月曜の朝。

はジャージ姿で家を出る。
ここしばらくサボっていたランニングを再開するのだ。

長い間寝たきりで衰えていた身体を少しずつ慣らして体力をつけ、龍紋と術式に耐えられるものにしていた。

・・・つもりだったが、転校した早々術式の反動で倒れた。

その後色々と面倒な事になって。


が持つ特殊な力は、本来この世界にあるものではない。
理の違う世界で使う危険を考えれば、主治医のシャマルが禁止するまでもなく使うべきではない。

それは誰よりも自身がわかっていることだ。

なにより使う必要に迫られるほどこの世界は危険ではない。

日常生活や体育程度の運動には困らないほど、の身体能力は回復している。
これ以上鍛える必要はない。

力を、使わないのなら。

そもそも使う必要だって無いのだ。

わかっている。

 

それでも、使う時の事を考えてしまう。

この力を駆使しなければならない相手など、状況など、あるはずがないのに。




は駆け出す。



この力は、必要なもの?

なんのためにここに戻ってきたの?

なにをすればいいの?






(・・・なんて迷ってるうちはまだ)







異邦人、だ。







































  リプレイ 31
























角を曲がったところでばったりと出くわしたのは、クラスメートの少年だった。

「ええと、笹川・・・?」
笹川了平。
たしか、ボクシング部に所属していたはず。

「うん?お前は転校生の」
笹川は足を止めた。

だよ」

もロードワークか?」

「あは、ただのランニングだよ。ちょっとなまってるみたいだから軽くね」

「身体を鍛えるのは良い事だ。病気にも掛かりにくくなる」

「うん」
そういえば転校してからロクに授業を受けていないことを思い出す
きっと病弱なイメージを持たれてしまっているのだろう。

「ではオレはこっちなのでな」
「じゃあまた学校でね〜」
しばらく二人で走っていたが、公園の前で別れる。

は公園の広場を一周半し、入ってきた入り口とは別の商店街に面したところから出た。
大通りをしばらく走り、途中でパン屋に寄り道をする。

焼きたてパンのいい匂いを放つ袋を提げ、スピードを落として走る。
昨夜考えたルート通り。後は家に帰るだけだ。

しかし。

「あれ?」

ガードレールに背を預け、歩道に座り込む笹川の姿を見つけた。
不自然なその姿には首を傾げるが、

「・・・・ッ笹川!?」
血に染まったジャージに気付き、慌てて駆け寄る。

笹川は頬を腫らし、頭から血を流していた。
だらりと伸びた腕は折れているかもしれない。

「笹川!しっかりして!誰にやられたの!?」

「・・・ッ、か・・・・」
笹川は目を開け起き上がろうとしたが、痛みに顔を歪めるだけだった。

「動かないで。今救急車呼ぶから・・・!」
携帯を取り出す

「クッ、しかしヤツめ・・・」

「相手は誰?誰にやられたの」

「ヤツは・・・我がボクシング部に入ろうとして間違って他校に入学したあわてん坊だ!」
傷だらけの身体になっていても、笹川の瞳は精気に満ち、輝いていた。
というより燃えていた。

「・・・・・は?・・・いやだから、知り合いなの?」
もう一度聞き直す

「いや。だがヤツはオレの事を知っていた」

「他校生なんでしょ・・・?」

「ああ、アレは黒曜の制服だった」

「こ、黒曜・・・・・・」
ふいに独特の笑い方をする少年が思い浮かんだが、慌てて振り払う

「しかし強い男だった・・・!」
ぐ、と唇を噛む笹川。

「・・・まあ、勝つときもあれば負けるときもあるよ」
はありがちな慰めの台詞を吐く。

「あのパンチ力は我がボクシング部に欲しかった!!」





「あ、すいません救急車一台お願いします。はい、ただのボクシング馬鹿です」

ここにも戦闘マニアがいたか、と呆れ果てる

















・・・続。











 

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(06/12/14)