「髪の毛、切ろうかなあ・・・」

話は、隣に住む幼馴染、姉ちゃんのそんな一言から始まった。

































誰かが嫉妬する髪

































長い髪の毛先を弄りながら一人ごちる姉ちゃんに一番最初に反応したのは、獄寺君だった。

「き、切るんすか、さん!?」

ちなみにココはオレんち。
獄寺君と山本は学校帰りでそのままウチに遊びに来たんだ。

オレたちはテーブルを囲んで、姉ちゃんとリボーンはベッドに腰掛けている。
姉ちゃんはオレたちが帰ってきてしばらくしてから揚げたてのドーナツを持ってやってきた。

姉ちゃんがそんなことを言い出したのは、それを食べていた真っ最中で。

「んー、なんかねェ、伸ばしてるの馬鹿馬鹿しくなっちゃって・・・」

「あの、も、もしかしてこの間の・・・!?」
慌て出す獄寺君。




そういえば、前に獄寺君のリストバンドに姉ちゃんの髪が絡まって取れなくなって、そこだけ髪の毛切ったんだよね、姉ちゃん。

「ああ、違う違う。長いのって結構面倒なんだよ。山本くんは髪洗ってもドライヤーとか使わないでしょ?」
この中で一番髪の短い山本に話し掛ける姉ちゃん。

「はは、そっすね。でも、せっかくそんなに長く伸ばしてんだし、切るのはもったいないんじゃないすか?」

「美容院の店員さんとおなじ事言うね、山本くん・・・」
むぬーと妙な息をつく姉ちゃん。




「でも、なんで急に髪切るなんて・・・?」
首を傾げるオレ。

「やっぱりこの間の!」

「違うってば」
まだ気にしている獄寺君に苦笑する姉ちゃん。






「あのねえ、この間の日曜なんだけど・・・」

そして、姉ちゃんの回想話が始まった。























「外も豪華だけど、中も豪華ですねェ〜」
目をキラキラさせながら、ハルが言った。

「こんな高級ホテルのケーキバイキングに誘ってくれるなんて、さんは女神様です〜!」
手を組んで、後ろを歩くを拝むような仕草をするハル。

「あっはっは、そんなおおげさな」

「でも、ここは予約がいつも一杯だって聞きましたけど・・・」
隣を歩くのは京子だ。

「ん?ちょっと知り合いにコネがあってね〜」
「そうなんですか」

さん!京子ちゃん!ここ!ここにしましょう!中庭も見えますし!」
一足早く席に着くハル。

「もう、ハルちゃんってば、そんなにあわてなくてもケーキは逃げないよ?」
くすくす笑う京子。














「・・・ちょっとまって。姉ちゃんいつの間に京子ちゃんやハルと一緒に遊びに行く仲に・・・?」
どうしても気になって話の腰を折るオレ。

「オレが紹介したんだ。ホテルのケーキバイキングもな」




リボーン・・・。




「でね、おいしくケーキをいただいて、幸せ気分で帰りにロビーを横切ったら、・・・会ったのよ」
話を続ける姉ちゃん。




「だ、だれとすか?」






「嫉妬する髪に」







「は?」






「ものっそいサラサラヘアーだったのよ〜。腰まであったかな?しかも銀髪だから目立つ目立つ」




「・・・・・」

「しかも男でさ!全身黒の特殊部隊みたいなカッコしててね〜。なんかソレ見たら毎日毎日髪の手入れしてるのアホらしくなって・・・」

腕を組んで、くふーと息をつく姉ちゃん。







銀髪で長髪で男・・・?

全身黒?




ま、まさかそれって・・・、

オレたちは顔を見合わせた。




リボーンは・・・普通に銃の手入れ始めてるよ。
あーあもう、姉ちゃんや山本がいるのに!




「京子ちゃんやハルちゃんにも切るのは反対されたんだけどね・・・ツナはどー思う?」




え、オレ!?



「ね、姉ちゃんがそうしたいならいいんじゃない・・・?」

本当は、長くてキレイなんだし切らないほうがいいんじゃ、って思ったけどなんとなく恥ずかしくて言えなかった。

「そう・・・、リボーンは?」




「オレもどっちでもいいぞ」




「まあね、どうでもいいよねえ〜・・・」
聞いたあたしがバカでした、とばかりに肩を落とす姉ちゃん。














「髪が長かろうが短かろうが、だからな」
























「・・・・、そっか」

そう言って、納得したように笑う姉ちゃん。








・・・ちぇ、結局リボーンがいいとこどりか。






























ちなみにコレは余談。




たちが行ったホテルの最上階には、実はヴァリアーの面々が泊まっていた。

「う゛おおおい、あの女、オレに見惚れてやがったぜ」
ロビーには、異彩を放つ黒装束の一団。
銀髪の男、S・スクアーロがそこに加わる。

「気のせいだ」
さっくりと否定するのはレヴィ。

「なんだと!?」

「ししし、スクアーロってば自意識過剰じゃん?」
頭にティアラを乗せた青年、ベルフェゴールが笑う。

「いいや、ありゃあ絶対見てた!」
食い下がるスクアーロ。

「どうでもいいよ・・それよりバイキングに行くんだろ?」

そう言って諌めたのは、頭に蛙を乗せたマーモン。





彼らはたちと入れ替わるようにケーキバイキングに来ていたのだった。






















おわり。











 

 

甘党だったらいいよねヴァリアー
(06/10/05)

ブラウザバックでお戻り下さい