甘い声がジョミーを呼ぶ。欲に濡れた目が水の膜にジョミーを映す。繋がった部分が、きゅっと締まって、ジョミーを離すまいとする。
「ジョ…ミ……」
そうなってはじめて吐露される彼の心の声が、ジョミーはうれしかった。
怖かった?
淋しかった?
待っててくれた?
そのどれもに、この人は首を振らない。ただ濡れた目にジョミーを映し、返事のかわりに額を押し付け、抱き締めてくるだけだ。
不思議に幼いしぐさ。
誰もこの人を、こんなふうに甘やかす人なんていなかった。
誰よりも先に大人にならなければならなかった人が、どうしていつまでも若い姿のままでいるのか。能力の差か、体力を使うせいだと思っていたけれど、もしかしたら、それはこの人の心が置いていかれているせいなのかもしれない。
「ブルー……」
腕の中にいる人を、ジョミーも強く抱き締める。
ミュウの偉大な長。ジョミーが現れるまで唯一だったタイプ・ブルー。先陣に立って戦うこととを義務付けられ、強大な力を秘めている人だというのに、身体の方はこんなにも細くて弱い。
「また痩せた?」
確かめるように手のひらで薄い腰をなぞると、びくりと腕の中の身体が跳ねた。
痩せっぽちの身体。無駄な肉どころか、必要な筋肉さえついているのか疑わしいほどだ。
「ジョミ……」
「なに?」
「キスを」
「ん……」
薄い唇がうっすらと開いて、ジョミーを誘う。
絡み合う舌。混じり合う粘膜。奪い合う熱。上も下もこの人の中が自分でいっぱいになっているのだと思うと、それだけでもう一度イッてしまいそうだ。
「あ…っ」
口付けるために動いたせいでイイところを掠ったらしい。ブルーが小さな声をあげ、再び紅い目が潤む。
熱を孕んで弛むブルーのいろいろな部分。
自分の熱を持て余しているのか。どこか困ったように見上げてくる顔がひどく幼く、思わずジョミーは細い身体を乱暴に組み敷いた。
「ジョ…ミー……?」
こんな顔はル-ル違反だとジョミーは思う。
いつも涼しい顔で嫣然とほほえんでいる人が、こんな無防備な子どもみたいな顔で見上げてくるなんて。
「も、無理だ、ジョミー……」
彼の体力を考えて、一度でやめるつもりだった。
ずっと繋がっていたのは離れたがたかったからで、こんなふうに乱暴にするつもりなんてなかったのに。
「ごめん」
「や…っ、」
起き上がろうとした腰を無理やり抑えつけた。縋るようにブルーの指がシーツを掴む。シーツごと腰を引き寄せ、後ろから熱をねじ込んだ。ブルーの腕が自分を支えきれずにベッドに崩れる。
「い…あ、ああッ」
「もう少しだけ我慢して」
背中越しに耳元で囁くと、ぎゅっとブルーが強くシーツを握り締めた。
ブルーの指が白くなっている。腰だけをジョミーに掲げられ、男を迎え入れるための体勢を強いられたブルーの姿は、まるで誰にも逆らうことのできないかわいそうな子どもみたいだ。
「ブルー……」
息を詰めて背中を震わせ、彼が必死に何かに耐えているのがわかる。その痛々しさにジョミーは身体を離しかけたが、ブルーの声がそれを止めた。
「い、いから……」
「でも」
「だいじょぶ…だから」
どこか泣きそうな顔で、そんなことを言う。
「慣れてない、だけだ」
「ブルー……」
後ろは不安なのだとジョミーは気付く。この人は、背中を預けることになれていないのだ。
戦うことに不向きなミュウたちの中にあって、たったひとりソルジャーの名を持つことの孤独。
「――僕がいる」
長の立場もソルジャーの名も知らない。けれど、この人の孤独を癒せるなら、傍らにあろうとジョミーは思う。同じ場所に立とうと誓う。
ブルーの背中に身体を重ね、ジョミーは安心させるように彼の首に唇を寄せる。
「ちゃんといるから」
安心したようにブルーの身体から力が抜け、ジョミーはその身体を強く抱き締めた。
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