あーらら。
だから、だめだってアスラン、誤解されちゃうよ。
そんなことを思いながら、僕は横目で面白くなさそうに(いや実際、面白くないんだけど)、アスランとクラスメイトのやり取りを見ている。
「あ、うん。それでいいと思うよ……」
なんて身体が逃げてるうちはよかったんだけどね。
無口でカッコイイなんて女子から言われてるアスランだけど、アスランが無口なのは人が苦手だから。
対人恐怖症の気がちょっぴりあるアスランは、ふいに話しかけられると途端に焦って、ちっちゃなパニックに陥るらしい。ちゃんと意識してるときは大丈夫らしいんだけどね。
でもあんまり表情を変えないから(というより、焦れば焦るほど無表情にかたまっちゃうから)、気付く人はほとんどいない。
いまもクラスメイトの相談にのってあげてるクールな委員長の図、って感じ。
でも、ほんとは内心パニクってるんだろうなあ。
大量のえさを与えられて、どうしていいかわからなくておろおろしてるハムスターみたい。……って言ったら、怒りそうだけど、何かこういうときのアスランって小動物みたいなんだよね。
おろおろきょときょとしてて、挙動不審ですごいかわいい。普段が普段だからよけいに。
っても、気付くのは僕くらいだけど。みんなアスランを前にすると緊張して、ちゃんと目に入ってないみたい。フィルターも掛かってるし。もっともアスランに言わせれば、僕の方がハムスターらしいんだけど。
あ、ほら、また。
最初は身体が逃げて、僕に助けを求めるような視線を送っていたアスランが、いまはクラスメイトの手を掴んで、大丈夫だよ!なんてぶんぶん振り回している。
これは、アスランのくせ。
ぶんぶん振り回すのが、じゃなくって、話すとき人に触れるくせがアスランにはある。
なんで人と話すのが苦手なのに触るんだろうって思ってたけど、そういう人はけっこういるらしい。焦るあまり人にやたら触ってしまうってタイプ? 安心したいみたい。
でもアスラン、そういうのって誤解されちゃうと思うよ。
女の子相手なら、へたすりゃセクハラだし。
アスランをセクハラで訴える女子なんていないと思うけど。って言うか、訴えさせたりしないけど。
現にいまのクラスメイトは、顔を真っ赤にしてアスランを見てる。男子だけどね(溜め息)
アスラン、いい加減に自分の容姿を自覚した方がいいと思うよ(溜め息2)
それがアスランのいいところではあるんだけどね(くす)
さて、と僕は立ち上げる。
「そろそろ帰ろう、アスラン」
声を掛けると、あからさまに、ほっとした顔のアスランが僕を見た。
安心しきって、脱力したみたいな顔。少しだけ泣きだしそうで、目に涙が滲んでいるようにすら見える。
かわいいなあ。
「あ、うん」
そそくさとアスランがノートを持ってやってくる。
「じゃあね」
僕はアスランの肩にしっかりと腕を回して、クラスメイト(名前、なんだっけ?)に手をあげて挨拶した。もちろんガン付けも忘れない。アスランは僕のだっておしえておかなきゃ。
回した腕から、アスランの小さな震えが伝わってくる。ちっちゃな溜め息と落とした視線。頬が少し紅潮して、髪まで少しばかり乱して、よっぽど焦ってたんだね。
くす。
僕はアスランに気付かれないよう、声に出さずに笑う。
「キラ?」
「何でもないよ、アスラン(にっこり)」
口では、僕以外の人にも慣れなきゃだめだよ、なんて言って、こういうとき助けてあげないけど、本当は真っ赤になって焦るアスランがかわいっくて見ていたいから。そして、そのあと、僕のもとに帰ってくるアスランが、それ以上にどうしようもなく、抱き締めたいくらいにかわいいから。
……なんて言ったら、顔を真っ赤にして怒るんだろうなあ。
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