『いっちゃだめだよ!』


・・・どうして?




『ぜったい、がっこうに、いっちゃだめ!』





強く強く、握られた手。













それを、振りほどいて。







もう!なにいってるのよ。

しょうがないじゃない、あたしは今日から中学生なんだから。




アンタもいつまでもあたしの後にひっついでないで、トモダチの一人でも作りなさい!













『おねがいだからいかないでよ、ねえちゃん!!』















じゃ、行ってくるね、ツナ!














『いかないで!いっちゃ、だめだよ!!』































その手をもう一度繋ぐ日は・・・・来るのかな?

































  リプレイ 01





































あ〜あ、今日もダメダメな一日だったなあ。







「おかえり、ツナ」

ため息をつきつつ家に帰ると、台所から声がした。

ただいまと応えるのも面倒だったので、台所の前を通り過ぎて階段の手すりに手を置いた・・・けれど。




・・・・あれ?今の母さんの声じゃないぞ。

女の子の声だ。




ビアンキ?
・・・じゃないな。

ハル・・・も違うよな。




「・・・?」




台所をのぞくと、そこには。

「だ、だれ!?」

並盛中の制服を着た女の子がいた。
おやつの時間だったのか、まわりにはランボとイーピン、フゥ太までいる。

「誰って・・・ひどいなあ、わからない?」
へらっと笑う女の子。

・・・あれ?
なんか見覚えのある笑い方。






『見て見て、ツナ。ほら、並中の制服!』

くるりと回ってスカートを翻す姿が脳裏によみがえる。

目の前の女の子は記憶よりも大人っぽいけど、でもまちがいなく。







「あああっ!!ね、姉ちゃん!?」

「久しぶりー、ツナ」
ひらひらと手をふるのは、昔、うちの隣に住んでいた女の子。

彼女の名前はたしかそう・・・



















* * *
















「びっくりしたでしょ〜?ツっ君」
買い物から帰ってきた母さんがニコニコしながら言う。

びっくりしたっていうか・・・。

「あーんなにちっちゃかったツナがこーんなに・・・ていうほどでもないけど大きくなるなんて。ランドセルが重くてしりもちばっかついて立てなかったツナも、もう中学生なのね〜。姉ちゃん感激」
なんだか芝居がかったように言う姉ちゃん。

うわ!なんか見覚えのあるものがあると思ったら!!

「ちょっと!なんで勝手にヒトのアルバム見せてんの!?」

「いいじゃないの〜〜」
と母さん。

「よくないよ!まったくもう!」
慌ててアルバムを取り上げる。

「それより、もうすぐ獄寺君と山本が来るからチビたち上に来させないようにしてよ、母さん!」
「はいはい、じゃああとでおやつ持っていってあげる」

「友達?友達できたの?ツナ」

尋ねる姉ちゃんの声にインターホンのチャイム音が被った。

「そうだよ。あ、きた!」
オレは玄関まで二人を出迎えに走る。

明日出さなきゃいけない宿題がどうしても片付かなくて、今日うちでやろうって二人と約束したんだ。

「10代目お手伝いに来ました!」
「邪魔するぜ?ツナ」

「いらっしゃい、二人とも。さ、あがってよ?」




















* * *














雑談しながら宿題をやっていると、ドアがノックされた。

母さんがおやつを持ってきてくれたのかな?



けれど予想を反して、おやつとジュースを乗せたトレイを持ってドアの向こうに立っていたのは・・・、

「どーもお!いつもツナがお世話になってま〜す」

「ね、姉ちゃん!?」

なんで姉ちゃんが来るの!?
しかもつい昔のクセでまた姉ちゃんって言っちゃった!

「え、10代目のお姉様ですか!?」
「ち、違うんだよ獄寺君!」
いきなり正座してかしこまる獄寺君に、オレは慌てて否定した。

「昔隣の家に住んでてね。ツナは弟分みたいなもんで、昔はよく面倒見てやったのよ〜」

トレイからテーブルの上におやつとジュースを移しながら言う姉ちゃん。

「で、また隣に越してきたんだ」

そっか、また隣に住むんだ・・・。

「並中の制服着てるって事は・・・うちに編入?」
ジュースを受け取りながら山本が言った。

「うん、三年にね。みんなよりいっこ上になるね。です、よろしく〜」

「自分、10代目の右腕をさせてもらってます獄寺隼人っす!!」
正座のまま一礼する獄寺君。

「・・・じゅうだいめ?」
獄寺君の言葉に首を傾げる姉ちゃん。

「わあああ!なんでもないよ!!用が済んだんなら出てってよ姉ちゃん!」

10代目とかマフィアとか、そんなの姉ちゃんに知られたくない!

