それは巨人の手に握りつぶされるような感覚だった。












彼の全身を戒めるのは、逃れる事の出来ない程強力なもの。

ミシミシと悲鳴を上げる骨。

視界は闇。




否。

見た事も無い漆黒の模様が幾重にも重なり、形を留めることなく変化し続ける。

それは網膜に焼きつくような強烈な映像で、次第に身体中の力が抜けていく。




意識を失いかけたその時、いきなり視界がひらけた。




眩暈に抗いながら視線をやれば。

「姉ちゃん!?」




声。




その先に、が倒れていた。






勝負はここで幕を閉じた。




負けていない。でも勝ってもいない。

いや、が倒れなければ間違いなく。













翌朝。

彼の身体中には、勝敗をつきつけるように赤黒い痣が浮き上がっていた。


































  リプレイ 29









































「なんでニィさんから龍氣が・・・・?」

怪訝そうなデュランダの言葉に、は雲雀の元に駆け寄る。

「ちょっと見せて」
片膝をつく雲雀の背後に立つと、シャツを掴んでズボンから引っ張り出す。

内出血に似た、だがしかしあまりにも不自然な痣が雲雀の身体を這うようについていた。
それが熱を帯びている。

「これは・・・・龍紋?まさかこの間の術式の・・・」
おとついの、屋上でのやり取りを思い出す

「触るな」
背中に触れようとしたの手を払う雲雀。

「いや、そんなこと言ったって。ニ式ごときでデルタ化?それともこっちの理のせい?なんでこんなことに・・・」
雲雀の背中を眺めながら首を傾げる

「ごちゃごちゃうるさいな。関係ない」
雲雀は立ち上がろうとするが、バランスを崩して逆に手をつく。

「ニィさん、契約してないドラゴンの龍氣は毒やで?ココ来たんもそのためとちゃうん?」
デュランダは雲雀の肩に乗り、顔を覗き込む。

雲雀は額に脂汗をかき、徐々に息が荒くなっていた。

「早くそれを言えばいいのに・・・って言ってもどうしたモンかな。龍紋が対象の体内に残るなんて初めて見た」

「・・・・・ッ」
一体何の話をしてるんだ、と言おうとしたが、雲雀の口は呼吸をするので精一杯だった。

デュランダが乗る肩が、熱くてしょうがない。
の視線に呼応するかように痣がドクドクと脈打つのだ。

「そうだ。デュー、龍氣に同調して潜れる?」
「エエエ、龍紋を解体して龍氣に戻すん?そないなことしたら反動でニイさんの身体が・・・」

「そもそも構成途中の龍紋を身体に宿す事自体並の人間じゃ有り得ないから。ホント化け物だわコイツ。とりあえず体力ある内にやっちゃって」

「りょーかい」

言うや否や、デュランダは俯く雲雀のうなじにそって襟からシャツの中へ。
そして龍氣を追って体内に潜り込むと、炎のような熱をともなって雲雀の身体を巡る。

「!!」
激痛に顔を歪める雲雀。




しかしそれはすぐに止んだ。

意識を手放したからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突に、目の前に広がる見た事の無い光景。

 

果ての無い大地は荒涼としている。

地平線は空と混ざり、境界がわからない。

空は見慣れた澄んだ青ではなく、どこか黄みがかって。

雲はない。

ただ、流星のごとく駆ける一群があった。

虫かごに閉じ込めたような陳腐なドラゴンでなく、それは圧倒的な大きさの。




気付けば、自分はその中の一体で。


















・・・続。











 

 +  + 

(06/12/09)