無数に差し込む鋭いカケラのような光は、突きつけられた刃物のよう。
この廃屋に連れてこられて、何日経っただろう?
04
奪いつくすキス
「いいかげんウチに帰りたいんだけど」
コンクリートの壁から伸びる鎖は、の足を繋いでいる。
どこにも逃げぬように。
向かい合うように置かれたソファーに優雅に座るのは黒曜中の制服を着た少年・・・六道骸。
たった数日で、部下と共にあの悪評高い黒曜中を制した恐ろしい男だ。
「あなたこそ、いいかげん僕のものになりませんか?」
「嫌」
あっさりと突っぱねる。
「じゃあ、帰せませんね」
「帰る」
希うのでなく、淡々と告げる。
「待つ者のいないひとりぼっちの家へ?それとも・・・ボンゴレ十代目の元へ?」
「アンタね、どうしてそこまであたしに執着するの」
からかうような骸の物言いに、は咬みつくように睨んだ。
「あなたこそ、どうしてあんなひ弱な男に執着するんです?」
しかし、骸の笑みは崩れない。
「執着なんかじゃない」
「僕も違います」
「嘘。執着してるじゃない、ツナに」
「・・・ああ、それは執着ではなくただの決定事項ですよ。彼を、手に入れるのはね」
「そんなことはさせない」
静かに、だが強い口調では言った。
「あなたに僕は殺せませんよ」
骸はさらに笑った。
台詞が違えば、おそらく異性を簡単に魅了できるほどに。
「殺す、なんて言ってないでしょ。ただ・・あたしはアンタのものにならない。ツナも、アンタのものにはならない」
がそれに心を乱されることはなかった。
ただ真っ直ぐ骸を見返す。
「・・・本当に貴方は面白い人だ」
独特の笑い声が、廃屋に静かに響く。
「アンタは変よ。そんなにあたしが欲しいなら、マインドコントロールでもすればいいじゃない」
「それでは意味が無いんですよ。・・・わかるでしょう?」
「わからない」
「・・・しようのない人だ」
骸はソファーから立ち上がり、の目の前まで歩くと、ひざまづく。
の足首に繋がる、冷たい戒めを撫でて。
「では貴方を解放しましょう。もっともこんなもの、貴方ならすぐ外せたでしょうに・・・」
こんな遊びに付き合ってくれるから、てっきり脈があると思ったのに。
そう続けて、肩をすくめる骸。
「ツナを諦めるの?」
ほんの少し期待をこめて、尋ねた。
「いいえ。もちろん貴方を諦めるつもりもありませんが」
骸は手を伸ばす。
その手はの顎をぐいとつかんで上を向かせ、すぐさま唇が重ねられた。
そしてそこから何もかも奪いつくすように、深いキスをした。
目を白黒させる。
しかし抵抗はしない。
ゆっくりと唇が離れれば、一瞬伸びて、すぐ消える銀糸。
「今のが、僕を殺す最後のチャンスでしたよ?」
笑みを崩さぬ骸とは逆に、眉をひそめる。
「・・・・・死にたいの?アンタ」
「いいえ。僕はただ貴方が欲しいだけです」
骸はの戒めを解いた。
重い金属音が廃屋に響く。
「望みがそれだけなら、叶ったかもね」
数日の監禁をものともせずに、すっくと立ち上がる。
「おや、そうですか?・・・それは残念」
「そんな悠長に構えてると、欲しいもんなんか何一つ手に入らないよ」
は汚れたスカートを翻し、真っ直ぐ歩いて骸の脇を通り過ぎる。
「・・・・がむしゃらに求めたら・・・貴方は壊れてしまうでしょう?」
骸はゆっくりと振り返った。
開け放たれた扉。
逆光の向こうに、は立って。
「何もかも壊すつもりのくせに。なに、その矛盾」
そして、光の中に消える。
骸は目を細め。
「・・・だから、僕は惹かれるのですよ」
揺るぎない思いを秘めた、貴方に。
一人残された廃屋で、骸は呟いた。
・・・終。
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