「なによお、せっかくツナに友達ができたんだから紹介してくれたっていいじゃない?」

「オレ、山本武っす」
気さくに応じる山本。

「獄寺くんと山本くんね・・・うん、覚えた。泣き虫だったツナにこんな頼りになりそうな友達ができるなんて、姉ちゃん感激」

涙をぬぐう仕草をする姉ちゃん。
わ、わざとらしい!つか恥ずかしい!!

そんな姉ちゃんの姿に山本は笑ってるし、きょ、恐縮っス!とか言って獄寺君はなんか喜んでるっぽいし・・・。

「もういいだろ、早く出てけよ〜〜!」

「え〜〜」

オレはもう気が気じゃない。
まるで母さんがもう一人増えたみたいだ。

「いいから!宿題してるんだからオレたちは!」

「ハイハイ。それじゃみんな、勉強頑張ってね〜」

姉ちゃんはようやく腰を上げ、部屋を出て行った。
ばたん、とドアが閉じる。








ったくもー・・・。



















* * *






















「てか、まだいるし!!」

宿題が終わって、獄寺君と山本が帰って。
台所には姉ちゃんがいた。

しかも母さんと一緒にキッチンに立ってる。

「うふふ、なんだか娘ができた気分だわ〜」
母さんはご機嫌。

「今日はカレーだよ、ツナ」
振り返った姉ちゃんはエプロンをしてる。
母さんのだ、アレ。

「・・・あそう」

なんだかなあ、もう・・・。

「はい、味見してみてよツナ」
差し出された小皿に注がれたカレーのルー。
スパイスの効いたイイ匂いに、オレはゴクリとノドを鳴らした。

おそるおそる小皿に口をつけて、ルーを味わう。

「・・・・うわ、おいしい。けどいつもと味が違う・・・ような?」

「今日のカレーの味付けはね、ちゃんなのよ」

「え、姉ちゃん料理できんの!?」
母さんの言葉にオレは耳を疑った。

「女の子にその台詞は減点!」

「いたっ!」
うう、小突かれた。

・・・そういや、昔はよくこんな風に小突かれたり叩かれたりしたっけ。

姉ちゃんはオレを泣き虫って言うけど、姉ちゃんのせいっていうのもあるんだよね。
結構乱暴者だったからな・・・姉ちゃん。
あの頃のガキ大将的な相手も泣かしちゃう位だったから。

でも、母さんと並んで料理する姉ちゃんは、あの頃からは想像もできないくらい大人っぽかった。
今は制服着てるけど、きっと私服だったら中学生には見えないだろうなあ・・・。





オレはそのまま台所に居座って、カレーを仕上げる二人の姿を眺めた。
























* * *


















「じゃ、お休みツナ。明日からよろしくね!」

「うん、おやすみ」




姉ちゃんは夕飯を一緒に食べて、帰っていった。






明日から姉ちゃんも並中生かあ・・・。

って、あれ?
















オレは今、気づいた。

オレの記憶にある姉ちゃんは並盛中の制服を着ていて。

あの日は確か回覧板を持って来た名目で、初めて袖を通した制服を自慢しにきたんだ。









だからアレは中学に上がる直前だったはず。












そしてオレは。






『ランドセルが重くてしりもちばっかついて立てなかったツナも、もう中学生なのね〜。姉ちゃん感激』






そうだよ、あの時のオレは小学校に入学する直前で。

オレが六歳。
姉ちゃんは、十二歳だ。

今オレは十三歳。

だから姉ちゃんは、十九歳・・・のはず。
ウン、計算あってるよな?











「なのになんで、並中の制服着てるんだ・・・?」

思わず口にした。




「気づくのが遅ェぞ、ツナ」

「うわ、リボーン!?」
いつの間にか背後にリボーンがいた。




「・・・面白いヤツが引っ越してきたな」
ニヤッと笑うリボーン。

「面白いヤツって、姉ちゃんのこと?」

「ファミリー候補だな」

「な、なに言ってんだよ!もう!」










オレは部屋に戻って、ベッドに寝転んだ。

お腹がいっぱいなのと勉強で疲れたせいか、すぐに眠ってしまって。







リボーンの言葉をキチンと聞いていれば、予想はできたはずなんだ。





















リボーンがファミリー候補にしたいと言ったということは、つまり姉ちゃんは少なくとも並みの人間じゃないってことだ。
















・・・続。


















 + 

(06/09/13)