「え、ツナの好きな京子ちゃんって笹川の妹!?あ、そうか苗字一緒だ!うわー、美少女と野獣兄弟じゃん!」

先日の宴でツナから無理矢理好きな子を聞き出していたは、ようやく知った事実に目を丸くした。

「でけー声出すんじゃねェよ」
シャマルの視線は前方のまま、黒曜の制服を着た長身の学生の背中を見ている。

禿頭で痩躯、さらに少しおぼつかない足取りで歩く怪しいその生徒を、二人は距離を取って後をつけていた。

さらにその先にいるのは、今話題になっていた笹川京子とクラスメートの黒川花。
学校で知らせを受けて並盛中央病院に向かった京子は入院している兄を見舞っていた。
休校で一旦家に帰っていたらしき私服の花と病院の前で待ち合わせ、今は帰路についている。

二人は、後をつける気味の悪い黒曜生の存在には気付いていない。

「今すぐ襲う気配は無いね」
声のトーンを落とす

「・・・誰かの指示を待ってるのかもな」

「その誰かって、まさかあの妙な鳥?」

は空を見上げた。

黒曜生の頭上を、小鳥が飛んでいる。
野鳥とは違う目立つ黄色の羽毛で、丸々としている。

「・・・そうかもな。もう少し距離を開けるぞ」

「うん」




























  リプレイ 37
































大罪を犯したマフィアを収容している監獄から脱獄した三人組は黒曜第一中学に編入し、たった数日ではびこっていた不良たちを制圧した。
そして、閉鎖された複合娯楽施設・黒曜センターを拠点として並盛にまで勢力を伸ばしてきた。

並盛を裏で統べる風紀委員が次々襲われた事件は、彼らが起こしたものだ。
その手は一般生徒にまで伸び、獄寺隼人も深手を負った。

日本にやってきた彼らの真の目的は並中生を襲い、マフィアをいぶりだすことだった。
そしてその矛先は、次期ボンゴレファミリーボス候補であるツナに向けられていたことがわかった。

ボンゴレファミリー9代目ボスより、ツナは脱獄囚の捕獲を命じられ彼らのアジトに向かった。

「ツナにリボーン、獄寺くんに山本くん。あとはビアンキ・・・・大丈夫なの、その面子」
指折り数える

相手は、マフィアを追放されたほどの凶悪な脱獄犯だ。
デュランダによってもたらされた情報によれば、いち早くアジトに乗り込んだ雲雀は主犯である六道骸の手にかかり落ちた。

「ただの捕獲ならボンゴレの精鋭メンバーに任せればいい」

「精鋭メンバー?そんなのいるんだ。ゴルゴ?」

「違う。ヴァリアーつって・・・いや、それはいい。とにかく、そうしなかったのは」

「・・・ツナのため?9代目も酷な事するのね。それとも、それだけ家庭教師のリボーンを信用してるって事なのかな」
シャマルの言葉を引き継ぐ

「さァな」

「でも先生がこうして京子ちゃんの護衛をしているのは、リボーンに頼まれたからなんでしょ?」

「だから、自分だけ声が掛からなかったからってスネんなよー」

「スネてないってば!」

「声がでかいってば」

「・・・・ッ!」

が睨むとシャマルはヘラリと笑い返した。

「まあ、どうしても行きたいって言うんなら止めねーよ」

今更そういうこと言うか・・・、と呟くだか。

「行かないってば。あんな危なそうな連中に関わりたくないよ」

吹っ切るように前を向いて言うに、シャマルは蒸し返す。

「飛び出していきそうになってポイズンクッキング食らったくせに」

「あれはリボーンが出し惜しみするから!」

「手の内を明かさねーのはお前も同じだろ。はぐらかして相手の神経逆撫でる分お前の方がタチが悪い」

「わかってるよそこは反省してるんだから・・・。もうすでに痛い目に遭ってるんだから勘弁してよ」

「状況は変わってる。しかも予想より悪く。見ろよあの野郎、塩酸持ってやがるぜ」
顎で示すシャマル。

もそれは気付いていた。
後ろ手で隠すそのビンでなにをしようと考えているのか、想像もしたくない。

「なおさらあたしが行ったって状況が良くなるわけじゃないでしょッ」
眉間にシワを寄せる


「だからオレに八つ当たりしてんだろ?かーわいいなー、ー」

「先生のそういうとこムカツク!」

は頭を撫でてくるその手を払いのける。

いっそ、後先考えず飛び出していける性質なら。
自分の立場も実力も知らず、周りの状況も理解できないほど子どもなら。

その方が楽なのかも、そうしようかとも考えて。

でも結局出来ない自分がいて。


何もかもお見通しで、落ち着き払った主治医が腹立たしくもありうらやましくもあった。




「おい。ちょっとそこの君」
ふいに背後から掛けられた声。

振り向くと、巡回中らしき警察官が自転車を止めて二人に近づいてくる。

「君、並中生だろう?こんな昼間になにをしているんだ?」
制服姿のに声を掛ける警官。

「え、あ、いや学校は今日休校になって・・・」

「で、アンタは?この子なに?」
警官は手帳を取り出し、明らかに不審者扱いでシャマルを睨む。

「オレは並中の保険医で」

「保健医ィ?保健医がなんで生徒と二人っきりで歩いてるの?」

「・・・・」
「・・・・・・・」

二人は突然の職務質問に、ただ無言で顔を見合わせた。
これマズくね?的な表情で。

「じゃあ、ちょっと調べるから交番まで来てもらえる?」

「いやあの、急いでるんで・・・・」
「また今度と言う事でひとつ・・・・」
じり、と後ずさる二人。

「急いでどこに行くつもり?それに今並中生が襲われる事件が続いてるの、知ってる?」
持っていたボールペンを向け、けだるそうに話す警官。

その元凶を尾行してるんです、とも言えずまたしても無言になる二人。

こうしてる間にも京子たちとの距離は開く。

「・・・先生、行って。あたしなんとかするから」
囁く

「そうか?」

「うん、まかせて」

「頼むぞ」
そう言ってシャマルは白衣を翻し、足早にその場を後にする。

「あ、コラ待ちなさい!」
後を追追うとする警官。

しかし、

「おまわりさん!」
強い口調で呼び止めると、警官はを見た。

は腕を上げ、警官の目の前に手をかざす。

次の瞬間、てのひらいっぱいに広がる漆黒の龍紋。

「よく見て?」
龍紋は渦を巻きつつさらに広がり、てのひらからはみ出す。

龍紋の動きは、人に強い催眠効果をもたらす。
球体となった龍紋は警官の頭部をヘルメットのよう包み込んだ。

催眠にかかった警官は抗うことなくその場に立ち尽くす。
その手がだらりとさがり、手帳とボールペンが手から滑り落ちる。

それを合図にするかのようにはてのひらを閉じ腕を下げた。

龍紋は、次第に動きを止めてゆっくりと薄れていく。






「・・・あれ?」

我に返った警官は、辺りを見回す。
周りには誰もいない。

「何してたっけ・・・?オレ」
記憶を辿っても頭の中は霞がかったようでうまく思い出せない。
落としていた手帳とボールペンを拾ってまた考え込むが、やはりよくわからない。

そうだ、たしか巡回中だった。
思い出した警官は自転車を見つけて近づき、ハンドルを握る。

サドルには跨らず、スタンドを倒して押して歩く警官。

はとうにその場を去り、シャマルを追いかけていた。





「・・・・・・あれ?どっち行ったんだろ、先生」

しかし、はシャマルを見失っていた。



















・・・続。











 

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(06/12/20)