「これで6人目か・・・・」

そう呟くのは、改造制服に身を包んだ学生。

頭はリーゼント。
腕には風紀委員と刺繍された腕章をつけている。

彼がいるのは人気の無い路地裏で、足元のコンクリートは血に濡れている。
そこで横たわっていた者は既に救急車で運ばれた。

「草壁さん!」
声を掛けて近寄ってくるのは、同じような格好をした学生。

「どうだった?」
「やはり、横峰をやったのは黒曜生のようです」

「そうか・・・」
それは、予想していた報告だった。




昨日から6人もの風紀委員が何者かに襲われている。
目撃者の話によれば、相手は隣町の黒曜中の制服を着ていたという。

一般生徒への襲撃も数件報告されているが、おそらく無関係ではないだろう。

合わせれば、すでに被害は十人以上。

「黒曜は最近やってきた転校生に数日で制圧されたと噂に聞きます。まさか、奴ら並盛まで・・・・」

「とりあえず、委員長に連絡をつける。お前は他の委員に注意を。一応、<裏>の連中にも」

「はッ」


















のどかな日曜の午後。

不穏な空気が並盛町をゆっくり覆っていく。































  リプレイ 30




































カーテンの隙間から陽射しが一筋、雲雀の頬を差した。

何か、夢を見た気がするが目覚めると同時に忘れた。

雲雀はゆっくりと起き上がる。
軋むスプリングの音に、横になっていたのがソファーだと気付く。

周りを見渡せばすっきりとした一般的な家庭の居間。
嫌でも記憶に残るカオスがまるで嘘のよう。
顔を背けたくなるような匂いも無い。

テーブルの上にはリモコンと携帯が置かれるのみ。
行儀の悪い食事の跡はカケラもない。

その下に眠りこけていた保健医もいない。

「・・・・・・・」
まだ少し霞がかった頭で雲雀は記憶をたどる。
なぜ他人の家でソファーで横になっていたかを。

(確か、の家に来て・・・・)

それで、・・・どうした?

ふいに、かすかな振動ともに馴染みのある曲が流れ出す。

「姐さん、ケイタイ鳴っとるでー」
「あたしのじゃないよ。先生忘れていったかな?」

さらにキッチンから声が聞こえた。

・・・緑〜たなびく並盛の〜〜・・・
・・・・・・大なく小なく並がいい〜〜・・・・・・・

「校歌!?着信音校歌ってアイツか!?ホントどんだけ学校好きだよ!」
足音を立ててやってくる

「・・・・ああ、なんだ起きたの」

そう言うにちらりと視線だけやって、雲雀は携帯を取った。
着信画面には【草壁】の文字。

通話ボタンを押すと、少し慌てたような草壁の声が返ってくる。

「・・・・そんな挨拶はいいから、用件は?」

続く草壁の話に、雲雀の表情は曇った。

「・・・・そう、6人目か。わかった」
雲雀はあっさり電話を切って、立ち上がった。
携帯を尻のポケットに入れ、はみ出たシャツをズボンの中に戻す。

「ニィさん調子はどないや?」
デュランダの声は頭上から聞こえた。

「乗るな」
針金のような前脚が髪をつまむのがうっとうしい。
尻尾らしきものが後頭部の髪を撫でるように波打つのがまた気持ち悪い。

デュランダは素直に離れ、今度はに近づいて長い髪をかき分けるようにして登り、頭の上に立つ。

アレはくすぐったくないのだろうか、と思いながらを眺める雲雀。

「・・・・・、で?」
はその視線を受けて問う。

「で、ってなに」

そう言い返すと、は複雑な顔をする。
「ま、いいや。元気みたいだし。帰れば?それとも昼飯でも食べてく?ヨネスケ」

「だからヨネスケって誰」
ヨケスケはわからないが、雲雀は一つ気づく。
長袖をたくし上げると、あったはずの痣が消えている。

熱も、痛みも無い。

「で、昼飯は?」
雲雀の行動を見ても、あえてそちらを問う

「いらない」

雲雀には、なにがなんだかわからない。
自分の身に何が起こったのかわざわざ聞くのも癪に障る。
わざとらしく、しかもいちいち軽薄な物言いをするをすぐにでも咬み殺してやりたいが、今は目の前の謎多き女よりも草壁からの電話の内容の方が急を要する。

「帰る」

「あそ」

「ニィさん、またな〜」
虫かごの件は忘れたのか、はたまたが側にいるせいか、のんきに手を振るデュランダ。




兄さんじゃないと訂正もせず、雲雀は家を後にした。



走り去るバイクを窓から眺める

「もういっぺん龍紋と術式おさらいしないとダメかなあ・・・」
ポツリと呟く。

「でもシャマルに止められてるやん」
デュランダはから離れてフヨリと飛び上がる。

「ま、そもそも試す相手もいないしね」

「ニィさんならつきあってくれるんちゃう?」

「冗談。ったく、地味に生きてんのになんでヘンなのが寄って来るんだろーなー」

「ところで姐さん。コレは?」

うんざりとした表情をするに、デュランダは何かをよいしょと持ち上げて見せた。
頭からすっぽりと被って、浮き輪のように。




それは、雲雀と色違いの腕章。




「ばかああああ!アンタなんで持ってんのそれ!?返してきなさい!!」

「そ、そやかて・・・・」

「つーかアイツなんでバイク乗ってんの!?トシ誤魔化してんじゃね!?」
今頃気付く

「姐さんと同じやなァ」

「一緒にするな!!」













こうして、の二日間の休日は終わった。













・・・続。











 

 + 

(06/12/09)

→ リプレイ四章 異邦人 (黒曜編ベース)に続く。