汗をぬぐう京一。




「緋勇君だったの・・・?」

そう言って首を傾げるを、京一はまたちらりと見る。




「・・・・やっぱマズいかな」
そしてぼそっと呟く。





「え?」

「あー、いや!かまわねェ!そもそもなにも言わねェ龍麻が悪い!」

「あの、蓬莱寺君・・・なにか用事があるんなら、わたし」
様子のおかしい京一に戸惑う

「いいっていいって!じゃ、ゲーセンでも行くか!な?」

「え、あ、う」




京一に背中を押され、返事をする前には繁華街へと連れていかれた。














【続】





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ゲーセンにGO!
(06/08/09)