主治医であるシャマルから外出禁止令を受けた。
ご丁寧にトライデント・モスキートまでつけてくれたおかげで、完全なる引きこもりライフの始まり。
翌朝、土曜日。
つい、学校に行くのに合わせて起きてしまったはパジャマからラフな格好に着替え、朝ご飯を作る。
「デュー、新聞とってきてー。・・・・デューってば、聞いてる?」
振り返り視線をやれば、居間から聞こえるのはテレビから流れるアナウンサーの声だけ。
「・・・・?」
焼けた目玉焼きとベーコンをフライパンから皿に移し、は居間を覗いた。
「デュランダ?」
この時間、居間のテレビでニュース番組を観るのが日課のはずなのに、デュランダはいなかった。
テーブルの上のリモコンに頬杖をついてテレビを観るその姿は、どこにも無い。
「どこいったのよ、もう・・・」
オーブントースターのチン!という音に、まあいっか、と続けては台所に戻った。
リプレイ
22
こちらは隣の沢田家。
「ツっ君、早く食べないと遅刻よ〜」
台所から顔を出し、声を上げる奈々。
二階のツナの部屋から、物音だけが返ってくる。
「ママン、おかわり」
「私も」
同時に空になった皿を差し出すリボーンとビアンキ。
「はいはい、ちょっとまってね〜」
「母さん!オレのネクタイは〜!?」
あわただしく階段を下りるりるツナ。
「うわ!?」
だが、下りきる数段手前で足を滑らせた。
「ガハハ、ツナだっせー!」
「#$’()(’%##!”()=〜!」
したたかに尻を打ちつけた痛みを堪えるツナの前を、ランボとイーピンが走る。
二人は既に朝ご飯を済ませて、家の中を走り回っていた。
こちらは、朝からにぎやかだ。
「ママン、虫かごー!」
ランボは台所に入るやいなやそう言った。
「虫かご・・・?何か捕まえたの?」
そう言って奈々は身を屈めた。
「変な虫捕まえた!」
得意げに手に持った物を見せるランボ。
「あいたたた・・・、母さん、朝飯いらないからネクタイ・・・」
尻をさすりつつ台所に入ってくるツナ。
「ううう、無念や・・・」
「?」
ツナは、その声にランボの手にある黒い物体を見た。
だらりと垂れたソレは、蛇とトカゲを足して二で割ったような。
「デュ、デュランダ・・・だっけ?」
「姐さん、先立つ不孝をお許し下さい・・・」
ツナが声を掛けると、色々諦め切った台詞を吐くデュランダ。
「わあああああ!?ランボ!それダメだよ!ソレ虫じゃないから!!」
つーか五歳児にも負けるのかコイツ!?と呆れつつもランボに近寄るツナ。
だが。
「うるせーぞ」
リボーンの手からフォークが放たれた。
「ぐぴゃ!?」
フォークは、吸い込まれるようにランボの額に突き刺さる。
(よ、容赦ねー!!)
