カオスと化した部屋の中、一人場違いなほど毅然と座する少年・雲雀恭弥。







「宴は終わったんだよ、大遅刻だよヨネスケ。帰れ」
雲雀に蹴られたせいで目を覚ましたは言った。

「誰がヨネスケだよ。君、酒臭いよ」

「酒飲んだら酒臭いに決まってるだろ。アイドルだってトイレに行くんだよ。幻想を持つな」
は寝起き特有の目つきの悪い顔で雲雀を見下ろす。

「何の幻想。風紀委員長の前で飲酒を隠しもしないなんていい度胸だね」

「ヒトんちに不法侵入しといてお前の方がいい度胸だよ。お酒は二十歳になってからだよ、ったく」
は雲雀に背を向け、足場を確保しながらキッチンに向かうと、冷蔵庫を開けて飲みかけのペットボトルを取り出した。
後ろ手で冷蔵庫のドアを閉め、シャマルが寝ていたソファーに勢いよく座る。
残り少ない飲料水をイッキに飲み干し、口元を拭った。

そして。

「あ、今日何曜日?」
テーブルを挟んで座る雲雀に、だしぬけに尋ねる。

「・・・・・・・・・・・」
雲雀は無言で微動だにしない。
ただ、眼光のみが鋭くなる。

あからさまな話のはぐらかしは、雲雀でなくても頭に来るだろう。

「に、日曜やで、姐さん」
剣呑な空気を察したデュランダが代わりに答えた。

「そうだよ、日曜日だよ。なんで制服着てんだよこの学校大好きっ子が。制服フェチが。かえれかえれっ!お前に食わせる肉はねェ!」
顔を背け、シッシッと手を払う

「・・・元気なようだね。良かったよ、これで安心していつでも君を咬み殺せる」
雲雀はどこからともなくトンファーを出す。

それを見たは思いっきりブサイクに顔をしかめた。

「なんでコイツ中に入れたのデュランダ!留守番もできないの?子ヤギみたいに白い手で騙されたの?チョーク食った声で騙されたの!?」

は手を伸ばし、ひっつかんだデュランダに向かって怒鳴る。

「姐さん朝からテンション高いなァ、ツバ飛んだでェ・・・?」
針金のような前脚で顔を拭うデュランダ。

「あーもー、やだやだ。早く猟師さん来て撃っちゃってくんないかな!」
寝癖交じりの髪を空いた手でがりがり掻く

「それは赤ずきんだろ」

「どうでもいいよ。そんな話なら他所でやってよ。ヤギとか狼とか猫とかそんなモンは知らん!」

「話をしてるのは君一人」
さすがに呆れた表情に変わる雲雀。




「ところでどうして先生があたしの足の下にいるの?」




雲雀に蹴り落とされたシャマルは、目を覚ますこともなく床に転がったまま寝ていた。




「それこそどうでもいいよ」
既にそんな事は忘れた雲雀が冷たく言い放つ。








一部始終を見ていたデュランダは、一向に進展しない話に突っ込む事も出来ず、ただ成り行きを見守る。




























  リプレイ 28


































「これ」

雲雀が差し出したのは、果物カゴ。
もちろん中にはぎっしりと色鮮やかな果物が。

は、視線を雲雀から果物カゴにやる。

「何そのテンプレお見舞い。・・・見舞い?病院?ここはあたしの家であたしはいたって元気なんだよ。まさかあんな一撃でどうにかなると思ってんの?昨日休んだのはただのサボリだよ。勘違いすんなよおかげでこちとらさらに上をいく勘違い野郎に情報漏えいだよどうしてくれんだ。まあこれは貰っておくけどね」
言うだけ言って、しかし果物セットはちゃっかりいただき脇に置く

デュランダは、興味津々に果物カゴに近寄る。

「それはただの土産。飲酒だのサボリだの堂々と口にして、一体どういうつもり?咬み殺すよ?」

「どうもこうもないよ。初めての訪問で土産付きってどこの出来たお嬢さんだよお気遣い無く」

「どういたしまして。委員会は毎週木曜だから」

「・・・は?」
聞き慣れない言葉には動きを止めた。

「試験期間を除く毎週木曜日、月初が全委員会の集会。あとは風紀委員の会議。遅れないように」

「な、なにいってんの?」

「・・・・姐さん、これ」
鮮やかな果物の間に挟まっていた物を取り上げるデュランダ。

それは、雲雀のものと色違いの腕章だった。

目を丸くするの表情を見て、してやったりとばかりに雲雀は少し頬を緩めた。

「群れる草食動物は嫌いだけど、君みたいな正体不明なヤツも野放しにはできないからね。確かに渡したよ。じゃ」

雲雀は立ち上がる。

「ちょッ、ちょーちょーちょー、待て!待てって!」
も立ち上がり、慌てて雲雀の腕を掴む。

足元に寝転がっていたシャマルはに全体重を掛けられぐえっと鳴いた。

「デュー、お客様にお茶!早く!!」
キッチンを指差す

「お構いなく」
冷ややかに返す雲雀。

「まあそう言うなって!ちょっと落ち着いてゆっくり話し合おう!委員会って何!?」
「風紀委員会だよ。簡単に言うと僕の手下」
「断る!頭のてっぺんから足の裏まで断る!全細胞をもって断る!!」
「もう決定事項だから。じゃあ明日から頑張って」

「だから待てってー!」
掴んだ腕に力を込める

「・・・っ」
雲雀は顔をしかめた。

その表情をは見逃さなかった。
そして、掴んだ腕から気付く。

「・・・アンタ熱あんの?」

「無いよ」
腕を振りほどく雲雀。

「腕でソレだけ熱いって異常じゃない。なのになんで長袖なんか着てんの?デュー、お茶より先に先生。すぐ起こして」

「シャマルは姐さんの足の下やで・・・?」

「ヤダ!先生なんでそんなトコに寝てんの!?床が生温かいと思ったら!」
ソファーの上へ、逃げるように後ずさる



「ニィさんがソファーから蹴り落として、その後ずっと姐さんが踏んでるんやで・・・?でもって多分シャマルは男は診ィひんと思うんやけどワシは一体どないしたらエエのん・・・?」
冷静に状況を説明するデュランダ。

「あー、じゃあそいつ逃げないように捕まえといて。先生いつまで寝てんの?ラグマットが汚れるでしょ起きて!」

「主治医よりマット優先!?」

「いちいち突っ込まないの!ホラ逃げるよ!」
の指差す先、雲雀は居間から出て行こうとしていた。

「ええええ、ちょ、ニィさん待ってや!」
デュランダはピュンと飛んで雲雀の前に回り込み、ぐるりと旋回した。

「ッ!」
途端、ガクリと片膝つく雲雀。

「アレ!?」
デュランダは、気付いた。





「先生ってば!」
「・・・・・ムフフ、子猫ちゃ〜〜ん」
「寝ぼけんなボケえ!!」
唇を尖らせて近づくシャマルをもう一度眠りに誘うの拳。





そのやり取りを背後に、デュランダはまじまじと雲雀を眺める。











「なんでニィさんから龍氣が・・・・?」













・・・続。











 

 +  + 


(06/12/08)