絡んできた不良たちは雨紋のおかげで去り、ほっと一息つく。
遅れてやってきた京一を含めて、三人はまだ地下通路にいた。
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「たく、龍麻からの電話で慌てて探しに来てみりゃ、テメエが俺のちゃんをナンパしてやがるし・・・」
後からやってきた京一はそう言って雨紋を睨む。
「ナンパじゃねーよ、純粋な人助けだろ!」
睨み返す雨紋。
一触即発な雰囲気に、はハラハラしながら二人を見る。
その視線に気付いた雨紋は、
「大体、・・・アンタホントに蓬莱寺の彼女なのか?」
「ええ!?ち、違っ」
雨紋の問いにブルルンッとおもいっきり首を振る。
なんだよ照れるなよちゃん、と京一は言ったが、雨紋はミジンコ程も信じなかった。
「しっかし、なんで龍麻のヤツ、俺がちゃんと一緒だって知ってたんだ・・・?あ、そっか如月か」
「如月サンがなんだよ?」
ふと思い出して呟く京一の言葉に如月の名が出て、雨紋は反応した。
も、京一を見る。
(如月さんって、たしかさっき・・・)
「ここに来る前如月に会ったんだよ。で、如月がひーちゃんに、アレ?・・・なんか言ってたな、如月のことも」
思い出そうと頭をひねる京一。
「・・・、なにかあったの?」
尋ねる。
「ん?イヤ、ちゃんは気にすんな!なんでもねーから!」
気遣うようなを見て、その頭をわしわし撫でる京一。
「・・・まあいいや、時間も潰れたし。じゃ、俺様はコレで」
ふ、と息をついて雨紋はきびすを返す。
「あ、あの、ありがとうございました!」
は慌ててもう一度礼を言う。
雨紋はそれに無言で手を振るだけで、駐車場のほうへと地下通路を歩き去る。
角を曲がって姿を消したが、なぜかすぐにまた姿を現し、さらにこちらに向かって走ってきた。
「?」
その様子に首をひねる。
「なんだ?」
訝しげな声を出す京一。
次の瞬間、雨紋の背後、無機質なコンクリートの壁が真っ赤に染まった。
血のように紅い奔流が壁を伝い、突き当たりにぶつかって飛沫が上がる。
荒波のように。
うねる血の奔流はとってかえし、雨紋に襲い掛かる。
「な、なんだありゃあ!?」
声を上げる京一。
突然の事態に、わけが分からず呆然とする。
だが、地下道に満ちる生臭いにおいに口元を覆う。
陰気、だ。
よく見れば、奔流の中で溺れる人の姿がある。
先ほどに絡んできた不良たちだ。
苦痛に顔をゆがめているが、すぐに澱んだ深紅の流れに飲まれた。
「ちゃん、下がってな!」
持っていたぴよこをに押し付け、京一は木刀を構え直した。
血の奔流は雨紋に追いつくことなくやがてその威力を衰えたが、辺りの陰気はよりいっそう濃くなるばかりで。
「コレも預かっといてくれ!」
コンクリートの地面を滑る、雨紋のギターケース。
は、くるくる回りながら地面を滑るそれをしゃがんで止める。
ぴよこを抱え、ギターケースを持ち上げる。
顔を上げれば、雨紋は身を反転させ奔流に向き合っていた。
すでに布が解かれた槍を構えて。
並んで立つ京一。
「なんなんだ、ありゃあ?」
「俺に聞くな」
「水・・・じゃないよな」
「あんな色の水があるかよ。しかも重力完全に無視じゃねェか」
排水溝に流れて消えてくれるんじゃないかというほのかな期待はすぐ消えた。
血の奔流はぐるぐると、まるで竜巻のように渦巻きながらその姿を保っているのだ。
臨戦態勢をとったものの、二人はあまりの気味悪さに手を出せずにいる。
ゲームセンター側の入口まで後退したは、ただその状況を見守る。
なにかを窺うように渦巻き続ける血の奔流。
時々中から飛び出す、だらりとした手や足。
「・・・・!!」
ヒトを飲み込んだままだとあらためて気づいて、は総毛立った。
「くそっ!!」
京一はその場で木刀を振るう。
木刀より放たれた《氣》は、刃となって不気味な渦巻を真っ二つに切り裂いた。
中に捕らえられていた者の一人が、空に投げ出され地面に落ちた。
「よっしゃ、いくぜ!!」
「オイ!むやみに突っ込むんじゃ・・・!」
雨紋の制止を振り切り、京一は二つに分かれた渦巻に突っ込む。
「中にまだ人がいるんだ、悠長になんかやってらんねェだろ!!」
だが、渦巻に近づいた次の瞬間。
二つに分かれた渦巻は、両脇から挟み込むようにあっけなく京一を飲み込んだ。
「京一君!!」
の叫びをあざ笑うかのように、京一を飲み込んだ渦巻きはひとつに戻り、さらにはグンと大きく膨らむ。
そして、ぐらぐらと左右に揺れながらこちらに近づいてくる。
「・・・あの馬鹿!!」
雨紋はギリ、と奥歯を鳴らした
その時、は気づかなかった。
渦巻きから吐き出された不良の一人が、真っ赤に染まった身体を引きずりながらゆっくりと自分に近づいてくるのを。
【続】
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(06/09/16)
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