煙草の匂いに目をやると、公園のブランコに座る少年が一人。

並中のブレザー姿で、咥え煙草。

・・・まったくこの不良は。








































01  煙草のにおい











































「コラ、そこの不良」

「あァ?」

一服やってたオレが声に振り返ると、Tシャツにジーンズ姿の女がいた。

「よっ」
しかも女は馴れ馴れしく手を振って近づいてくる。

誰だ?コイツ・・・・、あ!!

「じゅ、十代目のお姉様!?」

制服姿しか見たことなかったから一瞬わからなかった。
正確には十代目の幼馴染だが、十代目にとって姉のような存在らしい。
ならば当然オレもそれ相応の態度で接しなくてはならない。

「お、おはようございます!さん!」
あわててブランコから立ち上がる。

「んー、もう昼だけどね〜」

「あ、そ、そースね」
お、オレとしたことが・・・・。

「サボリかい、不良よ?」

「え?ええまあ・・・」
な、なんだ、説教する気か・・・?

「そか。じゃあ付き合ってよ、買い物」

「買い物・・・スか?」

「うん」




「・・・・・・」
なんだ、拍子抜けだな。


しかし・・・私服のさんは、なんつーか妙に大人っぽい。
制服姿の時とは、まるで別人のようだ。

(コレで一学年しか離れてないなんて・・・)

か、買い物か・・・一緒にってなんかデートみたいだな・・・。

「よ、喜んでお供させていただきます!」

「そか、んじゃいくべ〜」





・・・さん、時々言葉遣いが年食ってるっていうかなんつーか・・・まあいいか。



























「・・・・たしかに、これも買い物だよな」

カートを押しながら一人ごちるオレ。
さんが買い物に誘ったのは、近所のスーパーマーケットというこのオチ。




いや、別にそんな、十代目のお姉様相手におかしなことを考えていたわけじゃ・・・ない。

・・・断じてない。ない!





「ママ〜、あのおにーちゃんヘン〜、あたまブンブンふってる〜〜」

無いったらねェんだよ!なんだテメージロジロ見んな!!指差すな!!




「コラ、ナニ幼稚園児にメンチ切ってんの!」

うぐ、手刀が!?





「よし、コレで材料はそろった。このままウチ来て一緒に昼ご飯食べる?」
カートの中に持っていた野菜を入れるさん。

「い、いいんスか・・・?」

「うん、一人増えるのも二人増えるのもおなじだし」

「じゃあお言葉に甘えて・・・・」

さんちで昼飯・・・・!
て、ナニ興奮してんだよオレは!











清算を済ませて、オレたちはスーパーから出た。
もちろん荷物はオレが持つ。




「あ、ちなみにウチの中は禁煙ね」

「は、はい!」

あ、しまった。
火ィつけたばかりの煙草咥えたままだ。

家はすぐそこ。
・・・両手は塞がってるし。

しょーがねえ、吐き捨てて足でもみ消そう・・・と思った次の瞬間。




さんの手が、俺の口から煙草を引き抜いた。

そしてそれを自分の口へ・・・て。

ええ!?




「ポイ捨ては駄目。捨てようとしたでしょ?」

いや、ていうかオレの吸ってたのなんか吸ったら・・・か、間接キスじゃ!?

「ゲホッ、キツいの吸ってんのね〜?」
むせるさん。

オレはあっけにとられて、煙草を吸うさんを眺めることしかできなかった。

あ、リップとか塗ってんのかな・・・ほんのりと唇が紅い。

「・・・隣で吸われると吸いたくなるんだよね〜」

「・・・・・・・・・」

さっき、煙草取られる瞬間、さんの指がオレの唇をかすった。

触れたソコが痺れて、煙草を吸うさんの姿に見とれて、俺はなにも喋れない。




「あ〜、でもやっぱ苦手だわ、煙草」
さんは、短くなった煙草を地面で消した。

なんか、しゃがむ動作とか色っぽいんスけど・・・。

オレ、これからさんちに行くんだよな。
十代目の隣家に。

さんが、一人で暮らす家に・・・って余計なことまで思い出した!





いいえ、十代目!十代目のお姉様相手にそんな!

オレは十代目の右腕になる男ですから!

そんな、不埒なことなんて、これっぽっちも!





「どした?入らないの?」

声に顔を上げると、家は目の前。
玄関のドアを開けてオレを見るさん。

「これっぽっちも考えてませんから!」

「え、なにが・・・?」

ヤベッ!

「い、いえ!こっちのハナシで!」

「なァに?へんなの」
ぷっと吹き出すさん。

「ほら、荷物かして」

「いえ!中までオレが運びます!」

「そ?じゃあ先に上がるから、ついてきて」

「はい、お邪魔します!」

先を行くさんの後をついていく。





が、その後ろ姿がまた心臓に悪い。

(せ、制服と違って身体のラインが丸わかりじゃねーかよ・・・!)

十代目・・・オレ、駄目かもしれません。




「こっちこっち」

台所へと誘われて、持っていた荷物をテーブルに置いた。

「え〜と、アレはどこに入れたかな・・・」
ビニール袋から買ってきた物を次々取り出すさん。

アレ、ってなんだろうと思いながらも俺はその姿を正視することができない。

だって冷蔵庫にモノ入れる時屈むから背中とか見えるんだぜ・・・・?





「あった、これだ。・・・獄寺くん」

「はい!?」

呼ばれて慌てて顔を上げると。






「煙草の代わり」

と言ってさんはオレの口にガムを押し込む。





「ご飯が出来るまでそれで我慢しててね」

笑うさんからは、オレの煙草のにおいがした。
















・・・・・・・十代目、オレ。

十代目のお姉様に手ェ出すようなことはしません。













でも。









惚れるぐらいは・・・いいスか?
















【 終 】


















実は続きます。
(06/09/07)