放課後。
他の生徒に混じって下校していると声が掛かった。



「ツナ〜」

呼ばれて振り向けば、女子生徒が手を振ってこっちに近づいてくる。

「ああ、姉ちゃん」

と言っても、血の繋がった姉じゃない。

彼女の名前は
学年はひとつ上。

昔うちの隣に住んでいて、今またうちの隣に住んでいる。

幼馴染・・・ってのになるのかな。
あの頃のクセでつい、今でも姉ちゃんって呼んじゃうんだよね。









































19 「本気で逃げられるとでも思ってたの?」






































「今帰り?ツナ」
「うん」
「ひとりなの?」
「うん」

二人、並んで歩く。

「あの子達は?ホラ・・・えっと、あのわんこっぽい子」

「わ、わんこ?」

「ツナのこと十代目って呼んでる、」

「獄寺君のこと・・・?早退じゃないかなあ」




ていうかわんこって・・・。




「じゃあさあ、あの髪の短い背の高い・・・」

「山本なら部活だよ」

「ああ、野球部って言ってたっけ。ツナは部活しないの?」

「しないよ。めんどいし。どうせなにやってもダメダメだし」

「ダメとかいわないの」

「いたっ」
うう、はたかれた・・・。

「ま、めんどいのはわかるけどね〜、部活とか委員会とかさあ」

「・・・姉ちゃんこそ、一緒に帰るヤツいないのかよ」

転校してきてもう一週間も経つのに。
もしかしてあの噂、ホントかな?

「なによ、自分が友達できたからって偉そうに。ツナのくせに〜」

「ちょっ、やめろよ!」

なんで頭撫でてくるんだよ、恥ずかしいなー!

逃げるようにタッと駆け出した瞬間、目の前をなにかがものすごいスピードで横切り、コンクリートの壁に深々と突き刺さる。




「・・・・・え?」

よく見るとそれは、ボールペンだった。

ぼ、ボールペンが壁に突き刺さってるよ!?




「ね、姉ちゃん、コレ・・・」
オレはそのボールペンを指差して姉ちゃんを見たんだけど、隣にいた姉ちゃんはボールペンでもオレでもない、全然違う方向を見ていた。





その視線の先には、男子生徒が一人。

「放課後は委員会だって言っただろ」
風紀委員の腕章がついた上着を羽織ったその人物は間違いなく。



「ひ、ヒバリさん!?」
並中生なら知らぬ者はいない、風紀委員会の長・雲雀恭弥。

「ボールペンは投げるものじゃなくて書くものだよ」
平然とそう返す姉ちゃん。

あのヒバリさんを前にしてもまったく動じないなんて・・・。

「僕の物をどうしようと僕の勝手さ。だから君もさっさと学校に戻りなよ」

なんだか、その言い方だとまるで・・・




「姉ちゃん、やっぱりヒバリさんと付き合ってんの・・・?」

「そのギャグ0点!」

「いた!?」

チョップきた!
てか、ギャグじゃないし!みんな噂してるし!






・・・・・・・・・ヒバリさんが、転校生と付き合ってるって。




転校生なんて、オレの知る限り姉ちゃんしかいない。
姉ちゃんに友達ができないのも、周りがヒバリさんを恐れているせいだってオレは思ったんだけど・・・違うのかな?

「つーかやっぱりってなに?コイツはあたしの事が好きかもしれんが、あたしはコイツよりホットケーキの方が好きだ!あ、なんかホットケーキ食べたい。帰りにスーパー寄ってホットケーキの素買ってツナんちで作ろうそうしよう」
ぱあ、と表情を輝かせて、オレの腕を取る姉ちゃん。

よ、よくしゃべるなあ・・・息つぎ無しで。

ホットケーキかあ、そういえばオレも小腹が・・・じゃなくて!

