補聴器の中には小さなブルーが住んでいる。手のひらサイズで、いつも眠ってばかりいる。
「それなぁに?」
子どもたちがわらわら集まって、ジョミーの手の中を覗き込んだ。
「ブルーだよ」
生まれたての子猫のように、小さなブルーはジョミーの手の中に丸まって眠っている。
ジョミーが手を動かしたせいか、やっぱり子猫のようにもそもそ動いて、子どもたちも彼を起こさないように小声で話しかけた。
「寝てるの?」
「ちっちゃいね」
「レインの背中に乗るね」
ジョミーは手の中の彼に視線を落とした。
「急いで掴まえようとしたんだけど、これだけしか間に合わなかったんだ」
「ジョミー、間に合わなかったの?」
心配そうに見上げてくる子どもの顔を覗き込み、ジョミーは言った。
「ううん、ちがうよ。間に合ったんだ」
「間に合った?」
「うん。ちっちゃいけど間に合ったんだよ」
彼はあまりにも急ぎすぎて、欠片だけしか掴まえられなかったけれど。
ジョミーは遠くを見つめ、うれしそうに目を細めた。
「でも、すぐに大きくなるよ。君たちみたいに」
「ほんと!?」
アルテラの目が輝き、やさしく笑んだジョミーは、子どもたちに目線を合わせるために膝を折った。
「オリジンだからね」
「オリジンってなぁに?」
「どういう意味?」
聞かれて、ジョミーの笑みが広がる。
「はじまりって意味だよ」
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