(君がいなかったら僕の世界は成り立たない)
耳について離れない。
瞼の裏から消えない。
『あのさ、さん』
終業を告げるチャイムが鳴った。
放課後に浮き足立つ生徒達は、次々に教室を去る。
残った生徒達の他愛無い会話を聞き流しながら、は窓際の席でぼんやりと外を眺めていた。
『さんは、オレのこと』
暮れていく空を眺めていたが、頭の中は。
『ツナの、幼馴染の友達としか・・・見てない?』
「君たち、いつまで群れてるの?」
その声に、教室はシンと静まり返った。
いつの間にか机の木目を見つめていたは顔を上げ、声の主へと顔を向けた。
教室に入ってきたのは、不良も泣いて逃げる風紀委員長、雲雀恭弥。
見るまでもなくわかっていたが。
残っていた生徒達は、そそくさと教室を後にする。
雲雀が近づいてきたが、はもう一度視線を窓の外へ。
「なにしてるの」
の座る席から少し距離を開けて、雲雀は立ち止まる。
「群れてないんだから絡んでこないでよ」
ウンザリと返す。
「なにしてるの、って聞いてるんだけど」
「外見てるだけ」
「何も見てないくせに」
「・・・・」
(クソ、こいつ変なトコで聡い・・・!)
顔を背けてこっそり舌打ちする。
「図星だってガラスに映ってるよ」
「・・・年上のさ」
は唐突に切り出した。
主導権を握られているようで癪だったので。
「なに?」
「年上の女って好きになったことある?」
ガラス越しに見た雲雀は、ほんの少し首を傾げて。
「・・・ああ、山本武のこと」
「なっ」
ガタ!とイスを鳴らして立ち上がる。
「図星か」
大して面白くもなさそうに雲雀は言った。
「・・・、なんでわかったの」
「山本武のこと?それとも、気付いてない振りしてたこと?」
「・・・なんでそんな突っかかってくるわけ?」
「いちいち質問で返してくるの、ウザいよ」
「そもそもそっちが話しかけてきたんじゃないの」
はイスを引き、座りなおした。
「そういうスタンスなの?」
雲雀はその前の席のイスを引き、背もたれに肘を乗せて座る。
「なにが」
「鈍いフリ。あと、弱いフリ」
指を折って、雲雀は数える。
「・・・・・・・・」
は、その様子を無言で見やる。
隙あらば事を構えようとする戦闘マニアにうんざりしているのは、事実。
昨日の夕方山本に告白されたのも、事実。
『オレ、さんの事が好きなんだ』
それからずっと。
掛けられた言葉が、表情が、頭から離れない。
『わざわざ言わなくても、知ってると思うんだけどさ』
うん、知ってたよ。
でも。
「・・・・めんどくさいんだよね、そういうの」
そう言って背を丸め、組んだ手に額を乗せる。
「それと、興味ないフリ」
間髪入れず、雲雀は言う。
「・・・・・ああ、ハイハイ。負けだよあたしの!」
再び、勢いよく立ち上がる。
鞄を手に取り歩き出す。
「誰に負けたの?」
雲雀は、座ったままで問う。
「少なくとも、アンタじゃないよ」
ドアの前で振り返りそう言って、は教室を後にした。
「まあ、今回は見逃してあげるよ」
雲雀は呟き、窓の外を見る。
すっかり暗くなった校庭。
隅に建つクラブハウスから、野球部らしき一団が出てきた。
そこから一人が離れて、校門へと駆けていく。
シルエットでも十分誰だかわかる。
他の連中とは明らかに動きが違うから。
教室を出たと鉢合わせるのは、時間の問題だろう。
「気もそぞろなヤツらを咬み殺したって、つまらないからね」
し 思考回路はいつだって優先されている
愛 し て
あ 遊びなんて言葉知らないから
い 一度だけでいいから抱きしめさせて
し 思考回路はいつだって優先されている
て 手加減できないよ、そんなの無理に決まってる
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