タクシーは客の姿を見つけて止まる。
運転手が乗り込んだ客をバックミラー越しに見ると、制服を着た少女だった。

「黒曜センターまで」
短くそう告げる少女。

「あそこは随分前に閉鎖したけど・・・・」
そう言っても、少女はなにも返してこなかった。

まだ真っ直ぐ前を見る。

妙な客を乗せてしまったと運転手は思ったが、仕方なくアクセルを踏んだ。

「あそこ、今は不良のたまり場みたいになってるから近づかないほうがいいよ。旧道だからあまり人も通らないし・・・・」
運転手は親切心で教える。

しかし、少女は無言のまま。

もう一度バックミラーでその顔を見れば、その瞳は瞬きもせずフロントガラスの向こうの風景のはるか先を見ていた。











  リプレイ 41













ツナが六道から逃げ、雑木林を抜け出した時にはすでに次の刺客が仲間たちを襲っていた。

獄寺は胸を押さえて倒れている。
山本は木の幹に身体を預け、完全に気を失っている。
山本を庇うように立つビアンキの手にはポイズンクッキング。

対峙するのは巨大な鋼球を繋がれた鎖で操る男。

デュランダは、その様子を雑木林に隠れて見ていた。
に急かされ、叱咤されつつ指導を受けて再構成したその身体は、さっきまでの姿よりひとまわり大きい。

背には一対の羽と、炎のように揺らめく漆黒のたてがみ。
針金のようだった脚は鋭い爪と筋肉で出来た猛禽類のそれに変わっている。

恐ろしい勢いで投げられた鋼球が、ビアンキに襲いかかる。

間に割って入るように飛び出したツナを見つめる瞳は、燃えるような黄金。


(・・・ところで姐さん、この格好ごっつい疲れる)
しかし声のイントネーションだけは変わらない。

(つーかアンタは龍氣を練る事ぐらい覚えなさい!だからあんなにへっぽこなのよ!)

(だって、あっちの方が楽やねん。それよりなんであのチビパンツ一丁やの?姐さん)

(・・・知らないわよ)

見たことのない険しい表情に、額の炎。
そしてなぜかパンツ一丁という裸同然の姿で刺客に立ち向かうツナ。

華奢なその身体からは想像も出来ない動きに、は唖然とする。

(そういやさっきおしゃぶり小僧がなんか撃ったみたいやけど・・・)

(なんかってなに?あたしには見えなかったけど)

(拳銃でチビに向かって撃ってたで。ラスト一発ってゆうて)

(・・・そうなの?)
どうやら意識を同調しても、すべて同じように見えるわけではないようだ。

もデュランダも死ぬ気弾の存在を知らない。
ただ、刺客と互角に戦うツナの姿に見入る。

(強くなったんだね、ツナ・・・)

戦いは肉弾戦に移った。
何か会話をしているようだが、二人がぶつかり合う激しい音にかき消され、の耳に届かない。

やがてツナの強烈な拳が、刺客の鳩尾にヒットした。

(アレは決まったな。・・・ていうか姐さん、こんなのんきに観戦しててエエの?ニィさんに薬・・・)

(薬届けたって、どうせ戦える状態じゃないでしょ)

(ニィさんプライド高そうやし、負けた相手にならボロボロでも向かっていくんとちゃう・・・?)

(だったらなおさら薬なんか渡さない方がいいんじゃないの。・・・それにしても随分アイツのこと買ってんのね)

(姐さんが甘く見すぎやねん)

(うっさい。また結ぶわよ)

(い、イヤや!!)
姿は雄々しく変わってもトラウマは消えないデュランダ。

その刺客の口から、ツナたちは彼が六道の影武者であり、その経緯と六道骸の非道な過去を知った。
すべてを語った刺客に、猛毒の針が降る。

(口封じか!)

(姐さん、アイツや!さっきおったメガネ!)

前もって六道に命じられていたのだろう。
雑木林の奥に消えた影を、デュランダの目は捉えていた。

(追って、デュランダ!これだけ広い敷地なら、逃げ込んだ建物がアジトに違いないわ)

(りょーかい!きっとそこにニィさんもおるはずや!)

デュランダは羽を広げ大きく伸ばし、一撃離脱した柿本千種の後を追った。
以前とは比べ物にならない俊敏な動きで音もなく木々の間をすり抜けいく。

はそこで意識を切り離した。


「・・・・、さてと」

はタクシーを降りた。
目の前には、黒曜センターの敷地が広がっている。

運転手が何か言っていたようだが、聞こえたのは料金だけだった。



















・・・続。











 

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(06/12/21)