「妙だな」

通話の切れた携帯の見つめ、龍麻は眉をひそめた。
その表情はとてつもなく凶悪だ。




「なんで何も聞かないのよ、龍麻?」
不服そうに唇を尖らせる亜里沙。

まどろっこしいから京一にカマかけてみなさいよ、と言ったのは亜里沙で、渋々龍麻は京一に電話を掛けたのだ。

この暑い中で尾行するのが嫌になったに違いないと龍麻は思っている。




つまり、龍麻たちはまだ喫茶店にいるのだ。

「大体、こっちから聞かなくても、本当にデートだってんなら自慢してきそうなもんだろ」

「・・・たしかにね」

「絶対なんか隠してやがる、あのサル」

「すご〜い、ひーちゃん。京一君のことならなんでもお見通しなんだ〜」
と、舞子。

「そんなんじゃねェよ。・・・と、誰だ?」
手の中でバイブする携帯に、龍麻は目をやる。

ディスプレイに光る文字は<如月翡翠>

「もしもし?」

『やあ、龍麻。少しいいか?』

「ああ、どーした?」

『今、家かい?』

「いや、喫茶店にいる」

『・・・もしかして君もデートか』

「そんなんじゃねェよ。藤咲と高見沢に呼び出されたんだよ」

名前を出された二人が、龍麻を見る。

龍麻は携帯を少し離して如月からだと伝えた。




『・・・呼び出し?なにかあったのか?』
若干声のトーンを落とす如月。

「全ッ然たいしたことじゃねェから気にするな。で?」
続きを促す龍麻。

『実は少し厄介な骨董品を預かってね。手を貸してもらえないかな?』

「ああ、いいぜ。京一なんぞを相手にするよりよっぽど有意義だ」

『京一君か。彼は彼なりに有意義な時間を過ごしているみたいだよ』

「なんだよ・・まさか京一に会ったのか?」

『ああ、店に戻る途中。彼女と一緒だったよ』




「・・・・・女と一緒だったのか?」
目を見張る龍麻。

『ああ?』

「ちょっと如月!それどんな子!?」
驚くべき速さで龍麻から携帯をひったくる亜里沙。

『ふ、藤咲さんか?』

「舞子もいま〜す!」
声を上げる舞子。

『どんな、といわれてもね・・・』
携帯からは、戸惑う如月の声。

「可愛い系とか美人系とか芸能人だと誰かに似てるとかあるでしょ!?」

『いや、ちょっと良く分からないが・・・普通の』

そこで如月は言葉を切った。

どこかおどおどした、挙動不審なを思い出す。




『・・・まあ、普通の女の子だったよ。若干小動物的だが』

「なによソレよくわかんないわね。・・・で、京一たちはどこに行ったの?」

『知らないよそんなことは・・・』

「オイ、いい加減返せよ藤咲」
と、龍麻が口を挟む。

だが亜里沙は、ケチケチするんじゃないわよ!と言わんばかりの目で制する。

「じゃー、名前は?学校は?」

『そんな根掘り葉掘り聞いてないよ。たまたま偶然会っただけなんだから・・・あ、でも』

「でも、なによ?」

『確か京一君、彼女のことを「ちゃん」って呼んでいたな』




、ちゃん?」

「!」
亜里沙の声に龍麻はぴくりと反応する。



「ひーちゃんの知ってる女の子〜?」
その龍麻の顔を見て、舞子が問う。




「・・・・・・」

龍麻は眉間に皺を寄せ、よりいっそう凶悪な顔つきになった。










































その頃は。




まるでその龍麻の顔を見たかのように顔色を青くしていた。





ゲームセンターと地下駐車場をつなぐ通路にある自販機の前。

ジュースの入った紙コップを二つ持ったは、素行の悪そうな男たち数人に囲まれている。






「アンタさあ、蓬莱寺と一緒にいたよな?ちょっとツラ貸せよ」

「俺たち、アイツには随分借りがあってさ〜?」






借りという名の恨みのもと、を囲む輪をじりじり狭める不良たち。










「・・・・・・・・」

はすっかり忘れていた。





蓬莱寺京一という青年は、学内外問わず悪名高い問題児だということを。














【続】





 +  + 

ヒロインピンチ?
(06/08/09)