ジュースの入った紙コップを二つ両の手で持つは、京一に恨みを持つ不良たちに囲まれていた。

ゲームセンターから地下駐車場に通じる通路は、人気が少ない。
しかも自販機のあるこの位置はゲームセンター側からはまったくの死角で、京一が助けに来てくれる望みは少ない。
たとえ誰かが通りかかっても助けてくれることもないだろう。
現に今カップルが横切ったが、こちらを見もせず足早に通り過ぎたから。



だからこそ彼らは、ここで、に声を掛けたのだ。






「さっさとこい!」
動かないに業を煮やした不良の一人が手を伸ばす。

「!」
だが、はさっと身をかわし、ちらりとゲームセンター側の出入り口を見て、それを塞ぐように立つ不良に向かってジュースをぶちまけた。

バシャ!!

「うわ!?」
「冷ェ!」
フイを衝かれた不良たちは、囲んでいた輪を崩す。

はその崩れた所から抜け出し、ゲームセンターに向かって走った。

だが。

ドン!と全身になにかがぶつかってきて、衝撃に一瞬眩暈がした。

「おっと!危ねェな!」
反動でのけぞるの腕を取る手は、力強い。

「!?」
見ればそれは、金髪の髪を逆立てた青年。

黒のレザーのジャケットとパンツで身を包んでいる。
胸元にはシルバーのアクセサリ。

担いだギターで音楽をやっている人間だということは分かるが、を見下ろす目はサングラス越しでも分かるほど鋭い。

強面は龍麻で随分慣れたはずが、はぎくりと身体を強張らせた。

なぜなら青年はギターとともに長い棒のようなものを携えていたからだ。
布で巻いているが、先端の尖ったふくらみが武器だと告げている。

「ンだ、テメエ!?」
不良たちが追いつき、とその青年を囲んだ。

青年は平然と周りを見渡し、声を上げた。

「やれやれ・・・」
その声が見た目よりずっと優しくて、は青年を見上げる。

「・・・俺様としたことがバンドの待ち合わせの時間を間違えるなんてダセェことしちまって、時間潰しにゲーセンに来てみりゃァ・・・・これだ」
サングラスを取る青年。





「蓬莱寺が女連れ、なんて。アツさで頭がやられたのかと思ったぜ」

その名に驚くを見て、青年は笑った。




「お前、もしかして神代の雨紋か・・・!?」

青年の顔を見た不良たちは、とはまったく違う表情で驚く。




「だったらなんだ。・・・やるか?」
鋭い眼光を向ける雨紋。

「チッ、お、おい。いくぞ!」
リーダー格らしき男の慌てた声で、不良たちはその場を逃げるように去っていく。

数の差があっても敵わないと判断したのだろう。




「あ、あの、ありがとうございました・・」
状況が良く分から無いまま礼を言う

「なあに、たいしたことじゃねェよ。アンタもなかなか勇ましかったぜ?」
雨紋はそう言ってジュースをかけるジェスチャーをする。




「あ、いやあ・・・まあ」
この人いつから見てたんだろう?と思いながらもごもごと言葉を濁す

「アイツと一緒だとこんなんばっかだぜ?悪いことは言わねェから、つきあうのはや、」

「なにやってんだこの茶コシ頭があああ!!」
突如、殺気のこもった突きが雨紋の脇から襲い掛かる。

それはむき出しの木刀を構えた京一だった。

「っぶねえな!何しやがるテメエ!」
紙一重でかわす雨紋。

「木刀でよかったと思え!ひーちゃんならばこの場合、間違いなく踵落としだ!あれは痛い!!」

「龍麻サンの足技を痛いで済ます事は尊敬に値するがな・・・。そもそもレディを一人にさせんじゃねーよ!」

「なにがレディーだよ、フェミニスト気取りが!」
鼻白む京一。

「フェミニストなの、俺様は」
そう言って、の肩に腕を回す雨紋。

「テメ、どさくさにまぎれてなにやってんだ!?離れろ!!」
木刀を振るう京一。

「っぶねえな!」
さっと避ける雨紋。

「ひーちゃんの命の下、テメエを抹殺する!」
京一は雨紋に木刀を突きつけた。

「なんで龍麻サンが俺の抹殺を命じるんだよ。男のヤキモチはみっともねェぜ、蓬莱寺センパイよ〜?」

「うっせえ!いいか?俺はなァ、不埒な輩からちゃんを護るように龍麻に言われたんだよ!今さっき!」

「なんだよそりゃ。・・・アンタ、龍麻サンのナニ?」
ようやく腕をどける雨紋。






「く、クラスメートですけど・・・・・・・・」

ナニと聞かれてもそう答えるしかないだった。





【続】





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(06/08/27)