佇まいは古いが、不思議と現代の街並みに溶け合っている。 店の入口には休業中の札が掛けられ、木戸が閉じられていた。 客人とはもちろん龍麻、亜里沙、舞子の三人だ。 「おどおどびくびくしてたってんなら間違いなくだろ」 「どういう子よ、それ・・・」 「そーゆーヤツだよ。おおかたその包みを見てビビったんだろ」 「・・・確かに、彼女はコレを見ていたが」 「おかしなモン拾ってきやがって・・・」 「拾ってきたんじゃない!預かったんだよ!」 「・・・なんか、コレやだ〜」 「なによ、中身は何なのよ?舞子が怖がるなんて、ナニ拾ってきたのよ如月」 「拾ったんじゃないって言ってるだろう・・・。さる資産家が亡くなってね、奥方が始末に困った骨董品を業者に渡したんだが、これだけはどうしても引き取り手がなかったらしくて」 「・・・いわくつきってワケ?」 「そういうことになるね」 二人が会話をしている間、ずっと風呂敷包みを見ていた龍麻が、ようやく口を開く。 いつの間にかその瞳は、漆黒から黄金へ変わっていた。 「陰気がもれてるな」 「・・・・ああ。札で封じられていたようだが、効力が落ちている」 「・・・だったら専門家にでも頼んで封じ直してもらえよ。お前ならその手の知り合いがいるだろ?」 「そのつもりだったんだけどね。・・・実は、これを封じたのは僕の先祖なんだ」 如月は結び目に指を絡め、包みを解いた。 貼られた札も墨色になっている。 途端、部屋に充満する生臭い陰気。 如月の言葉に、龍麻は無言で腰を浮かせる。 陰気は目に見えるほど濃くなり、漆黒の霧となって如月を包む。 黒い霧をまとわりつかせた如月の手が、墨色の壺を撫でる。 龍麻の声に耳を貸さず、ゆっくりと目を閉じる如月。 あの炎天下でさえ掻かなかった汗がつう、と一筋頬を流れ落ちた。 龍麻の放つ正拳が、血の奔流をパッ!と霧散させた。 その飛沫に、きゃあ!と悲鳴を上げる亜里沙と舞子。 涼やかで清廉な《氣》は消え、今、如月を取り巻くのは血のような奔流と、どす黒い陰気。 「んだと・・?」 血の奔流が如月を包み、ぐるぐると渦巻き、やがて小さくなって・・・・・消えた。 「亜里沙ちゃん・・・・如月君、壺の中の子に身体を乗っ取られちゃった・・・」 「ハア!?乗っ取られたって・・・、ちょっと龍麻!追いかけないとやばいんじゃないの?」 しかし龍麻はその場に立ち尽くす。 龍麻は携帯を取り出し、もう一度京一に掛けた。 ヒトを食ったような京一の声に、龍麻はブチ、と青筋を立てた。 「やかましいわ!!はそこにいるのか!?」 『んな!?な、なん、なにいってんだひーちゃん?』 「如月からウラは取れてんだよ馬鹿野郎!!はテメエと一緒にいるんだろうが!」 『そ、そんな怒るなよ、男のやきもちはみっともねーぞ?』 「なに気色悪いこと言ってんだ!死ね!お前はもうそこで死ね!!」 『んだよ、落ち着けよ〜。硬派気取りのひーちゃんがやったら気にする女の子のことを、親友の俺がいろいろ調べてやってるんじゃねえかよ〜」 「お前はッ、・・・豆腐の角に頭ぶつけて、死ね!!」 なんだよ〜、あ、ヤベ負ける負けそう!と言いながらアーケードゲームに興ずる緊張感の無い京一の声に、龍麻は電話を切ってしまいたい衝動をどうにか抑える。 『は?ちょ、待てよ龍麻。話が全然見えねェよ』
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