これが、嘘から出たまことってやつ?


















「身から出たサビ、じゃないの・・・・?」





うるさい、ツナ。








































 09  瞳だけは透き通っていて


















































「ツナー、あそぼ〜」

「うわ!?」

突然オレの部屋に入ってきたのは姉ちゃんだった。
といっても血の繋がった姉ちゃんじゃなくて、一学年上のお隣さん。

の、ノックぐらいしろよな〜・・・。

「な、なんだよ姉ちゃん急に!」

「今日は日曜だよ?だから遊ぼう」
と言って姉ちゃんはベッドに寝そべっていたオレから雑誌を取り上げた。

「あそぶって・・・やだよ。今日はリボーンもチビ達もいないし、ゴロゴロしたいんだよ・・・」

「なによお、せっかくの休みだってのにアンタ、デートの予定も無いわけ〜?情けない」

「ふなッ!?なにいってんだよ!」

で、デートって!

そ、そりゃオレだって・・・きょ、京子ちゃんと・・・

「だからあ、いずれ来る・・・かもしれない京子ちゃんとのデートの日のために、この姉様が予行練習してやろうってのよ?ありがたくつきあいなさいよ〜」

「・・・いいよそんなの」

余計なお世話だ。

大体姉ちゃんが私服になると途端に中学生に見えないんだよね。
事故で長い間意識不明だったとはいえ、実際は二十歳だからしょうがないんだけど。

こんな風に化粧までされたら、不釣合いで横に並んで歩けないよ・・・。




「あそ。じゃーいいわ。アンタはそこでゴロゴロゴロゴロしときなさい。あたし出かけてくる」

「ハイハイ、いってらっしゃい」

やれやれ。




「だそうよ、山本くん。じゃあ二人でいこっか?」

「・・・まあ、ツナも一人でゆっくりしたいときもあるよな」




「ええ!?」

その声にあわてて起き上がれば、ドアのそばに山本がいた。

「や、山本まで・・・いつの間に・・・?」

「下で姉さんと会ってさ。俺もツナを誘いに来たって言ったらじゃあ一緒に遊ぼうって」

「姉ちゃんなんで先にそれを言わないんだよ!?」

「なによお〜、言う前に断ったんじゃないの。それともなに?あたしの誘いは断るけど、山本くんの誘いなら受けるの?」

う、それは・・・。
言い返せない・・・。

「ま、とにかく!山本くんはもらっていくから、アンタは一人でだらだらしときなさい!」

そう言って姉ちゃんは山本の腕を掴んで引っ張ってった。

「じゃ、じゃあまた明日な?ツナ」

「・・・う。うん」












・・・ああ、山本が姉ちゃんに連れ去られた。

















* * * 



















「そーなの。ツナってば暇してるから遊びに行ったげてよ?・・・うん。じゃーね」

そんなわけで、優しいあたしは獄寺くんに電話をして、ツナのところへと誘導してあげた。




姉さん・・・オレでよかったんスか?ツナを誘いに来てたのに」

「んー?いいのいいの。ツナも昔はさあ、いっつも後ろにチョコチョコ引っ付いてきてたのに、今じゃこっちから誘ってもついて来やしない。まー、男の子だしねェ」

「はは、ホント、ツナの姉貴分なんすね」

笑う山本くんを見上げる。

年の割りに背ェ高いよな〜、山本くん。
こうして腕組むと見上げるのがしんどいや。

て、腕組んだままだった。

あー、今更解くのもアレだし・・・どうしよこれ。




「というか強引に連れ出しちゃったけど、山本くんこそよかったの?」

「オレも今日は暇なんで」

「デートする彼女は?」

ツナからは、結構女子に人気あるって聞いてるけど。

姉さんこそ。そーいやツナがヒバリと付き合ってるって・・・」

「無いから!ただのデマだからそれ!」

ツナか!アイツ今度くすぐり地獄!

「・・・そーなんスか」

「大体、アレが彼氏だったらツナや山本くんを誘えると思う?」

「ああ、そりゃそーだ」
ははは、と山本くんは笑った。

よかったよかった、誤解が解けて。

「よし、じゃあ今日は映画を見にゆくぞ!」

「おうっ」

うんうん、ノリがいいね〜。










そんなわけで、二人で電車に乗り込んだわけですが・・・コレ。




「・・・・・・・・」

「・・・・・・」

そういや、ツナを介しての顔見知りというだけで山本くんのこと全然知らないんだよね・・・。
そりゃ話のネタもすぐ尽きるわ。

そもそも学年が違うし、部活やってるから獄寺くんより会う事も少ない。




話題〜、なんか話題はないかな。





「・・・もしかして、気を使おうとしてません?」

「あは、ばれた?」

「何の話しようかな、とか」

「考えてた」

「オレ、沈黙とか平気なんで」

「そーお?」




あーあ、年下に気ィ使わせちゃったよ。

でもまあ、お言葉に甘えて。





「・・・・・」

「・・・・・」

電車の揺れに身を委ねる。




電車は乗客が少ない時間帯らしく、どこかのんびりとしている。

スピードすら、遅いように感じる。




ぼんやりと、流れていく風景を眺める。





ああ〜、平和だわ。




ふと隣を見れば。

山本くんは同じように窓の外を眺めていて。

視線に気づいてあたしを見た。




へらっと笑うと、笑い返してきた。




あはは。









そして。

ガタンゴトンと揺れる振動と音で、知らず知らずの内に・・・・。












* * * 











肩を叩くような感触に目をやると、姉さんがオレの肩に頭を預けて静かな寝息を立てていた




「・・・・・」




肩に掛かる重さと体温が、なんとなく心地よかった。

ふわりと香るのは・・・・なんだろう。




(・・・つーか、面白い人だよな)




