救急車のサイレンが聞こえた。
いても立ってもいられなくて、家を飛び出す。
無意識に小学校への通学路を走る。
途中の交差点で、人垣に足を止めた。
『事故だって・・・?』
『女の子らしいわよ、かわいそうに・・・・』
『トラックが急に左折してきたって』
『まあ・・・』
横断歩道を前に、囁く大人たち。
野次馬の輪を前に、その会話を聞いたオレは動けなくなってしまった。
やがて一人、また一人と大人たちが去っていって。
オレの目の前に、凄惨な事故現場が広がった。
横断歩道に大きな血溜りが一つ。
小さなものはあちこちに。
タイヤの跡がついた鞄が、ぽつんと置き去りにされていて。
散らばったガラスの破片が、事故の大きさを示していた。
「・・・ツナ?」
声に振り向くと、あの頃まだ家にいた父さんがニコニコ笑っていて。
「なんだ、もしかして迎えに来てくれたのか?」
ひょいと抱き上げられて。
オレは、泣いた。
「おいおい、どーした?ツナ」
今でこそ、姉ちゃんが事故に遭ったのだと予想はできる。
あの時はただ、怖くて。
目に入った光景が衝撃的で。
大量の血から連想される死が、ただ不安や恐怖の塊にしかならなかった。
その夜は泣き疲れて眠って。
熱を出して寝込んだオレが姉ちゃん家の引越しを知ったのは、数日後だった。
リプレイ
17
レオンが、形を変えてオレの手に納まる。
強烈なヒバリさんの一撃を、ハタキで受け流す。
「・・・、邪魔する気?」
「うおおおおおおお!!」
ヒバリさんの言葉に背を向け、姉ちゃんの身体を持ち上げる。
「保健室へ連れていけ」
リボーンの声。
姉ちゃんを抱え、オレは出入り口へと走る。
背後に、ヒバリさんの気配を感じた。
かと思えば、爆発音が響く。
(・・・獄寺君の、ダイナマイト?)
振り返らず、階段を駆け下りる。
救急車のサイレンを追うあの時の不安が、蘇る。
死ぬ気の炎は痛いほど熱いのに。
心は、どんどん冷えていく。
今は昼休み、のんきに雑談する生徒を避けながら廊下を疾走する。
「シャマル!!Dr.シャマル!!」
乱暴に、保健室の戸を叩く。
これでシャマルがいなかったら目も当てられない。
「・・・んだよ〜、男は診ねェって言ってんだ、」
緩慢な動作で引き戸を開けたシャマルは、姉ちゃんを見てすぐ顔色を変えた。
一瞬ほっとしたオレも、その表情にまた不安が湧き上がる。
「なにがあった!?」
オレの腕から姉ちゃんを抱き上げて、保健室のベッドに寝かせる。
「お、屋上で、ヒバリさんと・・・」
そこまで言うと、シャマルは一旦手を止め、ため息をついた。
バカが、と呟く声が聞こえる。
「・・・・・・・・・・・・・シャマル・・・、姉ちゃん・・・・・息、してないみたいなんだ・・・・」
胸の辺りで拳をぎゅっと握って、オレは告げた。
シャマルはすぐさま姉ちゃんの手首をとって脈を測った。
浅いな、と呟くと姉ちゃんの胸のリボンを乱暴に取ってブラウスのボタンを外していく。
「シャ・・・、」
「出ていけ!邪魔だッ!!」
一喝され、オレは保健室からよろよろと後ずさった。
死ぬ気の炎は、いつの間にか消えていた。
・・・続。
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