抱き締めたあとは言葉にならなかった。
確かめるようにアスランはキラと呼び、キラもまたアスランと呼んだ。
流れる涙が何のためのものかわからない。気持ちだけが溢れて、ただ確かめたくて、腕にぎゅっと力を入れた。
互いに舌を絡めて求め合ったのは、たぶん確かめるためだ。服を脱ぐ時間すらもどかしくて、それでも早く肌を重ねたくて、いろんなものを引きちぎったように思う。
いつもより性急なキラの指が乱暴に扱うけれど、それすらも自分の居場所をおしえられているようで、悦びに身体が震える。
こんな強い感情をアスランは知らない。
愛しさとやさしさは比例するものだと思っていたから、壊れる程の激情をうれしいと感じるなんて、思ってもみなかった。
早くキラがほしかった。早くひとつになりたかった。溶け合いたかった。混じり合いたかった。一個のものではないことを悲しいと思った。いっそ壊してほしいとすら願った。
キラをいっぱい感じて、キラだけを感じて安心したかったのかもしれない。
キラのくれるものなら何でもよかった。
痛みでも苦痛でも快楽でも、ただ強く感じられればそれで。
前戯もなく入り込んできた固い指に、アスランの身体は本能的な拒絶を示す。
意思とは違う部分で身体に下された命令は、けれどもアスラン自身が否定した。
「い、いからっ」
少しだけ躊躇いを見せたキラの頭を、アスランは胸に引き寄せた。
「いいから。早く、キラっ」
片足を持ち上げられたとき、ドクンと胸が鳴って、そのときが近いことをアスランは知る。
充分に慣らされず強引に入り込んで来たキラに身体がのけ反り、アスランは大きく息を詰めた。
「あっ あっ」
無茶をしていると思う。きついとも思う。けれど、どうしても止めることができない。
頭の中が真っ白になり、繋がった部分いっぱいにキラを感じて、アスランは少しだけ安心して、大きく息を吐いた。
戦争があった。死ぬつもりだった。失ったのかと思った。
キラを。キラまでを。
やさしくキラに頬を撫でられ、うっすらと目を開けたアスランは、はじめて自分が泣いていることに気が付いた。
「キラ……」
ぼやけた視界の先の名を呼ぶと、キラもまた泣きそうな顔をしている。
「……うん」
「キラ」
「うん、アスラン」
目尻を冷たい涙が零れ、ぎゅっとキラの首に抱きついた。ぎゅっと強く抱き締められた。
心音が重なる。
気持ちが溢れる。
言葉にならない。言葉はいらない。
いまはただこうして、互いを抱き締める腕があればいいと――
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