5
暇つぶしに街に出たは、京一と出会う。
強引にデートに誘われて一緒にラーメンを食べ、ゲームセンターにやってきた。
脳みそを揺さぶられるような音楽の中、夏休みのためか人も多く、ぶつからぬようフラフラ歩く。
「オイオイ、だいじょうぶか?ちゃん」
前を歩いていた京一は振り返る。
「う、う、うん」
コクコク頷く。
「なんか危なっかしいな・・・ほら掴んどけ?」
京一はの手を取り、自分の二の腕にもっていく。
「・・・」
は肘の辺りまでまくった京一のサマーセーターをきゅっと掴んだ。
「おし、んじゃどれから・・・お、あのクレーンゲーム新作みたいだな」
腕が鳴るぜ〜、と言いながら近寄る京一。
それについていくは、大股の京一に早さを合わせて小走りになる。
「ちゃん、なにがほしい?」
コインを入れながらたずねる京一。
「え?」
「ぬいぐるみ、好きなのとってやるよ」
「ほ、ほんと?・・・、えと」
はケースを覗き込んだ。
ふと目に付いたのは、黄色くて真ん丸い・・・
「ぴよこだ」
ヒヨコをデフォルメした<ぴよこ>がぬいぐるみの山のてっぺんにいた。
「あの黄色いのか?よし」
レバーとボタンを慣れた手つきで操作する京一。
軽快な音楽とともに、クレーンがぴよこの頭をむんずと掴む。
引き上げられたぴよこは、あっという間に取り出し口へと落ちた。
「ほらよ」
ぴよこを差し出す京一。
「い、いいの・・・?」
「おう、遠慮するな!」
「あ、ありがとう、蓬莱寺君・・・」
は手を差し出す。
が、京一はそれをひょいとかわし、言った。
「・・・・蓬莱寺君、じゃなくて京一、な?」
「・・・・・」
手を差し出した格好のまま動きを止める。
「京一、な?」
もう一度言う京一。
「・・・・・ありがとう。・・・きょ、きょ、京一、君?」
男の子を名前で呼ぶなんて初めてで、目を白黒させつつも素直に答える。
「・・・ん〜、まあいいか」
京一はようやくぴよこをに渡した。
ぴよこは手触りが良く、柔らかだった。
フニ、と指で押すとまんまるの顔が歪む。
「あは」
思わず笑う。
「・・・・・」
その表情に、京一もほっとしたように笑った。
ポケットから出した手を伸ばし、の頭をくしゃりと撫でた。
「?」
その手の意味がわからず、きょとんと京一を見上げる。
「ッ」
その視線を受けた京一は、熱いモノにでも触れたかのようにパッと手を離す。
「と、・・あ、ああ!あのアーケードも新作じゃねーか!」
そして、その場から逃げるように歩き出す。
は、ぴよこを胸に抱いて後をついていく。
「・・・、ん?」
だがふと視線を感じて振り返った。
しかしゲームに興じる若者たちの中にを見る者はいない。
気のせいか、と思いは京一の元へ足を進めた。
(・・・・・・)
だが、その後を追う人影がひとつ。
【続】
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後を追うのは?
(06/08/19)
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