まさか居眠りするほど無防備になるなんて。





(警戒されるよりは、いいか)




ツナの家の前で会ったときは、正直驚いた。

制服のときと雰囲気がまるで違っていたから。




部屋から出るとき組まれた腕は、今は姉さんを支えて、触れている。





(ちょっとドキッとするよな、アレは)

腕と腕が絡み、肌が触れる感触は未知のもの。









そんなことをぼんやりと考えている内に、アナウンスが入った。

映画館は次の駅にある。









電車は失速する。

駅はもうすぐそこ。





でも、姉さんが起きる気配はない。




起こすか。
でも気持ちよさそうに寝てるしなあ・・・・。

このまま電車に乗れば終着駅は海の近く。

(それもいいかもな)

少し季節外れだけど。

手を繋いで、海まで。





ブレーキ音で我に返れば、電車はプラットホームに入っていくところで。




「・・む?」
姉さんは目を覚ました。

ドアが開く音に、顔を上げる。




姉さん、着いたぜ?」

オレは寝ぼけ眼をこするその手を取って、電車を降りた。






















* * *













電車を降りて、駅を出て。

真っ直ぐ映画館に向かって。






ずーと手を繋いだままなんですけどね、コレね。うん。





なんで、いつのまに?





・・・・、別にいいんだけどね。






でもなんかね、そっちにばっか気が行っちゃってね。

手ェ繋いでるだけなんだけどね、うん。




さん、ナニ見たいんスか?」


「へ?あ、えーと・・・んと・・・、デスノ?」

「あ、いいスね。じゃ、それで」





席についてようやく手が離れて、なんだかほっとして。





でも映画が終わって、外に出た途端。

さん」

笑って手を差し出されたら繋ぐしかないじゃない・・・?




ま、いいんだけどね、手ぐらい。















* * *










さんと野球バカが!?」

「う、うん」

獄寺君が家にきた。

まったく・・・姉ちゃんったら余計な気を回すんだから。
まあ、雑誌も読み終わって暇だったんだけど。




「なんで止めなかったんですか、十代目!」

「ええ?だって・・・」

「あんな野球しか知らねェ野球バカにさんがエスコートできるわけないっスよ!!」

「エスコートって・・・・そんなデートじゃないんだから・・・」

「二人っきりならデートじゃないスか?」

「あ、そっか・・・・」

さんがあんなヤツと付き合うようになったらどーすんですか!?」

「どうするって、別に・・・・」

獄寺君、さっきはエスコートなんかできるわけないって言ってたのに・・・・。





「だからお前はいつまでも京子とデートできねーんだ、ツナ」

「り、リボーン!?おま、いつの間に帰って・・・」

ていうか余計なお世話だ!!

「男は時に強引にならねーとな」

そう言ってリボーンはニヤッと笑った。

















* * *




帰りの電車も、そして家に辿り着いても手を繋いだままで。





さん」
並んで歩いていた山本くんが振り返った。
そして、正面を向いて立つ。

「んん?」

「あのさ」

「な、なに?」

「予行練習の次は本番っスよね?」

「へ?」

つか近い!顔が近いよカオが!

「ツナを誘った時、予行演習だって言ってたっしょ?」

「あ〜、いやあれはその・・・」

近すぎる距離に戸惑って思わず一歩下がるが、手を掴まれていて離れられない。




な、ナニこの展開。





「じゃ、次はオレからデートに誘いにいくんで」

「え?えっと・・・・・・、え?」

ああ、思わず二度聞いてしまった。




「駄目スか?」

そ、そーゆー真剣なカオで言われるとおねーさん困っちゃうんだけど。

「いや、えーと・・よ、よーしどんとこい!」

「じゃ、また電話します!」

山本くんは笑って、ようやく手を離してくれた。

ほっとしたような、でもっちょっと寂しいような・・・。
あれ、なんだこれ?





「おやすみ、さん」

立ち止まって振り返ったその顔は笑っていたけれど。





「あ、うん・・・おやすみ」

コレはもしかしてもしかすると。

アレですか。










ううんと・・・、身に覚えが無いんだけど。








そんなあたしを尻目に、ギクリとするぐらい真っ直ぐな、澄んだその瞳は。






映るあたしを確実に捕らえていた。











・・・・あの、アレなんですかね。

火ィ、つけてしまいましたかね・・・・?










【 終 】




















山本は積極的なのが似合いそう。
(06/09/12)

 

 

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