フォークが鼻先をかすめて固まるツナの前で、ランボがフルフルと震えだす。
「が、・・・が・ま・ん。が・ま・、・・・うわぁあああん!」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ランボはどこからともなく10年バズーカを取り出した。
ぐったりしたデュランダを握りしめたまま、己に向けて打つ。
爆発音が響いた。
それは、隣家のダイニングで食事を終えたのにも聞こえるほど大きくて。
何の音かと首をひねるだが。
「・・・ま、いっか。天気良いし洗濯しよ〜」
そう言って、脱衣所に向かった
もうもうと煙が上がる沢田家の台所。
「ゲホ、ゲホ!」
すぐ近くにいたツナは煙にむせる。
「やれやれ・・・、またか」
煙の中から現れたのは、もう何度目かになる大人ランボ。
「ゲホ、ゲッホ!なんや?なんで煙が・・・!」
続く、青年の声。
「あれ・・・?」
またかよ・・・、と呆れ顔のツナだったが、聞き覚えの無い声に顔を上げ目を凝らす。
煙は薄れ、やがて消えて。
大人ランボの隣には、青年が一人。
「ん?なんでここにランボがおんねん」
青年は金茶色の目をきょとんとさせ、ランボを見た。
「10年前のオレがまた打ったようだ。どうやらお前も巻き込まれたようだな」
やれやれ、と肩をすくめる大人ランボ。
「ら、ランボ・・・隣のヒト、知り合い・・・・?」
指を差し、恐る恐る尋ねるツナ。
「お久しぶりです、若きボンゴレ。知り合いも何も、コイツは・・・ハッ!?」
背後から感じた殺気に、真っ青になって振り返る大人ランボ。
ポイズンクッキングを両手に持ったビアンキが、そこにいた。
「ロメオ・・・!」
「ひいいいいいい!?」
脱兎の如く逃げる大人ランボ。
追うビアンキ。
「また打ったって・・・、もしかして10年バズーカかいな?てことは」
キョロキョロとあたりを見渡す青年は、ツナを見て動きを止めた。
「うわ、ちっこ!あっはっは!ホンマに10年前や〜!」
大笑いしながら腕を伸ばし、ツナの頭を乱暴にワシワシ撫でる青年。
「うわ!?ちょ、だ、誰なんですか〜!?」
頭をグラグラさせながら叫ぶツナ。
「お、イーピンもおるやん!そーやな、昔はこんなんやったな〜〜」
ひょいとイーピンを抱き上げる青年。
抱き上げられたイーピンも、ワケがわからずなすがままだ。
「・・・・・・ま、まさか」
流暢な関西弁と今ここにいない存在に、青年の正体を想像するツナ。
「そのまさかみてーだな」
一人マイペースに朝ご飯を食べていたリボーンが、ようやく口を開いた。
「えええ!?だ、だってなんで人間の姿に!?」
「さーな」
「あ、ちゅーことは隣に姐さんがおるんか!?」
イーピンを床に降ろし、青年は大股で隣の居間に向かう。
「ちょ、ちょ、ちょっと!」
慌てて後を追うツナ。
「姐さん!姐さ〜〜〜ん!」
青年はガラス戸を開けて大声で呼びながら庭に出る。
「・・・ん?」
洗濯機に洗濯物を放り込んでいたは、庭からの声に顔を上げた。
「なんか騒がしいなあ・・・」
脱衣所から居間に戻り、庭に面したガラス戸を開く。
同時にポン!と乾いた音。
庭に出て数歩歩いた青年は、ついさっきまでランボの手に握られていた謎の生物デュランダへと変わった。
(あ、五分経ったんだ・・・)
デュランダの10年後の姿をに見られるということは、10年バズーカやマフィアのことまで芋づる式に知られるということ。
面倒な騒ぎにならずに済んでほっとするツナ。
当のデュランダは空中をヘロヘロ〜と飛んで、庭に出てきたの胸元におさまった。
「なんだ、ツナのとこにいたの?デュー」
「ううう〜、姐さ〜ん・・・」
「ところでアンタ、なんでニンニク臭いの・・・?」
は眉をひそめる。
実はたまたま庭に出たところを遊んでいたランボとイーピンに見つかってしまい、餃子拳を食らってランボにつかまったのだが、それを言う気力が今のデュランダには無かった。
「姉ちゃん・・・・お、おはよう」
何事も無かったかのように振舞うツナ。
「おはよ、ツナ。デューがなんか迷惑かけた?」
「あー・・・、ううん!それより、姉ちゃん身体の調子は・・・?」
ツナは戸惑いがちに尋ねる。
「あは、だいじょーぶ。今日もちゃんと休むからさ〜」
「・・・う、うん」
へらりと笑うの表情に、ツナは安堵した。
昨日倒れたのが嘘のようだ。
「それよりツナ、学校は?」
「あー!!ち、遅刻する!!」
ほっとしたのもつかの間、慌ててきびすを返すツナ。
「いってらっしゃーい」
そう声を掛け、も家の中に戻った。
強烈に臭うデュランダを洗濯機に放り込むために。
・・・続。
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