昼休み中の教室には、弁当や買って来たパンなどを食べる生徒達のグループがあちこちにある。 そんななごやかな風景が、のクラスにもあった。 転入当時は雲雀に目をつけられ、クラスメートから敬遠されがちだっただが、最近は徐々に警戒を解かれ、話しかけられることも増えた。 お昼を一緒に食べるクラスメートもできた、ある日の事。 ナニ?と尋ねると、指差された先には、違うクラスの男子生徒がドアの外に立っていた。 名前は知らないが、顔は見覚えがある。 (・・・三年はもう引退してるから元、かな) 「あたしになにか用?」 「・・・、いいけど?」 教室を出る瞬間、背後の教室がざわめいたようだが気にせずにドアを閉めた。 男子生徒はそこで立ち止まり、に振り向いた。 そこまで言った男子生徒は俯き、居心地悪そうに身じろぎした。 はというと、よどみなく発せられたその台詞に、ただきょとんとした表情を返した。 想定の範囲外というヤツだ。 (てっきり野球部や山本くんのことかと思ったあたしは結構ボケか・・・?) 山本は幼馴染であるツナの友達だ。 「あ・・・、返事は今じゃなくていいから」 そして、に背を向けて歩き出す。 「ちょ、ちょっとまって!」 足を止めて振り返った男子生徒に、は言った。 「あの、・・・ごめん。あたし・・・その、付き合えない。ゴメン」 たどたどしく断って、頭を下げる。 「・・・、えと・・・うん」 は嘘をついた。 好きな人なんてのはいない。 ただ、目の前の男子生徒と付き合うつもりは無い。 汗を掻くような季節は過ぎたが、の背中にじんわりとそれが滲む。 見た目は高校生ぐらいの童顔なので、逆に大人っぽいといわれるぐらいだ。 「あ、それはない」 「じゃあ・・・?」 「いやあの・・・あたし、年上好きなんだよね!」 「いや・・・、ううん、そのええと〜」 「あ、あたし、シャマル先生が好きなの!だから、ごめんね!」 保健医であり、主治医であるシャマルの名前を出して、はその場を逃げ去った。 「なによう、もう酔っ払ってんの?先生」 「なんの恨みがあって俺を天国から追放しようとする!?」 「どこの天使の話?あ、夕飯無いよ先生の分は」 「すっとぼけてんじゃねーよ。いつオレがお前と付き合ったって?」 「は?なにそれ。もう酔っ払ってんの?」 「酔ってねー!」 「じゃあおなか空いたの?だが諦めろお前に食わせるメシはない」 「オメーがオレと付き合ってるなんてホラ吹くから職員会議に連行されちまったんだよ!」 「ああ、そのせいでナンパできなくて女の部屋に転がり込めなくてウチに?」 「まったくもってその通りだが、ソレは今関係ねェ」 「ところで誰が先生とあたしが付き合ってるなんてホラを吹いたの?教えて。今すぐ抹殺するから」 「お前だろーが!!」 「なんであたしが?趣味が悪いのを自慢するほど趣味は悪くないわよ。どんだけ可哀相な子よ、あたしは」 「・・・そこまで言うか・・・・?おじさんにだってこう、いぶし銀の魅力があるだろ?」 「ナイナイ。ったく誰だろう、そんなタチの悪い噂流すなんて」 「お前な、平和ボケした日本の中学校で敵作るなよ・・・」 「平和ボケした日本の中学校って、不良のトップに立つトンファー常備した風紀委員がいるの?」 「・・・アイツか?」 すぐさまおかずの乗った皿を避難させるように自分の方に引く。 「たぶん違う。殺る気なら正面から来るヤツだから。・・・あ」 雲雀の話題に変わったところで、は思い出した。 「断る時に先生の名前出したのがマズかったかな・・・?」 「なんだって?」 テヘ、と誤魔化すように笑う。 絶叫の後、とんでもない数のトライデントモスキートが夜空を舞った。 |
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(06/11/04)