並盛中学三年A組。

一限目の授業が終わり、賑やかな教室に早足でやってきた女子生徒。

名を

少し前にこのクラスに編入してきた彼女は、右手に鞄、そして左手にかぐわしい香りを放つ花束を持っていた。

ドアを開けた音に、近くでたむろしていた男子生徒数人が振り返る。
百合の匂いに、さらに数人がを見る。




教壇に立ったところで、クラスのほぼ全員がに注目した。




「ものすごいモノを見た!」

頬を紅潮させ、目をキラキラさせながら花束を突き出す




シンとする教室。






「パーカーでジーパンな地味男が花嫁な美人に手を引かれて逃げてたああああ!」







興奮したの声は教室どころか廊下にまで響く。






























 02 「略奪愛…それもいいかもね」






















「・・・ていうドラマで夜更かしして遅刻?」

冷静な突っ込みをする男子生徒の顔面に、黒板消しが命中する。




「手伝った礼と証拠にとブーケを貰った次第であります」
チョークの粉で汚れた手を払いつつ、これでもかとブーケを前に突き出す




次の瞬間、女子生徒たちが色めきたつ。
男子生徒はというと、ほとんどはその勢いに押されるか、半信半疑な様子だ。




「幸せおすそ分け〜」

はブーケから百合の花を抜き、投げる。

放物線を描く百合に、我も我もと手を差し出す女子生徒たち。

「いや〜、生かけおちだよ〜、ドラマティックだよ、初めて見たよ〜」

がそう言うと、どういう状況?二人の関係は?と矢継ぎ早に質問が繰り出される。

「ま、いわゆる略奪愛なんだけどね〜」

「ていうか、男が花嫁の手を引いて、じゃなくて花嫁が男の手を引いたんだ?」

「うんそう」

「花嫁さん年上〜?」

「同級生って言ってた」

「ドラマの撮影とかじゃねーのかよ・・・?」
男子生徒も質問の輪に混ざる。

「違うって。ドッキリでもないから。本人達がそういったもの」

ブーケを解体しながらは答える。




「ハイこれで最後〜」

最後の一本をぽいと投げれば、それを受け取ったのは。









「・・・・」

入り口に立つ、雲雀恭弥。

先ほどと違う意味でシンとなる教室。




雲雀は、手にした百合をまるではじめて見るもののように珍しそうに眺める。




集中する視線を気にも留めずに教室内を横切り、の隣の席に着いた。








「略奪愛…それもいいかもね」




そして持っていた百合をの席に置く。








意味深な言葉に、女子生徒たちはまた色めき立つ。

















地の果てまでも逃げてやる、というの呟きはものの見事にかき消された。



















【 終 】








ブラウザバックプリーズ

幼い頃、近所のお姉さんが白無垢姿で自宅から出て行くところを目撃しました。
子供心にときめきました。
(06/11/02)