のんびりと過ごすはずだった昼休みの屋上。
ネクタイとトンファーを交差させ、対峙する姉ちゃんとヒバリさん。
「。君を咬み殺す」
そう言って笑うヒバリさん。
「・・・・・・アンタはチェックの服着たグループの歌か」
姉ちゃんの口から、そんな言葉が返ってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
今すごく緊迫したムードじゃなかったっけ。
リプレイ
15
「ナイフみたいに尖って、触るもの皆傷つけたアレか。とんだハリネズミだな。じゃあ腹は柔らかいの?」
おもむろに腕を突き出し、てのひらをヒバリさんの腹に当てる姉ちゃん。
ね、ねねね、姉ちゃん!?
あの山本ですら姉ちゃんの場違いな行動に顔色を変える。
「・・・ふざけるな」
明らかにヒバリさんは怒ってる。
けれど、トンファーは動かない。
(・・・あ、そうか)
ネクタイを掴まれてるせいで、距離が近すぎて攻撃できないんだ。
もしかしてそれを考えて?
「ちっちゃな頃から悪ガキで15で風紀委員長か、ヤンキー先生顔負けだよ大したモンだよ」
・・・・・・・・・・・考えて、なさそう。
「黙れ」
ヒバリさんは、腕を上げて無防備な姉ちゃんのわき腹に向けて蹴りを放つ。
姉ちゃんは持っていたネクタイをヒバリさんの顔面に叩きつけるように離した。
同時にくるりと身を反転させて蹴りを避け、ヒバリさんの背後に回る。
そのタイミングは絶妙で、視界を遮られたヒバリさんは動きを止めた。
「ヘイ、ひざかっくん」
姉ちゃんはヒバリさんの軸足の膝裏をつま先でつつく。
当然、そんなことをすれば姿勢は崩れる。
「!」
ガクリと膝をつくヒバリさん。
(姉ちゃんの言動も行動も、ヒバリさんをおちょくっているようにしか見えないんだけど・・・)
あのヒバリさん相手に、一体どういうつもりなんだろう。
「駄目だ、姉さん離れろ!」
山本の掛け声もむなしく、一瞬で体勢を立て直したヒバリさんのトンファーが、姉ちゃんの横っ面を叩く。
「姉ちゃん!!」
屋上に鈍い音が響いた。
「・・・・ッ」
姉ちゃんは倒れることなく踏みとどまり、数歩後ろに下がった。
束ねていた髪がほどけ、バサリと広がる。
乱れた髪の間から見える姉ちゃんの顔には、まるで刺青のような黒い模様が浮き上がっている。
耳の後ろには、流れる髪に見え隠れする黒い突起。
まるでそう、角のような。
(目の、錯覚?)
「良い目だね。ますます、咬み殺したくなった」
ヒバリさんは姉ちゃんに向かってトンファーを繰り出す。
姉ちゃんの舌打ちが、耳に届いた。
「殺すだのなんだのッ、・・・クソガキが!」
低い声。
ダン!と利き足で地面を蹴って、姉ちゃんは後ろに下がった。
二歩三歩と下がる姉ちゃんよりも、向かってくるヒバリさんのほうが断然速い。
トンファーの間合いに入るその寸前。
何かが地面を這う。
まるで、姉ちゃんの影から伸びるように。
(なんだ、アレ!?)
「ッ!」
ヒバリさんも、ソレに気付いて足を止めた。
なんと言っていいかわからない漆黒のソレは、地面を滑べるように走る。
ソレは、意思を持つかのようにヒバリさんに向かって伸びた。
幾筋にも分かれて、トンファーに、腕に、腰に、肩に巻きつき、何重にもヒバリさんを縛っていく。
「・・・・・ッ!!」
ブチブチッと音を立ててそれらを引きちぎるヒバリさん。
けれど、引きちぎられても引きちぎられても、それ以上に数を増やして絡みつく黒い筋。
ヒバリさんの動きは徐々に奪われ、上半身は漆黒に包まれていく。
「な、なんだ、ありゃ・・・?」
目が覚めたのか、獄寺君が呟いた。
「さっすが姐さんや!!」
聞き覚えの無いその声は、姉ちゃんの近くから聞こえた。
「いやホンマ、いつもに増して見事な龍氣使い!」
・・・・・だ、誰?
声は姉ちゃんのすぐ側から聞こえるのに、声の主の姿は見えない。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
独特なイントネーションのその声に応えることなく、姉ちゃんはその場で倒れた。
・・・続。
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