「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・!」

ケーキ屋から飛び出し、全力疾走で家の前まで辿り着いた
六道が後を追ってくる気配はないようだ。

(最近ランニングサボってたからなまってるなぁ・・・ちょっと鍛え直そう)

両手の買い物袋の重みによろけながら門扉を開く。

ニ三歩進むと、弾力のある何かを踏んだ。

「ぐう!?」

しかも鳴いた。





「・・・・・・・・・・・・・・・・、デュー?」

「せ、殺生やわ、姐さん・・・・・」

それは、家の中で留守番をしていたはずのデュランダだった。

































  リプレイ 26





























とりあえずは、買い物袋にぐったりしたデュランダを放り込んで玄関のドアを開く。

三和土には乱暴に脱ぎ捨てられた革靴が一足。




しばしそれを眺めて持ち主に思いを巡らし、至る。

「やれやれ・・・」
ため息をつきつつ、は三和土を上がった。




キッチンに入り、テーブルに買い物袋を置く。

リビングに目をやれば、テレビがついている。
ソファーには、寝転がる人影。
手には缶ビール。

「お、やっと帰ってきたな。なんかツマミとかねーの?」
の視線に気付き、顔を上げて言うのは、シャマル。

は買い物袋からぐったりしたデュランダを取り出し、突き出した。

「これ、先生の仕業?」

「んだよ?んなモン食えねーよ」

「ツマミじゃねー!」

「いくらチャイム鳴らしても出てこねェしよー、中に入れやがらねェからちょっとな」

「先生学校は?」

「今日は午前中だけだろ」

「そりゃ授業はそうだけど・・・、まあいいや。ツマミより、夕飯食べていきなよ。つーか泊まるの?ナンパ失敗した?」

「最後は余計だよ。ったく」
そう言いつつも、胸のポケットからカプセルを取り出すシャマル。
その中からトライデントモスキートが一匹飛び出し、デュランダを刺した。

デュランダはすぐに目を覚ます。

「うわあああん!姐さーん!」
「ハイハイ、ごくろうさま」

デュランダはのに飛びつき、髪をかき分け潜り込むようにして気配を消した。

くすぐったそうに首をすくめるを見て、シャマルは言った。

「前から聞きたかったんだがな?」

「んー?」

「アイツは一体なんだ?」

「なんだ、って?」

「デュランダだよ」

「や、それはわかってるけど」
買った物をビニール袋の中から取り出す

「アンジェラちゃんの攻撃が効くって事は、アレは生き物なんだろ?」

「そりゃあ、まあ」

「アレはお前の力の一部なのかと思ってたんだがな、オレは」

「ああ・・・」
シャマルに言われ、は買い物に行く前の会話を思い出した。




『忘れるも何もワシ術式よう知らんしー』




考えればおかしい。
最強最古と謳われる黒龍・デュランダでありながらのあのへっぽこさはなんなのだろう。

肉体という枷を持つでも、何倍もうまく立ち回れる。

迂闊にも程がある上に、あの関西弁。




「ま、いいんじゃない?人語を解する珍生物と思えばそれなりに落ち着くでしょ。それより夕飯夕飯」
準備に取り掛かるに、がっくりと頭を落とすシャマル。

「お前・・・もうちょっと真剣に生きろ。こう、目の前の事だけじゃなくて」

「もしかしてそれ言いにきたの?家庭訪問?その言葉ソックリそのまま返すけどね」
テーブルと冷蔵庫を行き来しながら言う

「せめて往診と言え!あと今こっそり冷蔵庫に入れたハム、それハムだろ?」

「ハムハムうるさいなー、そんなんだからイイ歳して国際手配なんかされんだよ」

「関係ねーよ!」




「え、なに、なんなん?どないしたん?なに盛り上がってんの?」
二人の会話に何事かと顔を出すデュランダ。








そして、日は暮れて。



















沢田家、食卓。




「ツっ君、梨食べる〜?」
夕飯を食べ終えてテーブルを立つツナに奈々は言った。

「ん〜、いらない」

「じゃあこれ、ちゃんちにもっていってあげて?」

「えー、オレが?」

「じゃあ代わりに夕飯の片づけする?」

「・・・ちぇ、わかったよ」

奈々からむいた梨を入れた皿を受け取り、ツナはの家に向かった。




















「・・・あれ?」
呼び鈴をいくら鳴らしても、は出てこなかった。

閉められた居間のカーテンからは、光が漏れている。
耳を澄ませば、テレビの音。
人の声。




玄関のドアに手を掛ければ、あっけなく開く。

途端、鼻につく肉と煙の匂い。

家の中の視界は煙でほんのり白い。

「ね、姉ちゃん!いるのー!?」

ツナは大きな声を出す。
たぶん焼肉だろうが、ほんの少しの不安も覚える。

一瞬、話し声が止んで。




「お、ボーズ。何しにきた」

顔を出したのは、明らかに酔っ払った赤い顔のシャマル。

「な、なんで!?」

「あ〜、ツナじゃん、どーしたのー?」
すぐあとからが出ててくる。

「ね、姉ちゃん、なんでシャマルが・・・?」

「そーだ、ツナも食ってく?肉。ビールもあるよ」
飲みかけの缶ビールを差し出す

「いらないよ、夕飯もう食ったし。これ、母さんから!」
ぶっきらぼうに皿を突き出すツナ。

「おー、そかそか。じゃあ上がっていきな」
はツナの腕を取って引っ張り込む。

「ええ!?い、いいよ!」
ツナは身を引いて拒否する。

「肉あるよ、ビールも」

「だから、いらないって!」

「そう。じゃ、上がってく?」

「だから・・・!まさか姉ちゃん酔ってんの!?」

の顔色は通常通り。
だがよくよく見れば・・・・・目がぐるぐるしていた。

「酔ってにゃいよ?」

「酔ってるよ!!」

「まあいいからいいから。肉とかビールとか梨とかあるよ」

「それは今オレが持って・・・ちょ、ちょっと、靴!」

皿を持ったままグイグイ引っ張られ、ツナは靴のまま三和土を上がらされた。
廊下の途中でなんとか脱ぐが、そのまま居間に連れ込まれる。

「ま、とりあえず駆けつけ一杯な」
ソファーに座ったシャマルがビールをコップに注ぐ。

「未成年に酒すすめるな!」

「じゃあ、肉?」
向かいに座ったが言う。

「いらないってば!!」






「酔っ払いにはな、なに言ってもエンドレスリピートやでェ・・・」

そう口を挟むのはデュランダだった。

「え・・・?」

しかし、声はすれども姿は見えず。





「・・・逆らったら、アカンのや。ワシのようになるで」




周りを見渡すツナ。

「デュランダなのか?・・・・・どこ?」




よくよく目を凝らせば、黒い物体が蝶々結びにされてテーブルの下に転がっている。





「なあ、後生やから解いてくれへんやろか・・・・」

うつろな目でツナを見るデュランダ。





「わああ、デュランダー!?」













「ツナ、肉焼けたよ?」

「だからいらないってば!!」







そしてこの後しばらく、ツナは酔っ払い二人に軟禁状態にされるのだった。


















・・・続。











 

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そして一夜明けて・・・
(06/12/07)