「え、うち?なんでうち!?」

「チビッコどもが来るじゃん。喜ぶぞ。子どもはホットケーキ好きだから」
そう言った姉ちゃんはやけに嬉しそうだった。




「・・・・・・」

逆にヒバリさんはほっとらかしにされて不機嫌になってるみたいなんだけど・・・。

そもそもなんでヒバリさんがここに?
委員会とか言ってたけど。

「じゃ、そういうことだからバイバイ」
姉ちゃんは刺さっていたボールペンを引き抜いてヒバリさんに投げ返した。

それがかなりのスピードだと分かったのは、雲雀さんがトンファーではじき返した音がすごかったからだ。




「本気で逃げられるとでも思ってたの?」

そう言って、ヒバリさんはもう片方のトンファーも出した。
うわわ、おもいっきり戦闘態勢だよ!

「逃げるも何も下校してるだけだから。それとも何、食いたいんか、ホットケーキ食いたいんか?」
さっきまでの嬉しそうな表情が露骨に嫌そうなものに変わる姉ちゃん。

学年の違うオレには、二人の間に何があったのかよく分からない。
でも、付き合ってるって噂のわりになんだか殺伐とした雰囲気・・・。




「君は風紀委員だろ。委員会に出なよ」

姉ちゃんが風紀委員!?って俺は驚いたんだけど。

「だから、委員になんかなってないから」




・・・ど、どっち?




「なったんだよ、僕が決めた」

「あたしのことはあたしが決めるから。転校生だからって委員会とか参加させてすぐに学校に馴染ませてやろうという気遣いに見せかけた押し付けはいらないから。そもそも委員会なんてめんどいからやらないから。なぜならめんどいから」

めんどい二回言ったよ姉ちゃん・・・。

「しつこいね、君」

「お前がな」

「力づくでも連れていくよ」
ひゅんッとトンファーを鳴らすヒバリさん。

怒ってる、メチャクチャ怒ってるよこの人・・・・!

オレは怖くなって、その場を一歩後ずさる。
あああ、でもオレ姉ちゃんに腕掴まれてるんだった!
に、にげられない・・・!

「行かないから。帰るから。帰ってホットケーキ作るから。お前もお帰り。そしてママにボソボソのチャーハンでも作ってもらえば?」




なんでチャーハン!?
姉ちゃんってなんであんなに対等に話できるんだろ、あのヒバリさんと。




でも姉ちゃんがホットケーキだのチャーハンだの言うからオレほんと腹減ってきたんだけど・・・。





「やっぱ、おもしれー女だな」

その時、頭上から声が降ってきた。

「リボーン!?」
塀の上に、リボーンはいた。

「というわけで、ファミリーのピンチだ。いけツナ」
リボーンの銃口が俺に向いた。

えええ、オレ!?なんで!?

だいたい姉ちゃんはファミリーじゃないって言ってんのに・・・・!





でも、発砲音が響いた次の瞬間・・・




「死ぬ気で姉ちゃんにホットケーキを作ってもらーう!!!」












死ぬ気の炎を額に灯し、オレはいつもの姿になった。
















「ヒトのケンカに口出すな!!」

でも次の瞬間、みぞおちに姉ちゃんの肘鉄が。










「げふ!?」
な、なんでこーなるの・・・・?








そこで、オレの意識は途絶えた。











































「あれ!?」

甘い匂いに、オレは目を覚ました。




「あら、起きたのツナ」

「び、ビアンキ・・・?」

周りを見渡すと、・・・ここ、オレの部屋だ。

甘い匂いはビアンキが食べてるホットケーキからだ。

ホットケーキ・・・?
ああ!

「ね、姉ちゃんは!?」

なら出かけたわよ。ツナの分のホットケーキを作って」
食べかけのホットケーキを見せるビアンキ。

「・・・なんでオレのをビアンキが食べてんの!?」

「大丈夫よ、ツナの分は私が作ってあげるから」

「い、いらないよ!!」













あの後、いったいどうなったんだろ?

そもそもあの二人ってどういう関係なんだろ。






知りたいような知りたくないような・・・。
















【 終 】


















いろんなキャラを書きたかったんです。
ツナが、京子ちゃんと話すまで女子と話したことが無かったって設定は忘れてください・・(汗)
(06/09/05)